2005年5月14日(土)「キングダム・オブ・ヘブン」

KINGDOM OF HEAVEN・2005・米/西/英・2時間25分

日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Super35、ARRI)/ドルビー、dts

(米R指定、西13指定、英15指定)日本語吹替版の上映もあり


http://www.foxjapan.com/movies/kingdomofheaven/
(全国の劇場案内もあり。音に注意。表示が遅い)

1184年フランス。赤ちゃんが死んでしまったショックで妻が自殺しひとりになった鍛冶屋のバリアン(オーランド・ブルーム)のところに、一時帰国していた十字軍のゴッドフリー卿(リーアム・ニーソン)が蹄鉄の取り換えのため訪れ、自分が父だと告げる。そして、世界中で唯一誰でも罪を許される地、エルサレムの王に仕えていて、これからもどるが一緒に来ないかという。聖地エルサレムは、キリスト教徒の王ボードワン4世(エドワード・ノートン)と、回教徒の指導者サラディン(ハッサン・マスード)との微妙な力のバランスの上に平和が保たれていた。

71点

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 すごいお金がかかっている大スペクタクル映画だが、一体何が言いたかったのだろう。人間ドラマが希薄なために、単なる史劇というか歴史の再現ドラマのような印象。運命に翻弄される一個人を描きたかったのか。物語はラストで再び冒頭へともどっていく。繰り返し果てしない殺し合いが演じられて、しかも平和は訪れず、天国の王国(キングダム・オブ・ヘブン)も実現しないと、そういうことか。

 別な言い方をすると、これは「ブラックホーク・ダウン」(Blak Hawk Down・2001・米)と「グラディエーター」(Gladiator・2000・米)を足して2で割ったようなものかもしれない。歴史の大きな流れと、作戦の失敗談。大軍の戦いと個人の戦い、残酷なまでの戦闘シーン……うーん、あまり心に残るものがなかった。

 十字軍についてもっとよく知っていれば面白かったのかもしれないが、日本人的にはとても縁の薄い話で今ひとつピンとこない。だいたい主人公は普通の鍛冶屋なのに、時間の関係もあるだろうが、最初からちょっと練習しただけで剣による戦いがうまかったり、攻城戦における独自の戦略を立てて見せたりと、ありえないような強引な設定が気になった。王の妹と恋に落ちる過程もよくわからない。一目ぼれということならそれもいいが、最初の時点から人妻だったわけだし。リアル・メイクなのか、あまり美人に見えなかったし。

 結局物語は最初にもどり、新しい妻を連れて帰った以外、なにも変わらない。あの激しい戦闘さえもなかったと言われればなかったと言えそうなこの結末。「ブラック……」と違って、意味のなかった戦いでも兵士達は最善を尽くしたとか、そういうものが伝わってこない。むしろ淡々としている感じ。

 少ない印象を探って見ると、人類は昔から殺し合いばかりしてきて、大量殺戮兵器こそなかったものの十字軍の時代も戦争でなくてもたくさんの人が死んでいると。だんだん野蛮でなくなってきて、いまのほうが戦争以外ではまともになってきたという感じか。主人公は、とんでもない悪党だとは言えフランスで殺人を犯していながら、罪に問われることがない。ラストにもどって来ても、逮捕される気配なく終わってしまう。その殺人から物語が始まるのであるから、本来ならラストで解決されなければならないのに、何のとがめもない。そしてあれだけ死を悲しんだ妻が眠る地へ別な女を連れて帰るわけで……よくわからない。

 脚本は劇場作品はこれが初めてというウィリアム・モナハンという人。もとは小説家らしい。今後「ジュラシック・パーク4」と「インファナル・アフェア」のハリウッド・リメイク版、1804〜1805年のトリポリを舞台とした冒険活劇「トリポリ」が現在製作中という。うーん、本作を見る限り不安を覚えるが、これら3作を見るまでは何とも言えない。

 らい病という設定でずっと仮面を被っていて顔がわからないエルサレムの王を演じているエドワード・ノートンがいい。表情がでないのに、感情が伝わってくる感じだった。せいぜい見えるのは眼だけ。しかし歩き方とかで病気で弱っている感じを表現し、手袋をした手だけで王としての威厳を表して見せたりと、素晴らしかったと思う。

 公開初日の初回、50分前に新宿の劇場に着いたら、前売り券の列に4人、当日券発売窓口(ボックス・オフィス)に1人。超大作であれだけ宣伝している割には少ないのではないだろうか。オーランド・ブルームの人気が今ひとつなのか。

 45分前に前売り10人、当日6人となり、40分前に案内があって列が二列にされた。25分前に窓口が開き、当日の人は券を買って前売りの列に。20分前に開場し、場内へ。12席×5列のカバーの席も初回のみ自由。この時点で50人ほど。

 男女比は半々で、老若比もほぼ半々。若い人に女性が多いのはいつもどおり。最終的には1,044席に100〜120人ほどの入り。これはさみしい。閑古鳥状態。やや中高年が増えたようだった。

 初回のみ予告編なしでの上映ということだったが、シネスコ・サイズのスクリーンの左右にマスクがでて「ロボッツ」の新しい予告があった。ロボットがとてもリアルでアニメチックなのに存在感があった。これは見たい。おもしろそう。

 初日プレゼントがあり、オーランド・ブルームのサイン入り(印刷)写真をもらった。


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