ビスタ・サイズ(1.66上映)/ドルビーデジタル
江戸時代末期の文化・文政時代(1804〜1830)、人の姿を借りて人間界に住む魔物たち「鬼」を退治するため、幕府は「鬼御門」という組織を結成、容赦なく鬼どもを斬り殺していた。そんなある日、「鬼御門」たちの前に美惨(びざん、樋口可南子)があらわれ、まもなく鬼の王「阿修羅」が永い眠りから覚め復活すると告げる。 |
ちょっと香港映画の時代物SFといった感じで、そういうものが日本映画で作れるのか不安もあったが、これはアリでしょう。部分的にギャグが滑ったり、芝居(演出?演技?)がわざとらしかったりもするが、全体としてはエンターテインメントしていて、おもしろい。そして、やっぱり宮沢りえはきれいだなあ。ちょっと痩せ過ぎだけど。そして、市川染五郎の江戸弁というのか、べらんめえ口調が中村勘三郎みたいで意外にピッタリ。新たな魅力を引き出すことに成功しているのではないだろうか。 ただSFXはどうにもアニメ的な感じのものが多く、いかにも特殊効果っぽい。合成がうまくいっていないとか、色調が合っていないとかそういうことではなく、使い方が適切でないような……。むしろデジタルではなく、基が舞台劇であるのだからアナクロというか従来の手法でやってもよかったのでは。正直、デイ・フォア・ナイト(昼間撮影したものを夜のように見せる)はきついけど……。 やや前半はノリキレない。市川染五郎と宮沢りえが前面に出てきたあたりから良くなってきて、集中して見られるようになってくる。奇想天外な話が恋愛モノへとシフトしてきて、現実的なところ、入れ込んで見られるパートになったからかも。というのも、その部分に関係のない他の登場人物が、いずれも存在感が希薄なのだ。がんばっているというか、ノッているのは市川染五郎と宮沢りえだけという感じすらする。 アクションのチャンバラは、市川染五郎を初めとしてスピード感があり、いい感じ。そして、お話全体をアクションでまとめているのも好感が持てる。ヘンに恋愛メインにしていないところが潔いというか。ラスト、なんで「おまえの中に突き立てたい」とかそういう方向へいってしまうのか、よくわからなかったが。 悪いヤツはいつも暗い洞窟のようなところにいるとか、ステレオタイプな設定も目につくが、時代劇は元々たくさんの約束事から成り立っている。これはしようがないのだ。江戸時代、実際には武士であっても簡単に刀を抜くことは許されておらず、場合によっては刀を抜いただけで切腹となりかねなかったといっても、それでは時代劇は成立しないし、ましてやチャンバラ活劇など作れはしない。そう考えれば、やっぱりこれはアリなのだ。異形の者もハリウッドっぽい感じがしないでもないが、怖そうでいい。衣装も、美術も見事だ。 監督はピンク出身の滝田洋二郎監督。「陰陽師」シリーズ(2001、2003)が有名だが、やっぱり最初に話題になったのは「コミック雑誌なんかいらない」(1986)で、明るく泣かせる「病院へ行こう」シリーズ(1990、1992)で、アクション・コメディの「僕らはみんな生きている」(1992)であり、ハードボイルドの「眠らない街 新宿鮫」(1993)だろう。アクションもコメディもドラマもいける実力派。それを考えると、もっといいものができてても不思議ではないのだが……。 公開2日目の初回、55分前についたら12〜13人の行列。若い男性1人と中年男性2人の他はすべて女性。それも中高年。老人も目立つ。歌舞伎の流れがあるんだろうか。 40分前に開場し、この時点では30〜40人ほど。1階のレディース・シート以外2階も全席自由。 カーテンなしで1.66で開いており、15分前から場内案内を上映。最終的には3.5割ほどしか埋まらなかった。 予告は「ホステージ」がいよいよ始まり、なかなか面白そう。日本映画の「大停電の夜に」はどうなんだろう。「妖怪大戦争」は完全な子供向け映画か。「HINOKIO」は大期待だが、はたして。 |