2005年2月12日(土)「サスペクト・ゼロ」

SUSPECT ZERO・2004・米・1時間39分

日本語字幕:丸ゴシック体下、佐藤恵子/ビスタ・サイズ(8・16・35mm、ビデオ、マスク、1.66)/ドルビーデジタル、dts

(米R指定)

http://www.sonypictures.jp/movies/suspectzero/
(全国劇場案内もあり)

ニューメキシコ州アルバカーキーで、あるセールスマンが惨殺された。まぶたを切り取られ、丸に斜線のマークが体に刻まれていたのだ。捜査を担当することになったのはFBIのダラス支局から左遷されてきた捜査官のマッケルウェイ(アーロン・エッカート)。さらにアリゾナ州ニューメキシコで同様の事件が発生し、ダラス支局から応援として元恋人でもあった捜査官フラン(キャリー=アン・モス)が派遣されてくる。捜査を進めるうち、謎のFAXがマッケルウェイに届き、被害者が実はまだ逮捕されていない連続猟奇殺人者であったことがわかる。

75点

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 単に連続猟奇殺人事件を追う話かと思ったら、意外な展開。なるほど、こう来たか。これは構成がうまい。ついつい物語に引き込まれてしまう。ただし、気持ちの良い話ではない。かなりサイコな話ではある。当然アメリカではR指定。かなりどぎつい表現もある。日本ではなぜか無印。子供にはかなりショッキングで見せられない。まあ大人しか見にきていなかったが。

 ちょっと突拍子もない話ではあるのだが、実際、ロシアで超能力を科学的に研究していたと言う事実もあるし、FBIが現在も行方不明事件や迷宮入り事件でサイキックの協力を得ると言うことは行われているそうだし。日本のTVの特番でも、ときどきそういうサイキックを招いて事件捜査の模様を放送している(あまり解決したという話は聞かないが……)。それがベースになっている。

 タイトルの「サスペクト・ゼロ」とは普通の捜査では対象ともされず、プロファイリングさえも不可能な無差別殺人犯のことを指しているらしい。犯行動機がなく、ただ人を殺したいという衝動だけで殺人を行うため、行動の予想が付かない。手がかりも残っていないため捜査を進めることすらできない。男はその存在を信じ、ひたすらサスペクト・ゼロを追い求める。

 のっけの殺人事件はいわゆるミス・リーディング。ヒッチコックのようにまず違った方向に観客を一旦導いて行って、それから予想できない本筋にグイッともっていくいかにも映画らしい構成。捜査官がいわゆるスターでないためB級の印象があるけれど、これはなかなかいい。

 有名な俳優は「マトリックス」シリーズのキャリー=アン・モスと最近は「サンダーバード」(Thunderbirds・2004・米)で悪役フッドを演じていたベン・キングズレーの2人で、あえて主人公にアーロン・エッカートを選んだのは、話にリアリティを出したかったからだろう。この人は地球の中心へ向かっていくSF「ザ・コア」(The Core・2003)の博士や、「ペイチェック 消された記憶」(Paycheck・2003・米)の悪役をやっていて、どちちらかというと悪役向きの感じ。だから捜査に没頭して暴走する感じがよく出ていたのかも。彼が使っていたのはSIG P226に見えたが、FBIだからP229か。ハッキリとはわからなかった。

 とにかくベン・キングズレーがいい。というか怖い。一般の人にない能力を持って生まれたために悩んだ感じや、正気と狂人との紙一重の感じがあやうくて素晴らしい。Xファイル的な異常な話にリアリティが出ているのはこの人によるところが大きいと思う。ナイスなキャスティング。

 脚本は、面白かった「X-MEN2」(X-MEN 2)の原案を手がけたザック・ベンと第2次世界大戦ものの「ジャスティス」(Hart's War・2002・米)の脚本を手がけたビリー・レイの2人。確かに共通する部分がある。それぞれ、それ以前の作品は多少?がつかないでもないが、今後は注目かも。

 監督は、1922年にドイツで作られた「吸血鬼ノスフェラトゥ」に本当に吸血鬼が出演していたというとんでもない想定の、しかしなかなか怖い「シャドー・オブ・ヴァンパイア」(Shadow of the Vampire・2000・米)で劇場映画にデビューしたE・エリアス・マーヒッジという人(この作品でウィレム・デフォーがアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた)。1964年生まれというから、今が一番脂の乗り切っている時期かもしれない。活躍を期待したい。曲の雰囲気が日本の楽器、尺八風だったのは監督の好みだろうか。

 実写が水彩の絵になり、セビアのような色の水が流れる文字は、yU+Co.のデザイン。文字の間隔があえて不ぞろいにしてあるのもグッド。うまいなあ。

 どうしてこんなに面白い映画がこういう悲しい劇場でしか上映しないのか。公開2日目の新宿の劇場は、上映2回目、20分前でロビーに20人くらい。案内なしで、前回が終わるとそれぞれ自由に中へ。

 この劇場も前席の人の頭が邪魔でしたの字幕が読めない劇場で、限られた席しか落ち着いて見られる場所がないところ。あわててその席を探し……ゲット! やった、よかった。もう映画を見る前からスリル満点。これで1,000人クラスのデジタル劇場と同じ料金とるんだからなあ……。割引するか飲み物くらい出せ、てか。

 最終的には指定席なしの(当然だ)420席に、それでもどこで聞いたのか50〜60人の入り。良かった。これなら楽にスクリーンが見える。

 20〜30代くらいが中心で、男女比は6対4で男性が多かった。

 気になった予告編は、他でも見たがジュリアン・ムーアの「フォーガットン」。いつしか幼い息子が消え、夫が消え、最初からいなかったと言われ、アルバムにもその痕跡が無くなっている。果たして自分の記憶がおかしいのか、何かの陰謀なのか……近所の人までグル?というミステリー。これは見たい。


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