日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/ビスタ・サイズ(Panacam Africa)/ドルビーデジタル、dts、SDDS
(米PG指定)
アメリカ、ケンタッキー州。ある嵐の夜、サーカスのトレーラーがパンクし、大混乱の中1つのカゴを置いて行ってしまう。翌朝その場所をトラックで通りかかったウォルシュ農場のノーラン(ブルース・グリーンウッド)は、そのカゴにシマウマの赤ちゃんが入っているのを見つけ、家につれて帰る。動物園に渡すつもりだったが、亡き妻の忘れ形見、一人娘のチャニング(ヘイデン・パネッティーア)の願いで農場で飼うことになる。3年後、ストライプスと名付けられたシマウマは、すぐ近くに大きな競馬場があったことから、競馬に憧れ、競争馬になることを夢見るようになっていた。 |
昔から描かれてきたありふれた青春挫折物を、動物の視点から描くことによって「ベイブ」風味の感動物語に仕上げた快作。IMDbでは5.8という低得点だがアメリカでは84分版の公開で、18分も長さが違うためと思われる。日本公開版では各エピソードがじっくり描かれているためだろう、心情がより良く伝わってくる。2回ほど涙が……。 「シャーク・テイル」とは対照的に、先の読めるストーリーを実に巧妙に組み立て、清々しい感動ストーリーになっている。登場するキャラクターも魅力的で、ちょっと汚いところもあるがどうにかセーフのギャグもちゃんと笑わせてくれる。 家族や仲間の絆、夢、恋愛、ライバル、挫折、偏見、差別、暴力、妨害……実にうまくまとまっている。これはウマイと言うべきだろう。わかりきった話で感動させるのは難しい。しかも笑わせてくれるし。 まず優しいお父さんがいい雰囲気。演じたのはブルース・グリーンウッド。マジメで優しそうな雰囲気たっぷり。「13デイズ」(Thirteen Days・2000・米)でアメリカ大統領を演じていた人。その娘がヘイデン・パネッティーア。現在16歳で、「タイタンズを忘れない」(Remember the Titans・2000・米)ではタイタンズを応援する少女を演じていた。あの小さな子がねえ……親戚かオレは。以外に声優としての活躍も多く、「ダイナソー」(Dinosaur・2000・米)で子供の恐竜の声を、「バグス・ライフ」(A Bug's Life・1998・米)ではあのかわいらしいドット姫の声をやっていたのだ。つまり名子役。 よくセコイ小悪党を演じているM・エメット・ウォルシュは、今回は娘のチャニングを陰で支える良い人役。ボクサー映画で主人公を鍛え上げて行くトレーナーのような役割を好演している。が、その役の設定が中途半端で、あまりいてもいなくても変わらないものだったのは残念。 動物キャラクターは「ベイブ」のスタッフが関わっているというだけあって、実にいい。ロボットのように精巧に作られたアニマトロニクスと、実写の口先だけをCGで置き換えてセリフをしゃべらせている特殊効果によって、なかなか自然で違和感はほとんどない。それより驚くべきは豪華な声優陣。農場の中心的存在で心優しいヤギのフラニーに、「天使にラブ・ソングを」(Sister Act・1992・米)のウーピー・ゴールドバーグ、ストライプスを元気づけトレーニングして行くポニーのタッカーに「ニューオーリンズ・トライアル」(Runaway Jury・2003・米)でも良い味を出していた名優ダスティン・ホフマン。深夜の馬レース(「アメリカン・グラフィティ」(American Graffiti・1973・米)で有名な路上レースの動物版)を主催しているサラブレッドのクライズデールに「グリーンマイル」(The Green Mile・1999・米)のマイケル・クラーク・ダンカン。都会から逃げてきた小心者のギャングでペリカンのくせに雁(グース)だと名乗るグースに、悪党役では定評のある「マトリックス」(The Matrix・1999・米)の裏切り者、ジョー・パントリアーノ(日本語吹替版はなぜかオセロの松島尚美と女性になってしまっている。しかも大阪弁?)。偉大な父の子として厳しく育てられているストライプスのライバル、エリート・サラブレッドのプライドに、「飛べないアヒル」(The Mighty Ducks・1992・米)の子役で「ザ・スカルズ 髑髏の誓い」(The Skulls・2000・米)ではりっぱな青年に成長していたジュシュア・ジャクソン……と、それはもう本当に豪華。 そして、今回もっとも問題ありかもしれない完全CGキャラクター、2匹のハエのバス&スカズ。愉快なやつらなのだが、ハエなのでいかんせん汚い。ウンコの中に突入したり、食べ残しをあさったり、もう限界ギリギリ。 監督はベルギー出身のフレデリック・デュショーという人。ワーナーのアニメ「キャメロット」(Quest for Camelot・1998・米)を監督している。が、「キャメロット」自体がいまひとつパッとしなかったような……。今後は期待かもしれない。 公開2日目の3回目、字幕版初回、銀座の劇場は全席指定・定員入れ替え制で、前売り券も先売り券と交換しておけばあらかじめ席が確保できる……それがかなり面倒なのだが、20分前に着いたらちょうど入れ替えの時。ポツポツ人が入り始めていた。15分前くらいから場内案内の上映が始まり、10分前には40人くらいに。男女は半々で、下は小学生くらいから、上は老人までけっこう幅広い。中心は若いカップルというところか。 最終的には540席の2割程度しか埋まらなかった。残念。いい映画なのに。10席×3列の中央指定席には3人座った。10席のぴあ席には0。10席×2列のレディース・シートにもだれも座っていなかったようだ。 予告ではイーストウッドの「ミリオンダラー・ベイビー」とジェット・リーとモーガン・フリーマンの「ダニーザドッグ」がとても面白そうだった。 |