2005年2月13日(日)「マシニスト」

EL MAQUINISTA・2004・西・1時間42分

日本語字幕:丸ゴシック体下/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル、dts

(米R指定、日PG-12指定)

http://365sleepless.com/
(全国劇場案内もあり。音に注意)

鉄工所に勤める機械工(マシニスト)のトレバー(クリスチャン・ベイル)は、なぜかわからないが不眠症になってすでに1年間眠っていなかった。そんなある日、彼はアイバンと名乗る謎の男(ジョン・シャリアン)と出会い、彼の怪しい雰囲気についつい気を取られ、不注意から同僚のミラー(マイケル・アイアンサイド)に片腕切断の大けがを負わせてしまう。やがて部屋の中にも奇妙なメモが貼られていることに気付き、アイバンの仕業ではないかと疑い、彼の正体を探ろうとするが……。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 怖い。同時に気持ち悪い。後味も悪い。つまらなくはないのに、見て良かったのか、悪かったのか良くわからない。腕がリアルに引きちぎられたりするのにPG-12でいいのかという気もした。もちろん子供は見にきていないが。

 たぶんこの雰囲気はスペインのアレハンドロ・アメナバール監督の「オプン・ユア・アイズ」(Abre Los Ojas・1997・西)や「アザーズ」(The Others・2001・米/西/仏)と似ている。ただ、主人公自身が犯罪にからむことで、どうにも後味が悪い。巻き込まれた場合はかわいそうだなあとか、事件が解決して良かったとか思えるのに、本作は、かわいそうだけど自業自得だなあ……となってしまう。これが辛い。

 何より一番怖かったのは、「アメリカン・サイコ」(American Psycho・2000・米)や「サラマンダー」(Reign of Fire・2002・英/米)、「リベリオン」(Equilibium・2002・米)でキレた演技を見せていたクリスチャン・ベイル。本作では役作りのため、実際に体重を30kgも落として撮影に臨んだという。その容姿は本当に骸骨のように見える。アウシュビッツかビアフラかというくらい、スゴイ。ロバート・デニーロを超えたかも。

 「それ以上痩せたら死ぬぞ」と何度もセリフで言われるが、本当に死にそうなくらい痩せている。これは怖い。これがスピルバーグの「太陽の帝国」(Empire of the Sun・1987・米)でマスタング戦闘機に見とれていた少年とはとても思えない。セリフ回しも、演技というよりは本当に力が出ない感じで、どうやって撮影したのか心配になるほど。だって撮影は深夜までに及ぶことも多く、体力勝負の面もあるのだ。看護婦が横に付いていて、待ち時間で点滴でも打たないともたなかったのではないかと心配になる。

 そして機械加工工場の油にまみれたどんよりとした雰囲気。これがまた妙にリアルな生っぽさがあり、嫌みな上司がいることでさらに独特の雰囲気を醸し出している。観客もこんな環境で毎日同じような働いていたら気がおかしくなるのではないかと思えてくる。この辺の演出は卓越している。ただ、話がやるせないだけ。

 その監督は、見ていないが、すれ違いのラブ・ストーリーを描いた「ワンダーランド駅で」(Next Stop, Wonderland・1998・米)や、設定と行き詰まる雰囲気だけ凄かった「セッション9」(Session 9・2001・米)を撮ったアメリカ人のプラッド・アンダーソン。うまい人なのか、それともそうじゃない人なのか、よくわからない。ただ、世界観を作り上げるのはめちゃくちゃうまいのだと思う。ということは、いい脚本さえあれば大ブレイクするかも。

 その脚本は、シャレなのかリメイク版「テキサス・チェインソー」(The Texas Chainsaw Massacre・2003・米)を書いたスコット・コーサー。手がちぎれるのはお手の物というところか。今後が楽しみな人だ。

 その手がちぎれる男を演じているのは、「スキャナーズ」(Scanners・1981・加)が忘れられないマイケル・アイアンサイド。この人はちぎれたりするのが得意なようで、「スターシップ・トルーパー」(Starship Troopers・1997・米)でもちぎられていたし、「スキャナーズ」では頭が炸裂していた。

 主人公に同情の念を持ち、また現状を脱出したくて結婚を望む娼婦に、サンダース軍曹(ビック・モロー)の娘「ルームメイト」(Single White Female・1992・米)の鬼女、ジェニファー・ジェイソン・リー。この人実に色んな作品に出ている。チャレンジ精神が旺盛なのか、すごいなあ。

 公開2日目の初回、40分前ほどに渋谷の劇場に着いたら、ビル自体がまだ開いていなかった。ただ案内の人がいたので、きれいな列が出来ていた。これはエライ。30分前くらいにようやくビルが開き、エレベーターで劇場へ。ビルの下には案内がいたが、劇場前のロビー(エレベーター・フロア)には案内なし。一体どこに並べばいいのだ。そのまま入って行くやつもいるし、並んでいるやつもいるし。どうなっているんだ。

 インターネットで座席を予約していったのだが、そうしたら初回プレゼントはもらえないのだそうだ。別に欲しい物ではなかったが、なんだか気分が悪い。他の人達と一緒に列に並んで待っていたのに。

 10分前で227席の4割ほどが埋まった。インターネット予約は5席ほど。しかし、この劇場はスクリーンが低く、字幕が下に出る最近の映画では、混むと前の人の頭で字幕が読めなくなる。どうしよう……。まだ入るのか。

 渋谷のせいかほとんどは20代で、男女比は6対4で男性が多かった。中高年は1割くらいか。最終的には7.5割ほどの入りは上出来だろう。混むと前が見えなくなるからいい加減にしてもらいたい。

 誰も携帯は切らないし、カーテンはないし、ついでに予告までなかった。予告の重要さは感じていないようだ。


1つ前へ一覧へ次へ