2005年2月6日(日)「きみに読む物語」

THE NOTEBOOK・2004・米・2時間03分

日本語字幕:手書き書体下、伊原奈津子/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

http://www.kimiyomu.jp/
(全国劇場案内もあり)

アメリカが第2次世界大戦の参戦することになる1年前の1940年、アメリカ南部の田舎町で肉体労働者の青年ノア(ライアン・ゴズリング)は、都会の町から避暑にきていた富豪の娘アリー(レイチェル・マクダムス)に一目ぼれし、強引にデートを申し込む。やがて愛し合うようになった二人だが、交際を認めないアリーの両親によって仲は引き裂かれ、ノアはアメリカの参戦によって戦場へと送られてしまう。

76点

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 軸は真っ向勝負のコテコテのラブ・ストーリー。それを老人カップルを通して描くことで深い味わいと、大きな感動を生み出すことに成功している。涙が……。

 ラブ・ストーリーの定番はボーイ・ミーツ・ガール。男の子と女の子が出会って恋に落ちるというもの。ゴールは結婚で、そのあとはなかなかラブ・ストーリーになりにくい。実生活が始まると、ロマンスとはほど遠い現実が待ちかまえているからだろう。ましてや人生の終盤ともなればなおのこと。しかし本作ではあえてその終盤にスポットライトを当て、老人問題や痴呆にまで踏み込んでいる。そこがすごい。

 確かに今はよぼよぼの老人でも、若い時にはロマンスがあったはずで、燃え上がるような恋もしたはず。そこを気付かせてくれる。そして今とは違って、デートを重ねてもなかなか深い関係にまで移行することができない。しかしそれゆえに心の絆は強く、主人公達は再び愛を手にすると。

 つき合い方も、ファッションも、化粧も、実に昔風というか質素で、それがまた新鮮。クラシック・カーはとてつもなくカッコいいし、場面のひとつひとつが絵画のように美しい。そこには当然監督なり撮影監督なり作り手側のノスタルジーも多分に含まれているのだろう。しかし、いい。古き良き時代という感じだ。そして、描かれている本質は今も全く変わっていない。永遠のテーマ。

 こんなふうに歳をとっても伴侶を愛し続けることができれば最高だろうと思わせてくれる。妻がつづったノートには、かつて二人が過ごした日々のことが書かれている。そして、あなた(夫)がこれを読んでくれれば、私はいつでもあなたのところにもどってくると。くーつ、これは辛い。

 これが、特別な予感のする1日の話として描かれている。朝に始まって翌朝に終わる。うまいなあ。

 監督は俳優でもあるニック・カサベテス。あの名優にして映画監督でもあったジョン・カサベテスと、本作で老人ホームにいる老女アリーを演じた、「グロリア」(Gloria・1980・米)の名女優ジーナ・ローランズの息子。兄弟もほとんど役者をやっているという芸能一家に生まれた。自身の2人の娘も役者らしい。1959年生まれというから、今年46歳。当然、この話の舞台となる1940年代は知らないはずだが、たぶん雰囲気は良く出ているのではないだろうか。この作品の前に、デンゼル・ワシントンが息子の命を救うため病院を乗っ取るという「ジョンQ」(John Q・2002・米)を撮っていて、腕が確かなことは証明済み。アクションやサスペンスばかりでなく、ロマンスもうまい。

 ジーナ・ローランズは、つい最近アンジェリーナ・ジョリーがFBIプロファイラーを演じてラジー賞候補に挙げられたスリラー「テイキング・ライブス」(Taking Lives・2004・米)で殺人者の母を演じたばかり。映画、TVと結構、出演作品は多い。1930年生まれなので、なんと今年で75歳。元気な75歳だ。

 嬉しくもあり、ちょっと悲しくもあったのが、年老いたノアを演じたジェームズ・ガーナー。TVの仕事はあったらしいが、スクリーンでは本当に久しぶり。2004年の3月にニュー・プリントでリバイバル上映された「大脱走」(The Great Escape・1963・米)では見たが、全盛期の彼とはまったく違うわけで……。最近ではイーストウッドの「スペースカウボーイ」(Space Cowboys・2000・米)で見たが、その前に見たのはメル・ギブソンの西部劇「マーベリック」(Maverick・1994・米)だったかなあ。67歳当時と今の77歳ではやっぱり大きな違いがある。「ミスター・タンク」(Tank・1984・米)は57歳だったからまだオジサンっていう感じだったけど……。

 若きアリーを演じたレイチェル・マクダムス。この前に学園コメディの「ミーン・ガールズ」(Mean Firls・2004・米)があるらしいが、日本では2005年の3月公開となっている。写真を見ると金髪の今風美女だが、カナダ生まれの29歳。163cmと小柄で、オールド・ファッションがぴったり。ピチピチ若々しく29歳にはとても見えない。なにしろ17歳を演じて違和感がないのだから。共演した相手役のライアン・ゴスリングと同じ病院で生まれたのだとか。へえ、奇遇だなあ。

 ヒゲは似合わなかったけれど、さわやかな印象を残したハンサム・ガイはカナダ生まれの25歳。美術さんのテクニックか、彼自身のパワーなのか、汗で汚れシミになったTシャツを着ていても、ちっとも汚い感じや汗臭い感じがしないところが凄い。若き殺人者を演じた「16歳の合衆国」(The United States of Leland・2002・米)やサンドラ・ブロックの「完全犯罪クラブ」(Murder by Numbers・2002・米)、青春スポ根もの「タイタンズを忘れない」(Remember the Titans・2000・米)などに出ていた人。今後も期待大だ。

 わけありのちょっと意地悪なアリーの母親に、「ボーン・スプレマシー」(The Bourne Supremacy・2004・米)にも出ているベテラン、ジョアン・アレン。偏見なく寛大なノアの父に「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米)の将軍を演じたサム・シェパード。恋敵となる富豪の息子に「X-メン」「X-MEN2」(X-MEN 2・2003・米)でサイクロップスを演じたジェームズ・マースデンなど、出演陣も豪華。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は50分前に着いたら、まだ1Fのボックス・オフィスが開いておらず前売り券を持っていても当日券との引き換えが必要なので、並んで待つことに。風の強い日でめちゃくちゃ寒い。隣の窓口は5分遅いスタートなのにもう開いているってのに……。経営が違うので前売り券の引き換えの必要もないらしい。うーむ。

 45分前で10人くらいになり、ほとんどが中高年。やっぱり老人問題、痴呆を扱っているからか。男女は半々で、夫婦連れが多い。40分前に窓口が開いて、エレベーターも動き出し開場。初回のみ全席自由で、右の10席×2列のレディース・シート以外、10席×3列とその後ろの10席のぴあ席もすべて自由。

 スクリーンにカーテンはなく、15分前から場内案内を上映。この時点で90人くらいいただろうか。やや女性が増えて男女比は6.5対3.5という感じ。さらに若いカップル、20代後半らしい女性の2人連れも増え出して、それでも半数以上は中高年。

 最終的には540席の3.5〜4割程度の入り。朝が早いせいか天気が悪かったせいか、ちょっと少ないんじゃないかなあ。若い人から老人まで楽しめる内容だと思うが。

 本編終了後、そのままイメージ・ソングを歌うケミストリーのビデオ映像が流れる。その中で再び本編中の映像がコラージュされ、楽しかった頃の絵が出るので、また涙を誘う。くく、これはちと辛い。涙を流した感じでロビーには出たくないから。くれぐれもご注意を。

 それにしても、ラストの撮りたちがたくさんいる湖のシーン、鳥たちが白鳥もいたようだけど、シロートのボクにはほとんどアヒルに見えたんだけど……気のせいかなあ。


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