日本語字幕:手書き書体下、石田泰子/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS
IMAX版、日本語吹替版もあり(米PG-13指定)
ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)は悪人のことを知るため、チベットで犯罪に加担して刑務所に収監される。やがて出所の日、謎の男デュカード(リーアム・ニーソン)が現れ、山腹で青い花を摘み頂上へ持ってくれば答が得られるという。花を持って行ったウェインを待っていたのはラーズ・アル・グール(渡辺謙)という僧で、恐怖を克服するにはおまえ自身が恐怖になるのだと教えられる。そしてその日から特訓が始まる。そして正義を実行するため「影の軍団」に入れと言う。ウェインはそれを断り、アメリカへ帰る決心をする。 |
いかにしてお金持ちのお坊ちゃまが超人的なパワーを得てバットマンとなったかを、説得力のあるエピソードの積み重ねで丁寧に描くアクション快作。シリーズの雰囲気を継承し、まっすぐなヒーロー象を描くことに成功している。アクションも特殊効果もきっちりと入れて、良い意味で「スパイダーマン」(Spider-man・2002・米)的仕上がりとなっている。 手法としては第1作のティム・バートン版「パットマン」(Batman・1989・米)とあまり変らない。ただ、妙なひねくれた感じのダークさがないぶん、スッキリと楽しめる作品にはなっている。毒が希薄になった分、印象も少し希少になったかもしれない。どっちがいいかというと、それは何とも言えない……。 テンポも良く、武器やビークル、小道具等にも凝り、悪役は憎たらしく、正義の味方はあくまでカッコいいし、出演人がこれでもかというくらい豪華。これが映画だろう。お金を払った価値があるというものだ。 主人公には「サラマンダー」(Reigh of Fire・2002・米)でがんばるヒーロー役を好演したクリスチャン・ベール。スビルバーグの第2次世界大戦もの「太陽の帝国」(Empireof the Sun・1987・米)で零戦が好きなアメリカの少年を演じていた人。その後しばらくヒットに恵まれず、ようやく異常な殺人者を演じた「アメリカン・サイコ」(American Psycho・2000。米)で復活、日本公開順は入れ違ったが、ニコラス・ケイジがイタリア兵を演じた「コレリ大尉のマンドリン」(Captain Corelli's Mandolin・2001・米)、「サラマンダー」、過激なアクション「リベリオン」(Equilibrium・2002・米)、たぶん限界まで激痩せして望んだ「マシニスト」(The Machinist・2004・西/米)と話題作が続いて「バットマン ビギンズ」に至ったと。 そのブルース・ウェインの家の執事を演じるのが、名優マイケル・ケイン。この人が出るだけで画面に重みが加わるというか、映画の価値が上がる感じ。「ウォルター少年と、夏の日」(Secondhand Lions・2003・米)のおじいちゃん役なんか絶妙。「サイダー・ハウス・ルール」(the Cider House Rules・1999・米)には多くの人が泣かされたことと思う。ちょっと前だと「MR.デスティニー」(Mr. Destiny・1990・米)の謎の男とか、恐ろしかった「アイランド」(The Island・1980・米)、カルトな人気を誇る「鷲は舞いおりた」(The Eagle Has Landed・1976・英/米)、ローレンス・オリビエと共演した「探偵〈スルース〉」(Sleuth・1972・米)とか、いちいち挙げていたらキリがないほど。とにかくいい執事を、イギリス人らしくちょっとコミカルにきまじめに、そして皮肉っぽく演じてすばらしい。 ブルース・ウェインを鍛える師はリーアム・ニーソン。「スター・ウォーズ エピソード1」(Star Wars Epsode I・1999・米)のクワイ=ガン・ジンのような役どころだが、悪役はとても珍しいのではないだろうか。 TV広告で言っていたのとは全く違って、渡辺謙はほんのチョイ役で出番もごくわずか。出てきてすぐやられてしまう。目つきがイってしまっている感じは怖いが、まったく存在感ナシ。しかも何語だかわからない言葉を話し日本語じゃないのだから、誰でも良かったような役。ただ使いたかったというか、話題作りというか、そんな印象だ。 バットマンが使う武器やビークルを開発するのが、ウェインがオーナーの会社の応用科学部門(といっても1人しかいないような窓際部門しいう設定)のチーフ(?)、モーガン・フリーマン。悪役をやっても何だかいいお父さんという感じの人で、ホント存在感があるというか演技のうまい役者さん。この人が出ていてつまらない映画はほんのわずかしかない。「ディープ・インパクト」とか「トータル・フィアーズ」とか「ドリーム・キャッチャー」とか……。結構あるな……他の作品が良くてかすんでいるのか……。 腐敗しきった警察の中で唯一まじめで、バットマンて手を組むことになる刑事に、キレ演技がすばらしいゲイリー・オールドマン。どちらかといえば悪役の多い人なのだが、「ハリー・ポッター」あたりからその裏をかくような配役もされるようになってきたらしく、本作でも汚職刑事と思わせて実は良い人。ただ、ゲイリー・オールドマンを使いながらこの役ではほとんど存在感ナシ。渡辺謙と一緒。 ウェインの会社の社長を演じているのは「ナイトホークス」(Nighthawks・1981・米)や「ブレード・ランナー」(Blade Runner・1982・米/香)の名悪役ルトガー・ハウアー。わざわざこのアクの強い人を使って普通の人を演じさせるというよくわからん配役。確かに裏で何かをたくらんでいそうな感じは出るが、結局そうではなく普通の人なんだからキャラクターを活かしきっていない感じ。ルトガー・ハウアーがやる必要はあったのだろうか。 ヒロインはつまらなかった「ケイティ」のケイティ・ホームズ。トム・クルーズが夢中だとかで話題になっているが、そんなに素敵な人なのかスクリーンからはまったくわからない。むしろ地味で「スパイダーマン」(Spider-man・2002・米)のキルステン・ダンストのようにはいかない。どうなんだろ。 バットモービルは今回から原作漫画にちなんだ流線型のものを止め、ゴツゴツした軍用っぽいものになっている。一言でいえば……シド・ミードがデザインしたという「エイリアン2」(Aliens・1986・米)の宇宙海兵隊の装甲車にそっくり。よく見れば違うのだが、印象が似ているのだ。コンセプトは監督から出されたらしいが、ハンビーとランボルギーニを合わせたものらしい。しかし公式サイトのプロダクション・ノートにもあるように装甲車がそのイメージって、やっぱりそうじゃん。 監督は健忘症の男の時間逆転ドラマ「メメント」(Memento・2000・米)の監督・脚本を担当したクリストファー・ノーラン。その後ノルウェイの映画をほとんどそのままハリウッドでリメイクした「インソムニア」(Insomnia・2002・米)という後味の悪い映画を撮っている。本作でも脚本も担当し、手堅い演出はさすがだと思うが、「メメント」のような斬新さというか挑戦的な感じは希薄になってしまっている感じがした。プロデューサーがそれを許さなかったのかもしれないが。 公開初日の初回、銀座の劇場は70分前に着いたらすでに40人くらいの行列。20代から30代くらいが全体の1/3くらい。あとは中高年。以外と高年齢者も多い。女性は全体の1/5くらい。 60分前に開場となり、場内へ。この時点で80人くらい。初回のみは全席自由で、レディース・シート以外2F席も、2F後方の11席×1列のぴあ席も自由。すでにスクリーンはビスタ・サイズであいていた。 早く空いたので、節約しようと思っていのに、ついコーヒーを買ってしまった。20分前から劇場案内が上映され、10分前には2F=8割、1F=5割の入り。上映時間が2時間20分もあるので、直前にトイレへ。最終的には2Fは9割の入り。さすが話題作。それとも渡辺謙が出ているからか。 音が素晴らしい。サラウンド感や移動のリアルさ、クリアさは驚くほど。ぜひともデジタル対応館で観賞したい。ただ、コピー防止のドットが画面に出るのは気になった。日本にも画面を撮影しちゃうヤツとかいるんだろうか。情けない話だ。 |