日本語字幕:手書き書体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル
(シンガポールPG指定)
アジア銀行が5人組のグループによって襲われた。しかし彼らの目的は金にはなかったようで、わざわざ警察に通報させると駆けつけた警察官を片端から射殺し始めた。香港を震撼させたこの事件で、担当することになったベテランのチャン刑事(ジャッキー・チェン)は、3時間で逮捕するとTVで公言し、若い刑事達を連れてアジトに乗り込む。ところが待ちかまえていた一味によって、全員がとらえられ、チャンは部下の命を懸けて一味の1人1人と対決をすることを強要される。 |
スゴイ。久々に香港アクション映画を堪能した。もしかしたらジャッキー・チェン映画史上、最高の1本かもしれない。挫折、失恋、親子の断絶……いろんなストーリーを描いて行く手法は、見事としか言いようがない。2時間の長丁場、ハラハラさせられ、泣かされ、笑わされ、驚かされ、まったく飽きることがなかった。お金を払った以上の満足があると思う。いや1,800円でも安いかも。それほどサービス精神に溢れている。できれば大きなスクリーンの劇場で、デジタル・サウンドで鑑賞したいが……。 ジャッキー・チェンは歳をとったけれど、まだまだ体が動くし、危険なシーンも自分でやれるが、やはり演技に幅が出てきたわけで、いままでよりずっと感情表現が豊かで心に迫ってくる。自分のせいで部下を死なせアル中になってしまう刑事を、本当にリアルに演じている。いつものカッコよく朗らかなジャッキー・チェンではなく、暗くうっ屈している。 といってもアクションがないわけではなく、むしろ満載。どんでもないスタントにジャッキーばかりでなく他の役者も挑戦している。ビルを垂直の駆け降りるとは!! まったくむちゃくちゃだ。スタントマンも使っているはずだが、実際に役者自身もかなり危険なシーンを撮っている。これは必見。 なんでも、ジャッキー・チェンはハリウッドで、出会う監督という監督が皆「君を変えて見せる」とか言うそうで、自分の型にはめようとするらしい。それにうんざりしたジャッキーが、自分らしい思い通りの映画を作るということで、香港に帰って作った作品が本作ということだ。 まず監督が、ベニー・チャン。この人はつい最近イーキン・チェン出演作品中最高傑作ではないかという刑事アクション「ヒロイック・デュオ 英雄捜査線」(双雄・2003・香)を撮った実力者。さらにさかのぼればジャッキー久々の冒険談で山本未来も出たおもしろ活劇「WHO AM I ?」(我是誰・1999・香)もジャッキー・チェンと共同監督していて、さらに仲村トオルが悪役で出演し、香港ヤング・スターがずらりそろった「ジェネックス・コップ」(特警新人類・1999・香)では監督の他に脚本とプロデューサーまで兼ねている。いずれも面白い作品ばかりで、この人の実力は本物といっていいだろう。 出演者も豪華。恋人に、あまりにヒドイ劇場で見に行かなかった金城武のアクション香港映画「ダウンタウン・シャドー」(DOWNTOWN TORPEDOES・1997・香)を最後に映画界から引退したチャーリー・ヤン。日本の女優さんで言えば石田ゆり子のような楚々とした美人。今回この作品への熱烈なオファーによって(誰のだろう? シャッキー? ベニー・チャン監督? プロデューサー?)復帰を決意したのだとか。次回作ももう決まっていて、ツイ・ハーク監督作品になるらしい。楽しみ。 後半、ジャッキーの相棒となる若手刑事(?)が、「ジェネックス・コップ」でも活躍していたニコラス・ツェー。アイドル歌手から、アーティストへと脱皮し、演技力もつけてきた。英語もぺらぺら。やや重い話の中で、唯一明るく、コメディ・パートの重要な役を実に自然に演じている。しかもラストにはちょっと泣かせてくれる。でも、あの着ていたよれよれのアーミー・コートは「踊る……」の織田裕二だよね。 そのニコラスとジャツキーを助ける警察官が、散々だった「ツインズ・エフェクト」のアイドル、シャーリーン・チョイ。コミカルなチョイ役だったが、もう1人のジリアン・チョンはどうしたのだろう。 犯罪グループの複雑な過去を持つボスをクールに、かついかにも憎たらしく演じて見せたのはダニエル・ウー。「ジェネックス・コップ」組の1人で、つい最近劇場公開されたチン・シウトン監督の「レディ・ウェポン」(Naked Weapon・2002・香)にも出ていたアメリカ生まれの二枚目。もちろん英語ぺらぺら。 グループの紅一点はココ・チャン。2003年に映画に初めて出演したという香港のトップモデルだそうで、どこか香港離れした感じの美女。今後楽しみな1人。 グループで一番切れやすい男を演じたのは、ほとんど悪役が多いテレンス・イン。瀬戸朝香が出た傑作、アンドリュー・ラウ監督の「バレット・オブ・ラブ」(Bullets of Love・2001・香)や、日本の「漂流街」(2000・日)、「カラー・オブ・ペイン 野狼」(2001・日)にも出ていた。 銃の設定もしっかりしており、警察はピストルはグロックとショットガンがたぶんモスバーグ。特殊部隊はMP5を使っている。一方、犯罪グループはみな良家の子息子女なので、金があるからヨーロッパの高い銃が買えると、オーストリアのAUG、イギリスのL85A1、アメリカのM4カービン、ひょっとしたらマズライトもあったかも。 シャッキーは最初グロックを持っているが、途中でS&Wの4006のような銃を使っている。カット変わりで一瞬角トリガー・ガードになっていたが。後半は再びグロック。 犯罪グループと命を懸けたゲームをするシーンで、最初にやるのがカンフーではなくて、グロックを使った拳銃組み立て早撃ち比べ。どちらが速く組み立てて相手を撃てるか。これがラストに利いてくる。よほど練習したのだろう、ジャッキーもダニエル・ウーもかなりうまい。 公開2日目の2回目、25分前に着いたら行列はロビーに収まらず、階段の下にまで達していた。多分階段だけで50人くらい。ロビーにもそれくらいはいるだろう。むむ、やはりジャッキー映画は混む。それなのに、いつも劇場が良くない。 20分前になって入れ替え。場内は指定席なし(フラットな客席で、どの席からも前席の人の頭でスクリーンがよく見えない劇場だから当然だろう)の306席は一気に1/3ほどが埋まってしまった。下は18歳くらいから老人までまんべんなく幅広いのがジャッキー映画の特徴。劇場によってはもっと若い層がいることもある。男女比はほぼ半々。女性にも人気が高い。 10分ほどでほぼ全席が埋まってしまった。ひさびさに満席の劇場を見た感じ。ジャッキーでこのできなら当然だろうが。 お約束どおり、ラストにはメイキングとNG集が。ジャッキー映画は撮影現場もスゴイ。アイドルだってスタントまでやる。公式サイトのスペシャル・コンテンツのビハイド・シーンでは、一部のメイキングが公開されている。これだけでも充分スゴイ。一見の価値あり。 予告で「スター・ウォーズ」の新作のものが、なぜかビスタに上下マスクで上映されたが客席はいたってクール。「ふーん」という感じで、驚きの声もなくシーンとしたまま。前2作があれだからなあ。むしろ「ブレイド3」の方がずっと期待感も大きく、ワクワクした。早くも予告編登場。 |