ビスタ・サイズ(1.66)/ドルビーデジタル
ある小学校の6年2組に、事情により登校できない岩本サトル(本郷秦多)にかわってロポットが転校生として現れる。異質なものを排除しようとする雰囲気がクラスにあり、なかでも工藤ジュン(多部未華子)をリーダーとする悪ガキトリオ、細野丈一(村上勇太)、平井健太(加藤諒)らに陰湿なイジメを受けることになる。しかし、ビデオゲームと実際の学校生活が非常に似ていたことから興味を持ち、サトルはイジルられながらもさらに悪ガキトリオにせまり、いつしかリーダーのジュンと仲よくなる。 |
さわやかなジュブナイル物語。引きこもりやいじめ、友情、親子の断絶、嫉妬といったものを描きながら、いたずらに深刻になるのではなく、また暗くなるのでもなく、青空のもとで明るく前向きに対していって解決に至る構成は、やや強引なところもあるものの、実爽やかで感動的。ちょっと涙が。 もともと本作の秋山監督は、石井竜也監督の「河童」(1994)や「ACRI」(1996)にVFX監督として関わったあと、多くの人がなぜフル3D-CGで作ったかわからなかったあの映画「ファイナル・ファンタジー」に参加。失敗から学んだことをベースに、経済産業省主催の「プロジェクトインキュベーション型コンテンツ制作支援事業」に本作の企画書とパイロット版を作って応募、劇場公開作品としての制作が決定したという。 HINOKIOのシーンのほとんどを3D-CGで作って合成しているそうだが、まったく合成に見えない。画面への溶け込み方がものすごく自然。そのために同じシーンを5回撮影しているそうで、そこまでやらないとこの自然さは出せないらしい。どの程度、実寸の模型を使ったのだろうか。逆にそっちが気になった。 HINOKIOの造型というかデザインも卓越していて、とても魅力的。HINOKIOがどう見えるかはこの映画で非常に重要なことで、魅力的なデザインが完成した時点でこの映画は成功したようなものだったのではなかったか。そこにとても時流を得たテーマと王道のジュブナイル冒険物語(ちょっぴり恋愛チックな味付けもして)を当てはめたと。もう作る前から成功していたような気もする。ゲームと実生活がリンクしているという設定(というか登場人物たちの思い込み)も若い観客にウケそうな 一見男の子のように見えるジュン役の多部未華子も魅力的。いじめっ子で家庭の事情からひねくれているのだが、嫌われるキャラを一線のところでうまくかわしている。そして、そのボーイッシュな感じがラストに効いてくる。また、閉じこもりとなってしまったサトルを演じた本郷秦多もうまい。本当に気の弱そうな、それでいて頑固そうな雰囲気が良く出ている。 中村雅俊のお父さん役もピタッとはまっていて、どこも、何も悪いことをしていないのに息子とコミュニケーションがとれなくなってうろたえる姿を好演。でも、こんないいお父さんだったらひねくれないような気はするが。 VFX意外にリアルなのは、子供たちがイジメに至る過程。異質なものを排除しようとして、相手の気持ちを考えず、自分の衝動で行動してしまうような感じがよく出ていたと思う。たぶん実際のイジメもこんなふうに始まって、気付かないと次第にエスカレートしていくのだろう。 ちょっと残念だったのは、特に前半、コントラストが弱く、色が浅いこと。自然光だけで撮られているのか、どうにもTVぽいというかビデオっぽいというか。後半、初めてサトルが口をきき「父さんが母さんを殺した」と言う当たりから、やっと色合いがちょっと濃くなるが、これでもちょっと足りない感じ。爽やかな感じはするのだが、狙いとは思えない。 さわやかに物語は終わるが、1つ気になる問題が残ったまま。すべてを解決する必要はないが、結構大きなことなのでボクは気になってしまった。それは、HINOKIOことH603が軍用ロボット研究のために開発された物ではないかという疑惑。開発者の父は否定するが、言葉だけで証拠が出てこない。軍隊で行進するようなカットを何カットかつないで強烈な印象を残すのに、それを否定するのは父の「違う」という言葉だけではどうにもつり合わない。はたしてどうだったのだろうか。 そして、解決のキーが「誰かがガンバらなくても良いんだと言ってくれたら」というものだったが、この1つだけというのはどうだろう。ガンバレと言われてがんばれる人もいれば、逆につぶれる人もいる。割りとよく聞くことなので、安直だったかなという気もした。 公開4日目の平日2回目、銀座の劇場は全席指定入れ替え制なので20分前くらいに着いたがまだ入場できず、混み具合は分からなかった。15分前案内があり、2FもOKだというのでボクは2Fにしたが、この時点では3人。これが、たぶん普通の平日の混み方ではないだろうか。でも、決して超大作に劣るところのない作品なのに、この入りは少なすぎるという気もする。なんでなんただろう。話題性が足りないだけとか……。 コーヒーはハッキリ言って土日よりうまい。どうやらあらかじめ入れておいたのではなく、オーダーで作っているようで、酸化していないのだ。 最終的に、2Fにはぴあ席が11席×1列あったが、当然ながら誰も座らなかった。そして、レディースシート11席×3列を含む全586席のうち2Fには9人。うち30代くらいの女性2人、老人1人、30代くらいの男性1人、あとは中高年のオヤジ。 予告は「チキン・リトル」が初めて内容のわかるものになった。ティーザー予告はまったくどんな映画化わからず、しかもつまらなそうだったのでダメかと思ったが、「ボクにだってきっと何か出来る」というダメな子のポジティブ物語らしい。ティム・バートン監督の人形アニメ「コープスブライド」と実写の「チャーリーとチョコレート工場」はどちらも面白そう。 |