2005年5月29日(日)「オペレッタ狸御殿」

2004・ジェネオン エンタテインメント/電通/日本ヘラルド映画/松竹/衛星劇場/小椋事務所・1時間51分

日本語字幕:手書き書体下/ビスタ・サイズ(マスク、1.66)/ドルビーデジタル



http://www.tanuki-goten.com/
(全国の劇場案内もあり。音に注意)

昔、がらさ城という城に安土桃山(平幹二朗)と名乗る美貌の殿様が住んでいた。ある時、予言者のびるぜん婆(由紀さおり)から「他に美しい者がいる」と息子の雨千代(オダギリジョー)の名を告げられ、殿様は息子を生きては帰れないという物の怪が住む快羅須山へ追放することにする。ところが、たまたたま唐の国から来ていた狸姫(チヤン・ツィイー)と出会い、二人はたちまち恋に落ちてしまう。

70点

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 何といっても、これだけめちゃくちゃ、好き放題、やり放題をして作った映画が、つまらなくないということに驚かされる。かといって、面白いかというとそうでもないのだが。これが鈴木清順という監督ということなのか。実は鈴木清順作品を見たことがなく、なんともわからない。

 一体、どんな人に向けて作った映画なのか。いや、むしろ観客なんて最初から想定していなかったのかもしれない。商業映画ではあり得ないと思うが、作りたい映画を作りたいように撮っただけなのかも。

 合成などはデジタルを使っていながら、おそらくわざと稚拙な感じだし、どう考えてもお話は子供向けのおとぎ話。セットも明らかに作り物と分かる学芸会レベル。なのに衣装は豪華絢爛でお金がかかっており、演じている人達も真剣に演じている。力を抜いている感じはしない。抜いていたら間違いなくつまらない作品になっていただろう。不思議な作品。

 まったくリアルに作ろうとはしていない。思いっきり作り物だ。ただ、よく分からないのは、どこがロケでどこが(舞台の書き割りのような)セットというルールを作っているのか。普通、考えられるのは狸の世界に関しては物の怪なので作り物、人間の世界はリアルなのでロケというもの。しかし人間の住むがらさ城も明らかな作り物で、外のシーンのみがリアルになっているようでもあるし……。

 なにより気になったのは画質の悪さ。合成のためなのかもしれないが、フィルム撮影してここまで画質が低下するのは異常だ。まさか合成シーンだけビデオ撮影したとか……しかし最近のビデオは「スター・ウォーズ」新三部作や「突入せよ! 浅間山荘事件」でも使われ、画質の良いことを証明していたはず。なぜ? ロング・ショットだと、比較的大きなスクリーンで見たにも関わらず、顔さえよくわからないくらい。これは問題ではないだろうか。

 曲は良い。耳障りも良く、楽しく、覚えやすい。無理に付けたような違和感がない。ラップまであるのは意外だったが、それほど違和感はなかった。役者さん達はみんな歌がうまく(別録り、くちパクは明らかだが)それだけでも聞く価値はあるかも。

 タイトルというか文字が良い。いかにも昔の映画風の手書き毛筆文字。しかもメイン・タイトルは真っ赤だ。なんだかワクワク感が湧き上がってくる。キャスト、スタッフの名前もすべて毛筆。時代劇の雰囲気充分。ラストには毛筆で「終」と出た。これを見るのも何十年ぶりという感じ。

 銀座の劇場は初日舞台あいさつがあるというのでパスして、公開2日目の初回、50分前に着いたら誰もいなかった。35分くらい前に開場した時で、ようやく20人くらいに。ある程度予想はしていたが、ほとんどは老人。男女は半々くらいだったが。時代劇はなあ……。

 初回のみ全席自由で、2F席もOK。あの予告で見たいと思う人がどれだけいたんだろうか。この内容は、一般受けは難しいと思う。

 15分前ころから案内が上映され、最終的に2F席は2〜3割程度の入り。男女比は6対4くらいで男性の方がやや多かったものの、2日目でこの程度の入りはかなり厳しいのではないだろうか。

 ジェット・リーとモーガン・フリーマンが共演するリュック・ベッソン脚本作品「ダニー・ザ・ドッグ」は、またかという気もするが、予告では面白そう。


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