ビスタ・サイズ(ARRI 535)/ドルビーデジタル
ある日、突然、東京に正体不明のロボットが現れ、街を破壊し始める。ラジコンが得意で、一瞬で対象物の詳細を見ることができる特技を持つ小学生、金田正太郎(池松壮亮)は、突然現れた綾部と名乗る老人(中村嘉葎雄)が現れ、このリモコンを使って鉄人28号を操縦し、謎のロボットと戦えという。 |
うーん、たぶん子供向けの映画なのだろう。大人にはどうにも脚本のアラばかりが気になって、いまひとつ楽しめない。今の子供たちにとって「鉄人28号」がどういう位置づけなのかわからないが、オヤジ世代にとっては子供の頃「鉄腕アトム」と並んで夢中になって見たロボット・アニメの傑作なのだ。そのオヤジ達が見に来ることを考えなかったわけではないと思うが……。 東京を破壊する目的で作られた兵器としてのロボット、ブラック・オックスが武器を持っていないことに先ず驚くし、ホントに破壊する気ならロボットなんて使わずに、ミサイルを撃ち込むとか爆弾を仕掛けた方がよっぽどてっとり早い。都心の道路の上を超低空で飛び回って破壊って言われてもなあ……。 タイトル・バックで語られる第二次世界大戦末期に開発された秘密兵器の部分とか、導入の小学校での授業風景などとてもいいのに、そこからの展開があまりにも強引すぎる。アメリカから派遣されてきた、15歳で大学を卒業したとかいう天才少女のFBI捜査官だかなんだか、ありえない設定に息を飲むばかり。別にアメリカやFBIとか持ち出さずに、ただのその辺にいる天才少女にして、巻き込まれて行くだけで良いと思うのだけどなあ。 最大の問題点は脚本にあるとすると、次に問題なのは3D-CG。実写との合成は光の方向や周囲の反射など自然でよく溶け込んでいるが、リアリティがほとんどない。いかにも3D-CGで、実在感がなく、キレイ過ぎる。殴り合ってもキズ1つつかないし、凹みもしないし、ペインと1つはげない。鉄人が倒れてビルが壊れる感じなどは良いのに。しかも劇中、手首の辺りはアルミで出来ているとか言ってて、これで殴り合っているんだから、なんだか。それで、天才少女のはずの彼女が「もっと強くしたいの」とか言うと、下町工場の職人のおっちゃんが「それじゃあ、ジュラルミンしかねえな」って、あなた、たちどころに鉄人に改造をバンバン加えていく天才少女が、ジュラルミン程度も発想できず、それで納得しちゃうわけ? せめて超チタニウムとか、テツジンチュウムとかもっともらしい素材をでっち上げられなかったのか。 それに、街に謎の巨大なロボットが現れたとしたら、少なくとも警察だけじゃなくて自衛隊くらいは出動するんじゃないかなあ。近ごろの子供だったらそれくらいは考えるんじゃないだろうか。いきなりほととんど誰も知らない鉄人を出してくるだろうか。……残念。 公開2日目の3回目、新宿の劇場は40分前に着いたらロビーに10人くらいの人。小学生くらいの男の子を連れたお父さんが1組、若いカップルが2組、若い男性2人、オヤジ2人という感じ。 30分前くらいから人が増え出して、25分前に案内があって並ぶ。15分前に入れ替えとなり、場内へ。指定席なしカーテンなしの209席の1/3くらいが埋まった。下は小学生くらいからいたが、中高年と20代後半くらいが半々。男女の比率は女性が1/4というところ。始まるまでに場内で懐かしいテーマがかかると、口ずさんでいるおとーさんが結構いた。それなのに……。 最終的には7.5割ほどの入り。これはなかなか上々ではないだろうか。それにしても、そろそろ「アビエーター」の予告は飽きてきた。内容が変わらないのにやりすぎ。 |