2005年7月3日(日)「マイ・ファーザー」

MY FATHER, RUA ALGUEM 5555・2003・伊/ブラジル/ハンガリー・1時間52分(IMDbでイタリア版は100分)

日本語字幕:手書き書体右、(株)フェルヴァント/ビスタ・サイズ(公式サイトでは1.85)/ドルビーデジタル



http://blog.melma.com/00137621/
(全国劇場案内もあり。入ったら音に注意)

1985年、プラジルのマナウスで、WWII時アウシュヴィッツ収容所で数々の人体実験を行い“死の天使”と恐れられたナチスの医師ヨセフ・メンゲレ(チャールトン・ヘストン)のものとされる遺骨が見つかった。彼は終戦のどさくさに紛れ国外へ脱出、ずっと戦犯の追及を逃れて隠遁生活を続けてきたのだった。それを息子のヘルマン(トーマス・クレッチマン)が6年前に発見、今になってやっと発表したのだった。彼は大変な批判を浴び、メンゲレの死を信じない人々から真実を話せと迫られる。困ったヘルマンは弁護士のポール・ミンスキー(F・マーレー・エイブラハム)に連絡を取り、知っていることを全て話すと約束するが……

72点

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 やはり予想通り、重苦しく辛い映画。単なるお涙頂戴とかというのとは違うが、暗くなっちゃうなあ。このテーマで明るく楽しい映画が作れるわけはないが。

 もっとも辛いのは、ヨセフ・メンゲレの子供に生まれたというだけで、人々から「人と殺しの息子も人殺しだ」とののしられること。学校でもいじめられ、教師からは無視される。一体、息子だというだけで、彼はどうしなければならないのか。この状態で彼は老人となってしまっていた父と初めて対面するのだ。

 原作があって、著者はペーター・シュナイダーという人。公式サイトによれば、話は1979年にヨセフ・メンゲレのものとされる白骨が発見されたことに基づいており、息子も確認したものの、1992年にDNA鑑定で本人と確認されるまで、さまざまな憶測が流れたと。それをベースに監督で脚本も手がけたイタリア人のエジディオ・エローニコという人が、長期にわたって調査して準備作業を重ね映画にしたのだという。

 物語のメインは、戦争犯罪者の息子に生まれた男の葛藤。父を父として愛せず、かといって逃亡犯として自首しろとも、警察に通報することもできない。そこに集中している。ただ、もう少し、ヨセフ・メンゲレがどこにいるかわからず追いつめて行く感じや、彼が戦争中に行った残虐な行いを(結構描かれてはいるが)もっと描いても良かったような気がした。でないから、映画は最初から最後まで閉塞感でいっぱいなのだ。だからむかしNHKで逃亡したナチス戦犯を逮捕した話をやっていたと思うが、あれのほうが話として面白かった。

 マイケル・ムーアの「ボーリング・フォー・コロンバイン」(Bowling for Columbine・2002・米)で突撃取材を受けかたくなに拒絶していたしていたチャールトン・ヘストンの姿が、本作での頑固までに自説に固執するヨセフ・メンゲレの姿とダブルった。しかし、素晴らしい演技だと思うし、物凄く歳をとってしまったなあとも思う。1924年生まれだから81歳なわけで、過酷な映画の撮影に参加できることだけでも驚きだ。公式サイトによれば、「ボーリング……」のあとアルツハイマー症であることを公表しており、本作にも病をおして出演したという。役者魂だなあと。しかも実際に暑いブラジルで撮影されているのだ。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は45分前に着いたら男性4人に女性4人の8人。たぶん全員40代以上。30分前になって30人くらいになったところで案内があり、2列に。開場は25分前。

 初日プレゼントがあって、銀河高原ピールのプレンドして飲むBLACKとWHITEのミニ缶2本セット。得した。スクリーンはたぶん1.85ですでに開いていた。

 最終的に177席に6割ほどの入り。白髪が目立っていたが、下はハイティーンくらいの女の子からいた。意外に老カップルもいる。夫婦50割引か。なんでも今度は高校生友情プラスというサービスを始めるそうで、3人集まれば1人1,000円になるらしい。なかなかいいアイディア。これで若い観客が増えるか……。

 予告は「頭文字D」が面白そう。「山猫は眠らない3」はアメリカではビデオ公開。日本は劇場公開か……。韓国SFの「ナチュラル・シティ」はどうみても「ブレード・ランナー」って感じだけど、ぜひとも見てみたい。たとえガマンの限界ぎりぎりの177席のこの劇場でも。


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