2005年5月28日(土)「ミリオンダラー・ベイビー」

MILLION DOLLAR BABY・2004・米・2時間13分(IMDbでは132分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(レンズ、Panavisionただ2.2に近かったような……)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13、日PG-12指定)


http://www.md-baby.jp/
(全国の劇場案内もあり。画面極大化。とにかく遅い。音にも注意)

ロサンゼルスのダウンタウンにある貧乏ジムに、ある日近くのダイナーでウェイトレスをやっている32歳の独身女性マギー・フィッツジェラルド(ヒラリー・スワンク)がやってくる。オーナーのフランク(クリント・イーストウッド)は、女であることと、年齢を理由に取り合わないが、あまりの熱心さに元ボクサーの住み込みの雑用係スクラップ(モーガン・フリーマン)が手を貸してやる。やがてフランクも口答えしないことを条件にトレーニングを引き受けるのだった。

74点

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 うーん、辛い話。暗いとか悲しいというよりも、辛いという感じ。映画的に作られてはいるが、描いていることは実生活でよくありそうな話。多くの人が共感できるのではないだろうか。ただ、その分、派手さはなく、実に地味な印象となる。

 IMDbで2万1千人以上が投票して8.4点というものすごい高得点。アメリカでもこういう映画が受けるんだ。観客の入りはどうだったんだろう。

 映画はナレーターである雑用係スクラップが、連絡の全く絶えたフランクの娘に宛てた手紙というか記録のような形ですすんでいく。その語り口がやさしく、まず心にしみる。そして、原作もそうなのか、人生を生き抜いていくための蘊蓄や教訓のようなものがあちこちにちりばめられている。いわく、「ボクシングは尊厳のスポーツだ。相手からそれを奪い自分のものにするのだ」とか「ボクサーはパンチだけでは勝てない。しかしハートだけのボクサーは負けるに決まっている」とか。ジムの壁には確かこんな言葉が貼られている「Winners are simply willing to do what losers won't」(ちょっと記憶があいまいだが「勝者はただ敗者がやらないことをすすんでやる」というような意味だろう)。この文字が常に見えるようにカメラ・アングルが決められているようだ。うーん、深い。

 とにかくトレーナーとボクサーと雑用係3人の人間関係が素晴らしい。3人とも血縁関係のない赤の他人なのに、家族以上に深い絆で結ばれている。逆に、この映画では本当の家族の方が他人以上に冷たく足を引っ張るような存在として描かれている。これがいちばん言いたかったことではないのだろうか。

 最初まったくマギーに興味のなかったフランクは「女でタフなだけじゃ不十分だ」と断る。もともと女に教える気など無いから原語では「Girlie, tough ain't enough」というようなことを言っている。ガーリーというのが面白いなと調べたら、軽蔑的に言う時の娘さんとか女の子という意味だとあった。勉強になるなあ。

 最後にはフランクはマギーに、自分が勉強しているゲール語(アイルランド語)の「モ・クシュラ」というあだ名を贈る。その意味は映画の最後に明かされる。それは見てのお楽しみ。でも、辛い。

 「30歳でバレリーナを目指すヤツがいるか」というようなセリフがあるが、これは効く。35歳以上の人で今が充実していると感じられない人にはグサッと来るのではないだろうか。人材募集でも35歳以上はほとんどないのが現実だ。といいながら、映画はそれを覆して見せる。ただラストのインパクトが強く、そのことをついつい忘れてしまう。

 マギーが生まれたのはミズーリ州で、ナレーターのスクラップによれば住んでいる人の数より木の方が多い州だという。これが笑わせてくれる。そして、フランクは休むことなく毎週末教会に通い、わかっていながらわざと神父に答えられない質問をして嫌がられているのを楽しむようなところも笑わせてくれる。そしてこれがラストに効いてくる。老境に入ったイーストウッドのポジションはフランクに近いのだろうか。

 曲は静かでシンプルで、なんか癒しのパワーがある感じ。クレジットを見たらオリジナル・ミュージック・バイ=クリント・イーストウッドとあった。作曲したんだろうか。映画には良い曲がたくさんちりばめられている。特にテーマは良い。

 グローブやサンドバッグなどやたら“EVERLAST”のロゴが映るなあと思っていたら、ボクシング用具の提供が“EVERLAST”だった。

 公開初日の初回、銀座の劇場はモーガン・フリーマンとヒラリー・スワンクの舞台あいさつがあるというのでパス(専用の入場券が必要らしい)して、新宿の大劇場へ。さすがにファンは銀座へ行ったらしく60分前についたら誰も並んでいなかった。ちょうど案内があって、こちらに並んでくれと。

 45分前に10人くらいに。20代後半から30代が3〜4人、あとは中高年。そのうち女性は2〜3人。35分くらい前に開場。この時点で20人くらい。

 初回だからかカバーのついた席はなく、全席自由。といっても改装されてからスクリーン下が見えにくくなってしまい、高いお金を払って指定席でも同じ見え方となると……。しかも今回久しぶりに行ったら4カ所あるトイレのうち3カ所が女性用に、男性用は1Fの1カ所のみに。まあ女性用はいつも混むからなあ。でも……。

 スクリーンは最初からシネスコ比率で開いていて、15分前くらいから案内を上映。左右に黒みがついていた。

 最終的に、3F席は見えなかったが、820席の6割ほどが埋まった。男女比は半々で、中高年が全体の2/3という感じ。

 早くも「ハリー・ポッター 炎のゴブレット」の予告が始まった。トート・バッグ付きの劇場限定前売り券の発売も始まったとか。公開は11月26日だというのに……って、買っちゃいましたけど。


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