2005年6月11日(土)「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」

SAHARA・2005・米/西・2時間04分

日本語字幕:手書き風書体下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、with Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

http://www.sahara-movie.jp/
(全国劇場案内もあり)

アフリカ、ナイジェリアで発生した奇病の調査のためWHO(世界保険機関)の医師エヴァ(ペネロペ・クルス)は、感染源が隣国のマリにあることを知り早速向かうことにするが、何者かに襲われてしまう。危ないところを間一髪で救ったのは、たまたま近くにいたNUMA(国立海中海洋機関)の職員で、元海軍特殊部隊のダーク・ピット(マシュー・マコノヒー)だった。ダーク・ピットは、南北戦争当時に作られた金貨が発見されたマリへ調査に行くことになっており、エヴァは無理やり同行するが、再び追っ手が襲いかかってくる。

74点

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 これぞアドベンチャー。大活劇と呼ぶにふさわしい作品。良くできているし、面白い。単純に楽しい。痛快。笑えるし、ハラハラドキドキするし、カッコいいし、現代の社会問題も取り込んでいるし、憎たらしい悪役もいて、雄大な自然の美しさと、財宝、戦い、恋もあって、もう大盤振る舞い。公式サイトでも言っているように、「007シリーズ」と「インディ・ジョーンズ・シリーズ」を足して2で割ったような感じ。あまり悩まないのも良い。見終わって、スッキリ爽快。こんな映画は最近ない。

 原作はクライブ・カッスラーのベスト・セラー冒険小説「ダーク・ビット・シリーズ」。全世界で1億2,000万部も売れているんだとか。映画はアメリカではヒットしたもののIMDbでの評価は5.9と並。アメリカ人好みだと思うんだけど。

 まずのっけにアバン・タイトルで度肝を抜かれた。主演級の役者は誰も出ていないのでセカンド・ユニットが撮影したような気もするが、コンテは監督自身が切っているのかもしれない。とにかく、南北戦争の描写が良いのだ。リアルで迫力がある。飛び交う砲弾は、ラストに効いてくるのだが、導火線があって空中で爆発したり、着弾と同時に爆発したり、船内に入ってから爆発したりさまざま。実際に当時の砲弾はあちこちで気まぐれに爆発したらしい。その迫力とリアルさ。しかも夜のシーンなので爆破が引き立つ。みごとだ。

 それがダーク・ピットの誰もいない部屋の中の写真や新聞の切り抜き記事などを見せる鮮やかな手際のタイトルをへて、一転現代の明るい昼間の西アフリカにトーンと入って行く。いかにも映画らしい手法。うまい。

 ただ、字幕や公式サイトではナイジェリアといっているものの、マリと国境を接しているのはニジェールなんだけどなあ。それでニジェール川をさかのぼってマリへ入るわけで。確かにニジェール川はナイジェリアも流れているから、さかのぼって行けないことはないわけだけど、どうなっているんだろ。よくわからない。撮影は実際にサハラ砂漠の北西に位置するモロッコで行われているというが。

 面白いのは主人公のダーク・ピットと相棒のアル・ジョルディーノの弥次喜多コンビ。漫才のような掛け合いが笑わせてくれる。水を得た魚のように嬉々としてダーク・ピットを演じているのはマシュー・マコノヒー。「10日間で男を上手にフル方法」(How To Lose a Guy in 10 Days・2003・米)のようなラブ・コメディから「評決の時」(A Time to Kill・1996・米)のようなシリアスな役、そして「サラマンダー」(Reign of Fire・2002・英/アイルランド/米)のようなエキセントリックな役までこなす芸達者。ホントに気持ちよさそうで良い。一方アル・ジョルディーノを演じているのはスティーブ・ザーン。いろんな映画で脇役を演じている人で、アニメなどの声の出演も多い。大きな役は「ロード・キラー」(Joy Ride・2001・米)のバカな兄の役。こんなコミカルな役ができるとは意外だった。公式サイトによると2人は特殊部隊の訓練コースでアクションをこなすためのトレーニングを受けたという。どうりで銃の扱いなどはサマになっていたわけだ。

 ヒロインのペネロペ・クルスも体当たり演技を披露。結構危ない役でも自分でやっていたようだ。砂に顔を突っ込んだりしている。前作「トリコロールに燃えて」(Head in the Clouds・2004・米)の娼婦役などをみてもいい女優さんという気がする。

 ダーク・ピットとアル・ジョルディーノのボス、サンデッカー提督を演じるのは、「ファーゴ」(Fargo・1996・米)で強烈な印象を残したウィリアム・H・メイシー。これまたコミカルな役でいい味を出している。つい最近は「Uボート最後の決断」(In Enemy Hands・2004・米)でアメリカ潜水艦の艦長をやっていた。特に、電話している最中に自分の船が木っ端みじんに吹き飛ぶところは笑える。

 敵役はフランス生まれのランベール・ウィルソン。「マトリックス リローデッド」(The Matrix Reloaded・2003・米)と「マトリックス レボリューションズ」(The Matrix Revolutions・2003・米)でキー・メーカーへのアクセスを握るメロヴィンジアンを演じていた人。冷酷な感じがしてグッド。「キャットウーマン」(Catwoman・2004・米)でも似たような悪役をやっていたが。

 監督は、長年ディズニーの会長を務めてきてつい最近その役職を去ったマイケル・アイズナーの息子のブリック・アイズナー。いわゆるサラブレッドなのだが、これまではTVで監督を務めていた人。それがスティーブン・スピルバーグに認められて、あのUFO年代記TVシリーズ「テイクン」(Taken・2002・米)の第2話を担当。それが認められて、さらに日本劇場未公開の劇場作品「クライム・エンジェル」(Thoughtcrimes・2003・加)を監督。それがまた認められて本作への抜擢となったらしい。バリバリのお坊ちゃまだが、今後注目かも知れない。

 銃はマリの軍隊がAK47やRPDを使っており、ボートで襲ってくる敵はどうやらFN MAGを搭載していたようだ。ほかにもAK47SやSVDドラグノフなどもチラリと登場。凶悪な将軍はホーランド&ホーランドの45.5口径というトップブレイクのリボルバーを使っている。もう弾がなくて1発27ポンド(1ポンド200円だと5,400円!)もすると良いながらそれを向けてくるニクイ演出。

 一旦捕まってから脱出したアルが使うのは、木製ストックを付けた珍しいFN FAL。

 ほかにM60マシンガンやH&KのUSPコンパクトも出ていた。ラストではロケット・ランチャーRPG-7も登場。

 公開初日の初回、新宿の劇場は50分前に着いたら誰もいなかった。しかしちょうど並ぶところにホームレスが寝ていたらしく、物凄い悪臭がこびりついていて息が出来ないくらい。45分前にオヤジ2人に若いカップル1組の4人。

 とにかく臭くてはきそう。でもなかなかドアを開けてくれない。どうせ地下でもう一度並ばせるのだから早く開けてくれればいいのに。どうもこの系列の劇場は……。

 30分前にようやく上のドアが開いた。この時点ですでに列は50〜60人に。2/3はオヤジで、1/3が20代くらい。女性は全体の2割程度。下で並んで、25分前にやっと開場。案内はなかったが、初回のみ12席×3列と12席×1列のぴあ席も自由。しかしこの劇場では指定席でも前席の人の頭が邪魔になり、スクリーン下の字幕は読みにくい。音のバランスは良いだろうけど。

 監視するように立っている怪しげな一団がまた。劇場の最後列にもズラリ。どうしてこんなに団体でやってくるのか。お金を払って見にきているのに、どうにも不愉快。2〜3人で充分なはず。しかももっと目立たないようにできるはずなのに……。

 最終的に763席に7割ほどの入りはまあまあだろう。4/5が中高年で、男女比は6対4でやや男の方が多い感じ。下は小学生くらいから。


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