2005年7月2日(土)「宇宙戦争」

WAR OF THE WORLDS・2005・米・1時間57分(IMDbでは116分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ(1.85、1.66上映?)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)
日本語吹替版もあり

http://www.uchu-sensou.jp/
(前売り券情報はあり。入ったら音に注意)

レイ・フェアリー(トム・クルーズ)は港のクレーン・オペレーターで、離婚してまだあまり経っておらず、息子のロビー(ジャスティン・チャットウィン)と娘のレイチェルを引き取って暮らしていた。しかしあまり家庭を顧みないレイに、2人の子供たちは再婚した母親のメアリー(ミランダ・オットー)になつき、よく遊びに行っていた。そんなある日、世界的にあちこちで磁気嵐が起こり、多数の落雷が発生する。そして、何度も落雷した地下から巨大なロボットのようなものが現れ、次々と人に襲いかかってきた。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 圧倒的なまでの、力みなぎるビジュアル。本当に映像力学とでも呼べそうな絵の迫力。リアルで立体感あふれるサウンド。本当に全身が振動するほどの迫力。ただ、どうにも感情というかパッションのようなものが、それらの力強さに対して負けている感じがした。

 ストーリー展開はH.G.ウェルズの名作が原作なので、たぶん多くの人が知っている。オチもわかる。人類絶滅寸前になってあることが起こるのだ。それはSFの傑作、マイケル・クライトン原作の「アンドロメダ」(The Andromeda Strain・1971・米)と同じ。というか、「アンドロメダ」が真似したのだろうけれど。

 それで、本作はメインのストーリーは、フェアリー一家がどうやって異星人の侵略というか人類の駆除から逃れるかである。これは良くできている。車で逃げて、車を奪われ、船で逃げようとするがそれも失敗、捕まるがからくも脱そう。民家の地下に隠れてやり過ごそうとするが……。よくできている。次から次へと困難が襲いかかってくる。

 というのも、結末が大どんでん返しになっている(中高年の多くの人が結末は知っているだろう)ので、とどんどん主人公を、人類を追いつめることが出来るからだ。ただ、どうにも規模が小さい。これでは地域限定戦争のようで、とても世界戦争とは思えない。せめて「アルマゲドン」(Armageddon・1998・米)くらいの世界規模の破壊を描いて欲しかった。オチはわかっているんだから、人類絶滅寸前くらいまで行っても良かったのだ。そこまでの破壊があれば、それだけで見せ物になるし、またサバイバルのドラマも感動的になったかもしれない。予算がなかったのか。

 一方サブ・ストーリーは家族。その絆は最初は切れている。父と、息子と娘の間には大きな溝がある。仲が悪いわけではないがうまく行っていない。むしろ別れた妻の方の子供たちの心は行ってしまっている。しかも、妻の再婚相手の名前さえ子供たちから出る始末。レイは子供たちとどう付き合って良いかわからず、子供部屋を相部屋にしたり、無理矢理キャッチ・ボールに付き合わせたり、逆効果なことをしてしまう。

 問題はこの父と子供たちの関係が、ほとんど改善していないこと。本来ならばこの事件によって、父親のレイは成長しなければならないのだが、それが感じられない。一生懸命子供を守ろうとはするのだが、そこにあまり愛情が感じられない。ただ義務として守っているような、意地で守っているような印象を持ってしまうのだ。

 しかしこれも1家族限定の話で、いかにも小さい。コップの中の嵐ではないが、家の中の嵐で、よその家にはあまり関係ない。こういうこじんまりとした話に仕上げ根のが最近のアメリカの傾向なのか。普通だったら群像劇の中の1つのエピソードといった印象。

 ラスト、安全な場所のシンボルとしての母方の実家にたどり着いた時、子供は父の元を走り去って母の胸に飛び込んで行く。呆然と立ちつくすレイの姿。母の後ろには新しい男が立っているのだ。途中ではぐれた長男が先に着いているというのも象徴的で、その後レイと抱きあうが実のところ愛情のようなものは通っていない感じがした。夜のシーンで寒色系で描いているのもそのクールさを表しているのだろう。本当はここでレイが家族愛に目覚めて、命を懸けて真剣な愛を見せてくれないと。

 長男を演じているのはジャスティン・チャトウィン。最近、人の人生を乗っ取るアンジェリーナ・ジョリーのスリラー「テイキング・ライブス」(Taking Livrs・2004・米/加)にでていたし、あの話題になったTV番組、スピルバーグ・プレゼンツの壮大なUFOクロニクル「テイクン」(Taken・2002・米)に、超能力を持って悩む少年役で出ていた。

 その「テイクン」といえば、主人公ともいえる鍵を握る登場人物を演じていたのがダコタ・ファニング。ナレーションも彼女だったのではないか。

 スケールの大きな話でありながら、この映画の主要人物は父と息子と娘の3人だけ。トム・クルーズは「マイノリティ・リポート」(Minority Report・2002・米)でスピルバーグで一緒に仕事をしている。ジャスティン・チャトウィンとダコタ・ファニングもスピルバーグが製作総指揮を務めた「テイクン」で出ている。というわけでみんなつながるのだ。

 原作はH.G.ウェルズの「宇宙戦争」(1898)で、これを1938年にオーソン・ウェルズがラジオ番組で「火星人襲来」としてラジオ・ドラマ化。本物と勘違いした人達の間でパニックが起きたことは有名だ。その後、コマ撮りアニメの“パペットゥーンズ”で知られるジョージ・パルがプロデュースして「宇宙戦争」(The War of the Worlds・1953・米)を映画化。つまり2回目の映画化ということになる。映画少年だった監督のスティープン・スピルバーグは当時7歳。おそらくこれを見ていたんではないだろうか。

 公開4日目の初回、銀座の劇場は80分前で8人。オバサン2人、高校生くらいの男の子2人、中高年の男性4人。60分前に25人くらいになったものの、あれ、この程度。やっぱり初日が水曜日というのが効いていたのだろうか。ちょっと拍子抜けしたけど、正直、嬉しい。

 それもあってか、早く開場することで知られるこの劇場も開く気配がない。大学生くらいが1/3、中高年が2/3、女性が4〜5人。55分前になって、やっと係員が出てきて看板どおりの開場時間を告げた。

 45分前に35人くらいになり、25分前にやっと開場。遅いよ。たぶん50人以上になっていたはず。時間が無いのでコーヒーはやめ。節約、節約。初回のみ全席自由で、17席×3列のカバーの席も自由。

 最終的に654席に4割ほどの入り。水曜初日は良いような気がする。

 カーテンが左右に開いたら、いきなりビデオ・メッセージが。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン監督が現れ、「キング・コング」の予告をお見せしますと。上映されたのはインターネットで公開されたものと同じようだったが、やはり大きなスクリーンで見ると迫力が違う。音も良いし。そしてヒロイン役のナオミ・ワッツはやっばりきれい。時代設定が現代ではなく、オリジナルの1930年ころになっているらしいのが良い。恐竜はほとんど「ジュラシック・パーク」。これとリアルな心優しき巨大ゴリラが戦う。見たい。



1つ前へ一覧へ次へ