日本語字幕:手書き書体下、全雪鈴/ビスタ・サイズ(1.85)/ドルビーデジタル
(韓18指定)
1979年、映画学科の学生だったキム・ジフン(キム・ジョンフン)は徴兵され、厳しい訓練のあと、南北朝鮮の国境地帯であるDMZ(非武装地帯)の捜索隊に配属されることになった。そこには訓練時代に仲の良かったケンカの強いイ・ミンギ(パク・ゴンヒョン)が兵長として着任していた。そして料理はうまいが気の小さいクォン・ヘリョン(チョン・エンピョ)上等兵と、担当地区に「ホテル・ココナッツ」と名付け、女性の裸体を書いた風見鶏と人工のヤシの木を立てていた。ほとんど何も起きないことをいいことに、蛇酒を作って米軍と物々交換などをやっていた。ところがある日、朴大統領が暗殺されたことから、混乱に乗じて北朝鮮が特殊部隊を送り込んできた。 |
戦争映画なのだが、青春グラフィティ調ティストで仕上げられ、8割まではなんだか爽やかで、笑える作品になっている。ところがラスト2割、北の特殊部隊との戦闘が始まると、一転して恐ろしい物語になる。そして、クライマックスで思い掛けないことが起こり、一気に時間を飛び越えて現在へと話は変わる。そして涙。うまいなあ。こういう構成になっていたのか。ほとんど話題になっていないが、これは見た方が良いと思う。 ある部分は話題作「JSA」(JSA: Joint Security Area・2000・韓)と似ている部分もある。朝鮮半島を南北に分断する38度線をめぐるドラマ。「JSA」も笑わせる部分がありながらも硬派だとすれば、本作はどちらかと言えば軟派。だから「キャッチ22」(Catch-22・1970・米)とか「M*A*S*H マッシュ」(MASH・1970・米)に雰囲気が似ているかも。ドラマの構成としては「友へ チング」(Chingu・2001・韓)に似ている。作者の体験に基づいた物語という点でも。いい映画の良いとこ取りみたいな。映画上映のエピソードなど「ニュー・シネマ・バラダイス」(Nuovo Cinema Paradiso・1989・伊/仏)のようだ。 つまりエピソードの作り方と積み重ね方がうまい。だから詳しく書くことはしないが、実体験に基づいているだけに武器の描き方がリアルで、たぶんデジタル処理だろう、血糊がドビュという感じで飛んでいる。耳が欠ける。そして、軍曹が主人公に教える。とっさに敵を撃つときは胸(心臓)ではなく腹を撃てという。手で胸を殴ってもなかなか大きなダメージを与えられないが、腹へのパンチは「うっ」となって動きが止まってしまうと。なるほど納得。そのリアルさが逆に怖いが。 撮影は長期間にわたったのではないだろうか。韓国軍が装備している銃が、M16A1からM16A2になったりもどったり。北朝鮮軍の銃もAKS47だったりAK74だったり。意外なほどM16ライフルは黒く写っており、別名ブラック・ライフルの呼び名にふさわしい感じだった。 原作と脚本も手がけた監督はイ・キュヒョンという人で、1957年生まれ。本作中でも言っているように出版された小説も多い。そして、日本に長期滞在しいち早く日本文化を韓国に伝えた人だという。 主役はキム・ジョンフンという人で、TBSの昼の連ドラ「ヤ・ク・ソ・ク」にでていたという。が、彼を飲んでしまったのが、ケンカの強いイ・ミンギ上等兵を演じたパク・ゴンヒョン。日本で言うと布施博のようなキャラクターだろうか。良い味を出している。今後注目したい。 ギャグ担当のクォン・ヘリョンを演じたのはチョン・エンピョという人で、「ユリョン」(Phantom the Submarine・1999・韓)にもでていた人。最新作はこれけから公開されるSF「ナチュラル・シティ」だとか。 捕虜となる北朝鮮兵士を演じた、チェ・ミンシク風のクールな二枚目はチョン・チェギョンという人。本作が初の大役らしい。俺を撃ち殺してくれと懇願する姿が涙を誘う。この人も要チェックかも。 ラスト、日本で開催されているという想定の国際射撃大会で、またまた感動のドラマが展開されるようになっていて、これは日本にいたことのあるイ・キュヒョン監督ならではなのだろう。 公開4日目の平日3回目、銀座の劇場は20分前についたらちょうど開場したところらしく、指定席なしの場内には5人が座っていた。 最終的に177席に15人くらいで、これも平日としては普通なのではないだろうか。1/3くらいが老人、オバサン3人、あとオヤジという感じ。若い人はほとんどいなかった。オバサンはブームに乗ったクチか。 予告は、ドニー・イェンがアクション監督をやっているのでアクション・シーンだけが良かったジャッキー・チェンも出ている「ツインズ・エフェクト」の続編が気になった。1よりはおもしろいかも。「ナチュラル・シティ」は音楽もヴァンゲリスで、「ブレード・ランナー」そのままという感じだが予告は面白そう。「ユリョン」の監督が手がけているというのが不安要素だが、はたして……。 |