2005年6月8日(水)「-less[レス]」

DEAD END・2003・仏/米・1時間25分

日本語字幕:細丸ゴシック体下、小寺陽子/ビスタ・サイズ(Ariflex、1.66上映[IMDbでは1.85])/ドルビーデジタル

レイトショー公開(米R指定)

http://www.klockworx.com/less/
(入ったら音に注意)

クリスマス・イブの夜、実家でクリスマスを祝うためハリントン一家は車を飛ばしていた。いつもは高速道路を使うのに、今回に限って眠くならないようにと運転する一家の主、フランク(レイ・ワイズ)は高速を降り裏道に入ることにした。しかし、まもなく全員が寝てしまい、やがていつしかフランクもウトウトと意識を失いかけたその時、対向車がやってきて危うく衝突寸前、急ブレーキで止まり事無きを得る。今度は眠らないようにと、全員で歌など歌いながら車を進めると、再び車は急ブレーキで止まる。フランクが白い服の女性を見たというのだ。

73点

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 怖い。音でおどかす傾向は少しはあるものの、必然の音でありちょっと強調されているだけでわざとらしい感じはしなかった。ということは、腕で勝負。なかなかうまい。ラストも説明しすぎず、材料をそろえておいて、あとは自分で考えてみてねという感じ。ゲタを預ける感じではなく、なげやりでもない。それもいい。

 一体この不思議な話は何? この行き詰まり感、まさにデッド・エンド状態。口裂け女的な都市伝説をうまく取り込んで、みごとな現代の怪談を作り上げている。ただ悪魔(死神)っぽい存在を匂わせるのはやはりキリスト教圏の作品ということになるのだろうか。ちゃんと自分なりに納得のいく結末もグッド。

 しかし、いかんせん予算がないという感じ。多分予算のほとんどは「ツイン・ピークス」の狂気の父親を演じたレイ・ワイズの出演料と、「ドリームチャッチャー」(Dreamcatcher・2003・米)そっくりのどこまでもつづく原生林のような森の中の1本道の超俯瞰ショットのデジタル処理(どっちがパクったのかというほど似ている)に費やされてしまったのではないだろうか。

 たぶんドライブを良くする人や、スキーやテニス、温泉めぐり、海水浴などで車で遠出する人には経験があるのではないだろうか。高速を降りて一般道を夜とかに走ったこと。山奥の田舎道は確かに夜になるとほとんど車が走っていない。人家はまばらで、夜も更ければ灯さえ点いていないこともよくある。ここに「怖い話」というのが生まれるわけで、人里離れた峠の道を夜中に走っていたらおばあさんが歩いていたとか、白い服を着た女がいたとか……その恐怖がそのまま映画になっている。

 中で語られる怪談の1つが、そんな見知らぬ乗客話。わりと良く聞く話で日本特有のものだと思っていたら、アメリカ(フランス?)とかにもあるんだなあと。これにもビックリ。

 メインの登場人物は1台の車に乗った家族4人とまもなく家族に加わるだろう若い男性1人。彼らがショックと恐怖でおかしくなっていくさまが恐ろしい。特に完全にいってしまって陽気になる母親が怖い。実弾が装填されたショットガンをもてあそぶシーンは鳥肌がつほど怖い。正気でないものが銃を持つのは銃そのものよりはるかに怖いというのがよくわかる。演じているのはリン・シェイという人。珍しくレイ・リオッタがいい人を演じた感動作「コリーナ、コリーナ」(Corrina, Corrina・1994・米)やユマ・サーマンが親指の長い女を演じた「カウガール・ブルース」(Even Cowgirls Get The Blues・19/93・米)などにちょい役で出演していたらしいがほとんど記憶に残っていない。「メリーに首ったけ」(There's Somthing About Mary・1998・米)にも出ていたらしいが……。本作で注目を集めるのではないだろうか。素晴らしい演技。

 謎の黒い車として登場する、霊柩車のようなクラシック・カーは本当に不気味でグッド。車種はわからないがものすごく怖い。

 監督は、これが初監督作品というフランス人監督ジャン=バティスト・アンドレアとファブリス・カネパの2人。フランスで企画していたものの埒が明かないということで、6カ月かけて英語でこの映画の脚本を作ってハリウッドに渡り製作会社を次々と尋ねて回ったらしい。まるで「ソウ」(Saw・2004・米)のような話。でもアメリカならこういうことがあるんだ。実績のない外国人が映画を作ることができるというアメリカン・ドリームが。

 2人はデビッド・リンチ監督の大ファンだそうで、ぜひとも「ツイン・ピークス」のレイ・ワイズに出て欲しかったという。それで、脚本を彼に送り読んでもらって、会いに行くことになったらしい。車で「マルホランド・ドライブ」を走っていったら交通事故に遭ったのだとか。それがクランク・イン2日前。大事故でなくて良かったこと。次の企画も進行中というから、楽しみだ。

 はたして標識に記された地図にもない町、マーコットとは。これは見てのお楽しみ。結構ショック。

 ただ日本のタイトルは何なんだろう。〜がないとかいう意味の接尾辞? 思わせぶりな感じは良いけれど、まったく意味不明。原題のままでいいんじゃないのかなあ。
 公開5日目のレイトショーは、サッカーの日本対北朝鮮、ワールドカップ出場が決まるかどうかの大切な試合のある日。空いていることを期待して、サッカーはビデオをセットして出かけ。20分前に着いたら案の定ロビーにはたった3人。まだ通常上映が終わっていなかった。

 10分前ようやく開場。この時点では10人ぽっきり。女性1人、オヤジ2人、あとは20代〜30代の男性。最終的には指定席なし227席に15〜16人。さすがサッカーの日は少ない。ここは床がフラットなので人が多いと前席の人の頭が邪魔になってスクリーンが見にくいのだ。

 カップルは少なく、ほとんどが1人で来た感じの人ばかり。

 予告でブレア・ウィッチ・プロジェクト第2弾とかいって「オープン・ウォーター」をやっていたが、ということはまた何も起きない低予算ホラーか。うーん。そういえば「3」をオリジナルの監督で作るといっていた「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」はどうなったんだろう。「1」があまりに酷く、たぶんメジャーで作った別監督の「2」は誰も見に行かなかったのではないか。それで「3」の企画は消滅したと。だって、もともとはウェブだけで成立していた話(企画)だもんなあ。映画にしちゃうのは……。


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