2005年4月9日(土)「フライト・オブ・フェニックス」

FLIGHT OF THE PHOENIX・2004・米・1時間55分(IMDbでは113分)

日本語字幕:手書き書体下/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー、dts

(米PG-13指定)


http://www.foxjapan.com/movies/flightofthephoenix/
(全国劇場案内は準備中)

モンゴルのゴビ砂漠にある石油会社、アマコア社の油田が閉鎖されることになり、従業員と機材を運ぶため小型輸送機がやってきた。そして、流れ者の若い男も加えて飛行機は飛び立ったものの、途中で巨大な砂嵐に遭遇し、砂漠の真ん中に不時着、機体も破損してしまう。無線も破損したためSOSを出すこともできない。水も食料も尽きかける中、残骸から飛行機を作って脱出しようというアイディアが出る。

72点

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 すぐに気付くのは「飛べ!フェニックス」(The Flight of the Phoenix・1965・米)のリメイクだということ。ボクはテレビでしか見ていないので、145分版がどれだけカットされたかを考えるとほとんど別物だったような気はするが、エッセンスだけは味わったかなと。でも、それだけでも充分面白かった記憶があるから、リメイクしようという気にもなったのかもしれない。しかし、かなり無謀なことも事実だ。そんな名作に挑むなんて……名作のリメイクでほとんど成功した例がない。

 ただ、本作も「元ネタ」を考えなければ、そこそこ面白い冒険譚になっていると思う。3D-CGの最新技術によってリアルでスケールの大きい砂嵐と、それに翻弄される小型輸送機がスゴイ迫力で描かれている。これは見る価値がある。

 そして、これはオリジナル通りのようだが、1人のヒーローがいて全員を引っ張っていくのではなく、それぞれが結構利己的で、それがぶつかるのがいい。オリジナルにはなかった紅一点を付け足したのは新しさを出そうとしたのだろう、荒涼とした風景と物語に安らぎを与えている。とは言え、誰かひとりみんなを引っ張って行くリーダーなりがいないと、感情移入ができない。最後まで客観的に見てしまう。ある程度は理想的な人物か、ヒーローに匹敵する人がいないと、やっぱり熱くなれない。

 何か足りない感じがする。悪くないのになんだかガツンとこない。つまり145分(IMDbでは142分)のオリジナルが115分でリメイクされたということは、30分相当のいくつかのエッセンスが欠けたか、ディテールが欠けているはずだ。これはもう一度「飛べ!フェニックス」を見ないと。そう言えばつい最近DVDが発売されたらしい(20世紀FOXホームエンターテイメント、12月までの期間限定、¥4,179(税込))。主演はジェームズ・スチュアートだし、ハーディー・クリューガー、リチャード・アッテンボロー。アーネスト・ボーグナイン、ビーター・フィンチ、ジョージ・ケネディ……とまるでオール・スター状態。監督も「特攻大作戦」(The Dirty Dozen・1967・米)のロバート・アアルドリッチだしなあ。いまなら2,700円ほどで買えるらしいし……。欲しい。

 本作の出演は……主演につい最近「デイ・アフター・トゥモロー」(The Day After Tomorrow・2004・米)で息子を助ける父を演じたデニス・クエイド、その相棒AJに「ワイルド・スピードX2」(2 Fast 2 Furious・2003・米)のタイリース・キブソン、クセものの謎の男に「閉ざされた森」(Basic・2003・米)でキレまくっていた30歳のジョバンニ・リビシ、ドラマを盛り上げるためか新たに追加された紅一点、「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズで王女エオウィンを演じたミランダ・オットー、石油会社の役員イアンに「スチュアート・リトル」シリーズで優しいお父さんを演じたヒュー・ローリーというところで、いまひとつ前作から見劣りする感じ。

 監督は「エネミー・ライン」(Behind Enemy Lines・2001・米)で監督デビューしたジョン・ムーア。部分部分はいいのに、全体としてはいまひとつの感があったが……それで2作品めがリメイクというのはプロデューサーに信頼されているんだか、いないんだか。ただ、前作はスーパー35のトリミングのシネスコ・サイズだったのに、今回はレンズを使った本式のシネスコ・サイズだった。

 劇中登場する双胴の飛行機は、オリジナル版ではC-82が使われたが、本作では“フライング・ボックスカー”フェアチャイルドC-119が使われている。C-82も1948年までに220機しか作られておらず、すでに残っていないようだ。それでC-82をベースに開発された形の似たC-119が選ばれたらしい(上記リンクを参照)。公式サイトによれば、C-119は1950年代に登場した機体で、これも現在ではほとんど残っていないという。しかし、壊れた双胴の2発の機体から単発の機体を作るというストーリーのために、このタイプの機体は不可欠だったのだ。撮影では、世界中から4機が集められたらしい。ジョン・ムーア監督はかなりの飛行機マニアらしい。

 さらに公式サイトによれば、劇中の砂漠はモンゴルのゴビ砂漠という設定だが、実際には様々な理由からナミビアの砂漠で撮影されているという。

 また、本作のプロデューサーにウィリアム・アルドリッチという人がいる。彼が20世紀フォックスの重役に「飛べ!フェニックス」のリメイクを持ちかけたという。そう、ご想像どおりロバート・アルドリッチ監督の息子さんである。なんでリメイクを……という気がしないでもないが。

 ちなみに、飛行機に積んであるサバイバル用のピストルはコルト・ガバメントで、砂漠の盗賊どもが持っているのはAK47ライフルのようだった。石油会社の役員イアンが持っていたのはエンフィールドかウェブリーのリボルバー。

 興味深かったのは、C-119を始動するのに、ショットガンの12番径くらいの空砲(?)のようなものを、リボルバーのシリンダー状のコンテイナーに詰め、セットするところ。テレビの短縮版しか見ていない「飛べ!フェニックス」でもあったのだろうか。記憶が確かでない。この空砲のガスをエンジンの燃焼室に直接吹き込んでピストンを押し下げるというような仕組みらしい。カートリッジは5発しか残っていない。それでエンジンが始動するかって、始動するに決まっているんだけど、やっぱり定石どおり最後の最後か……。まっ、どれただけハラハラさせてくれるか見てのお楽しみということで。

 公開初日の初回、新宿の劇場は50分前に着いたら誰もいなかった。40分前にようやく5人。中高年のみで、なんとそのうち老人が3人。30分前になって、7人ほどに増え、老に近いオバサンが2人。20分前にやっと開場。この時30代くらいが2人。

 指定席無しの場内に入ると、トイレの消臭剤のような匂いが……。うーん、昔の映画館にはよくあったけど、まだこんなところがあるなんて。しかも場内に流れている音楽にブーンというハム音が乗って不快なことこの上ない。こんな不協和音みたいなものを20分も聞かされるのだ。これなら無音の方がまだいい。なぜ劇場の人は気付かないんだろう。

 1,800円という料金を考えた時、普通のレストランで1品頼んだのと同じくらいだとすると、どんな環境だろうか。どんな接客だろうか。メインである料理(映画)の出来を別として、どれだけのサービスがあるだろうか。考えちゃうなあ。なんだか悲しくなってくる。

 10分前くらいに場内には30人ほどとなり、若い女の子が3人やってきた。あらら。最終的に50人いっただろうか。ほとんどが中高年だったということは、やはりを見た人達か。

 新しい「宇宙戦争」の予告編が流れた。それにしてもこれまでのBGMとは対照的な素晴らしい音。クリアでサラウンド感たっぷりで、ものスゴイ迫力。これで予告編だからなあ。「スター・ウォーズ」はあいかわらず1.66で予告。なんでだろ。

 冒頭のキャストやスタッフの文字の出し方は、砂漠に影が落ちるという凝ったもので、ラストのクレジットを見たらピクチャー・ミルの仕事だった。やっぱりね。


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