シネスコ・サイズ(レンズ)/ドルビーデジタル
2004年クリスマス・イブの日、首都圏の地下鉄網に突如現れた謎の1両編成の電車。それは軌道幅を変更して違う会社の路線も走行できる実験車で、すべての地下鉄のコントロールを司る運行管理システムから停止させることは出来なかった。そして犯人から連絡が入り、交渉課準備室長の真下警視(ユースケ・サンタマリア)を名指しで交渉相手に指名してきた。 |
笑えるし、はらはらドキドキで、たっぷり2時間7分、端から端まで全部あんこが詰まっていて楽しめる。ただ、何か心に残るかというと、それはあまりなかった。それだけが残念。しかし料金分はちゃんと楽しめるし、期待を裏切ることはない。帰り際、あちこちで「おもしろかったね」という声が聞かれた。 これは「踊る大捜査線」シリーズの雰囲気を活かし、ほとんどそのキャラクターを使わずに(一部はかぶっているが)作り上げた、別ドラマ。監督が同じなので実現できたことだと思うが、これはなかなか大変なことだと思う。ただ、その分、主人公も含め登場人物は誰でも良かったわけで、よくよく考えてみると交渉人であることすら必要なかったのではないかと思えてくる。交渉人は立てこもり事件などで犯人と直接話をして説得したりする係だと思うが……。 いくら犯人の指名とは言え、これだけの重大事件がまだ正式な課としても認められておらず、なおかつ実績も上げていない若い警視1人に任せられるだろうかという疑問も湧く。 が、しかし、この映画はそういうリアリティの追及にあるのではなく、ライトなコメディ感覚のボリス・アクションというかエンターテインメントなのだから、いちいちあげつらわずにすべてを楽しむのがお得な鑑賞方法だろう。実際、たたき上げ、現場一筋という感じの寺島進演じる木島警視(警視ということはやっぱりキャリアか?)と、真下のやりとり、対比はかなりこっけいで、アリtoキリギリスの石井正則演じる地下鉄の広報マンともども笑えるエピソードが満載だ。 一番良かったのは、名わき役の國村隼。ホントうまい。いかにもいそうだし、こういう固めの人がいないと、ボケ役が引き立たない。リドリー・スコットの「ブラック・レイン」(Black Rain・1989・米)や香港映画「ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌」(Hard Boiled・1992・香)など外国映画にも多く出ている人だが、ボクはなぜか日本映画の「オーディション」(2000・日)が鮮烈で、それ以降の印象が強い。もちろん「キル・ビルVol.1」(Kill Bill: Vol.1・2003・米)のヤクザの親分も良かったけれど。とにかくウマイ人なのだ。 脚本は「踊る……」シリーズをやっていた人ではないけれど、「逮捕しちゃうぞ」とか「HUNTER×HUNTER」などのアニメを中心にTVの脚本をたくさん手がけてきた十河誠志という人。実写では「ショムニ」があり、あの雰囲気から本作を連想してもらうとわかりやすいかもしれない。 登場する特殊部隊もだからあまりリアルではない。衆人環視の中、MP5Jをハダカで肩に担いで、そのまま道路を走って地下鉄のホームまで行くのはどうなんだろう。現場に到着するまで銃は露出させない気がするが、まあそういう映画ではないのだ。……そのわりに思わせぶりな終わり方ではあるが。クモという特殊車輌のデザインも、好みだとは思うが、どうもアニメ的で浮いていた感じがした。 映画のマニア的なエピソードとか、犯人からかかってきた電話をわざと早く切るというハリウッド版「交渉人」(The Negotiator・1998・米)へのオマージュらしきものがあるが、どうにもしっくり来なかった。せっかくの映画のエピソードも真下は知らず、インターネットで調べて答えていたからだ。真下も映画好きでないとこのエピソードは盛り上がらない。 たぶん「踊る……2」と同じHD撮影ではないかと思うのだが、全体に色が浅い。ビデオっぽい画質。日本の場合フィルム撮影でも色が浅く、コントラストの弱い絵が多いので、もともと伝統的にそう言う傾向があるのかも知れないが、ちょっと残念な気も。 公開2日目の初回、55分前に新宿の劇場に着いたら9人が前売り券を持っている人の列に並んでいた。当日券の窓口には2人。うちオヤジはボクも入れてわずかに2人。高校生と中学生だった。女の子は2人。やっぱりTV系のものは若い子が多い。 40分前になって15人くらいになり、30代くらいのカップルとか、20代後半の女の子とかも来出した。35分前くらいから人が増え出して30分前に開場。指定席なしの場内は若い女の子が多く、やっぱりTV系だからかと納得できる客層。この時点で40人くらい。 近くにいた若い女の子が「字幕が下に出ると読みづらいところ多いよね」とか「ここ古くてトイレが汚い」と言っていた。ボクも同意見。やっぱりみんなそう思っているんだなあ。チラシさえまともに置いていないし。 指定席なしの586席に6割ほどの入り。男女比は4対6で女性の方が多く、高校から20歳前後が中心。中高年は1/4くらい。ちゃんとカーテンはあって、左右に開いて始まった。終わりはエンド・クレジットの後、「容疑者 室井慎次」の予告あり。ただ、始まる前にも「容疑者 室井慎次」の予告があったけど……。 |