2005年3月26日(土)「アビエイター」

THE AVIATOR・2004・米/日/独・2時間49分(IMDbでは170分)

日本語字幕:手書き書体下、古田由紀子・監修: 青木謙知/ビスタ・サイズ(1.85)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

http://www.aviator-movie.jp/
(全国劇場案内もあり)

父が残した莫大な遺産を基にハリウッドに乗り込んだ若き青年実業家ハワード・ヒューズ(レオナルド・ディカプリオ)は、プロデューサーとして映画作りに着手。1927年に自らメガホンをとって「地獄の天使」の製作に乗り出すが、空中戦の撮影に時間がかかり、またトーキーに対応するため製作に3年の月日がかかってしまった。そしてその撮影で得たノウハウからヒューズ・エアクラフト社を設立、航空機生産に乗り出す。キャサリン・ヘップバーン(ケイト・ブランシェット)と知り合ったヒューズは、真剣に結婚まで考えるが、次第に合わない面ばかりが目立つようになってくる。またヒューズは航空会社TWAを買収し、国内線のみならず国際線にも乗り出そうとする。それを知ったパンナムの社長ホアン・トリップ(アレック・ボールドウィン)は妨害工作にでる。

75点

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 実話を基にしたアメリカの有名人の半生を描く壮大な伝記ドラマ。ハリウッド華やかなりし頃の雰囲気、航空機開発に賭ける夢、第二次世界大戦、陰謀との戦い、挫折、異常……まさに実話とは思えないほど波乱万丈で、映画的。映像の豪華さはまさに映画の一面を象徴しており、久々に映画を見たという充実感を味わった。さすがマーチン・スコセッシ監督。

 伝説的な人物を演じるため、レオナルド・ディカプリオはかなりがんばっている。彼になり切ってすばらしい演技を見せてくれている。特に後半、潔癖症がエスカレートし、1つの言葉を繰り返し言い出して止まらなくなる発作などみごとだ。これでアカデミー主演男優賞が取れなかったのは、本当に残念だ。「レイ」は見ていないが、「コラテラル」でのタクシー・ドライバーも良かったから、ジェイミー・フォックスはもっと素晴らしい演技を見せたのだろう。

 助演女優賞をこの作品のケイト・ブランシェットが取っているが、全編に渡って出ているわけでもないし、途中でヒューズと別れているわけで、いい演技だとは思うけれどそこまでの衣装は残さない。他の候補がたいしたことなかったってことか。

 まったくのちょい役だが、オバカな役者としてのエロール・フリンをジュード・ロウが演じている。わずかなシーンだが、嫌らしさが良く出ていてキッチリ印象に残る。いい役ではないが、お得だったかもしれない。

 もうひとり嫌らしい役で印象に残るのはパンナムの社長ホアン・トリップを演じたアレック・ボールドウィン。彼もずっと出ているわけではないが、存在感があり、既得権をなりふりかまわず死守しようとする俗物らしさが良く出ていた。

 圧倒的だったのは「地獄の天使」を撮る冒頭のパート。デジタルを使っているにしても、絵がきれい。ミニチュアかもしれないがズラリと揃った複葉機やその編隊飛行、ドッグ・ファイトなど最高の美しさ。これぞ映画だなあという感じ。

 面白さで言えば、若きハワード・ヒューズが莫大な資産を使って買収を繰り返していくところが、昨今のホリエモン劇場のようで良かった。ただ、アメリカではそれが1930年代からあったというところが驚きではあるのだが。

 監督は言わずと知れた名匠、マーティン・スコセッシ。とにかく「タクシー・ドライバー」(Taxi Driver・1976・米)がショッキングだったし、予想もつかない奇想天外な展開の「アフター・アワーズ」(After Hour・1985・米)でも心をわしづかみにされた。黒澤明監督を師と仰ぐ人で、「夢」(1990・日/米)にはゴッホ役で出演までしている。確かNYで大学の映画の講義をしていたのではなかっただろうか。

 公開初日の初回、新宿の大劇場は65分前に着いたらすでに20人ほどの列。男女比は4.5対5.5といった感じで、やや女性が多いか。中高年が2/3、20代くらいが1/3といったところ。例によって若い人は女性に多かった。

 劇場前が工事していたこともあって、55分前には早くも開場。日差しが強い日でこれは嬉しかったがしかし、こんなに早いとまたコーヒーを買ってしまう……。初日プレゼントがあって、ディカプリオのサイン入り生(?)写真。

 初回のみ、スーパー・ペア・シート以外、全席自由。10席×3列×左右の指定席も自由。場内は「ムーンライト・セレナーデ」「スターダスト」など1930年代っぽい曲が流れて、すでに雰囲気は充分。やっぱりコーヒー飲もう。薄暗い照明だし、ああリラックス……。

 30分前で1,064席の2〜3割ほどが埋まった。15分前にはそれが5.5割ほどになり、最終的には7.5割ほどが埋まった。これはなかなか優秀。ただ、またあやしげな10人ほどの1団がいて、周囲に目を配っていた。あんたら刑事か。関係者だろうが、感じ悪い。

 上映の最初にビデオの上映があり、次回作のためにプロモーションで来日できなかったレオ様ことレオナルド・ディカプリオからメッセージが流れた。来日できなかったお詫びと、楽しんでくださいといったような内容だったが、こういう気遣いが彼の人気を維持しているのだろうし、またスターだからこそ出来ることでもあるのだろう。ちなみにこのメッセージは全国で26日と27日のみ流されたという。


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