日本語字幕:手書き書体、下、根本理恵/シネスコ・サイズ(ARRI)/ドルビーデジタルEX
(日R-15指定。前売り券には記載なし)
暴力団が経営するホテルで用心棒の若頭として伸びてきた武闘派のソヌ(イ・ビョンホン)は、ボスのカン(キム・ヨンチュル)にも気に入られ、3日間留守にする間、若い愛人のヒス(シン・ミナ)が浮気していないか監視するよう命令される。ソヌはヒスに好きな男がいることに気付き、二度と会わないことを約束させ見逃してしまうが、後にそれがとんでもない事態を招いてしまう。 |
タイトルとは裏腹のタイトロープのようなヤクザという人生を描く。過剰なまでの溢れる暴力と流される血の量はハンパじゃない。感動などの前に気持ち悪くなった。ラブ・ストーリーというより、ハッキリいってかつての日本のヤクザ映画を今風に描いたもの。一部ラブ・ストーリーっぽい部分もあるが、それは不条理なヤクザの世界を描くための要素の1つに過ぎない。女性や18未満には刺激が強すぎる気がする。 これがヤクザという生き方なのだ。 ラスト、ホテルの最上階にあるらしいバー付きのレストランでの大銃撃戦がクライマックスになっているのだが、これが撮りたくてこの映画を作ったのではないかという気がした。実在するレストランのようで、エンド・クレジットで撮影協力として“スカイレストランDolce Vita”と出た。ドルチェ・ヴィータ(Dolce Vita)はイタリア語で甘い生活のこと。実はボクはWEBマンガ、漫画街の「ドルチェ・ヴィータ」という殺し屋の女子高生が主人公のマンガの銃器アドバイザーをやっていて、きいたことのあるフレーズで、ピンと来たというわけ。ははーん、だからタイトルが「甘い人生」なんだ。 それにしても、実際に危険なスタントも主役のイ・ピョンホン自身がやっているらしい。来日インタピューでそう言っていた。格闘シーンや銃撃シーンはもちろんのこと、腕を後ろにしたままロープで吊られたり、泥穴の中に生き埋めにされたり、そりゃもう過激この上ない。彼以外のやられ役の人たちも、走る車にしがみついたまま火が燃えているドラム缶にぶつかったり、ガラスを突き破ったり、イ・ビョンホンに殴られたり(ホントに当たっているように見える)……そりゃもう大変。デジタル技術も使われているようで、しかも韓国はかなりすすんでいるから、それで迫力を増しているようではあるが。 みどころはアクション・シーンだが、おもしろいのはやくざ組織の命令を下すような立場から、一気にチンピラに命を狙われるような立場へ転落してしまうところだろう。ただ、主人公も劇中で言っているが、なぜかがさっぱりわからない。どうしてこの程度で命まで取られなければならないのか。結局は親分のワンマン組織で、本人でない限り本当の理由はからない。これがヤクザという生き方なのだ。 驚くべきは銃器で、ロシアン・マフィアの武器やから調達する銃が、ロシアのスチェッキン・ピストルだということ。これはホルスターにもなるストックを付けるとフル・オートマチック射撃が可能になる特殊な銃。スクリーン初登場というわけではないが、ここまで大々的に使われたのは初めてだろう。銃砲規制の問題か、ストックは出てきたが取り付けてフル・オートマチック射撃までは見せてくれなかった。気になったのは1人の的に銃弾を使いすぎで、たくさんの敵がいる場合にかしこい撃ち方ではないと思った。気が転倒しているということなんだろうけど。 ほかにヤクザたちが使う銃にベレッタM92、シュタイアーTMPサブマシンガン、折り畳みストックのAK47Sなど。フルオート射撃の弾着が床を走っていく様など、かなりカッコよく計算されている。でもこの雰囲気は「マトリックス」(The Matrix・1999・米)に似ている。かなり影響されているのではないだろうか。 公開8日目の初回、銀座の劇場はビックカメラの中にあり、ビックカメラのビルが開演の40分前にしか開かないのでそれにあわせて35分前くらいに到着したら、受付のある7階から劇場入口のある8階まで行列が。前売り券があっても整理券との交換が必要で、受付は始まっていた。列は50人くらい。90%は韓流ブームでさわいでいるオバサンたち。やっぱり2枚目俳優の作品にはこういう人たちが押し寄せるか。 ボクらには、イ・ビョンホンはビームというより「JSA」(JSA・2000・韓)の若い兵士という感じだ。でもブームに乗ったオバサンたちにはアイドルで、関連商品などがよく売れていたようだ。ただし、ほとんどの人が見終わった後、圧倒的なまでの暴力とおびただしい流血にヘコんでいた。ボクも気持ち悪くなった。 受付で整理券をもらうと78番。全席自由の場内へ入ると、中央を中心に見やすい場所はほとんど埋まっていた。女性の中で、20〜30代の若い人は10〜20%くらい。男性(オジサン)は女性に連れられてきたという人が多い感じ。 韓国映画には珍しく、ドルビーEXの6.1チャンネルなので、確かに音から言うと中央付近が良い。ただ見ていて6.1チャンネルが生かされている感じはしなかった。とてもクリアーでいい音ではあったけれど。雨の音や銃声はよく回っていた。 最終的にカップホルダー付きのゆったりしたスタジアム形式の257席に8割ほどの入り。つくづくブームはすごいと思う。 |