2005年7月18日(月)「0:34 レイ.ジ.34.フン」

CREEP・2004・英/独・1時間25分(ドイツ版は88分)

日本語字幕:手書き書体下、アンゼたかし/シネスコ・サイズ(マスク、ARRI)/ドルビーデジタル

レイト・ショー公開
(英18指定、独16指定、日R-15指定)
http://www.0-34.com/
(全国劇場案内もあり。音に注意)

パーティ会場から友人を追って外へ出たケイト(フランカ・ポテンテ)は、タクシーを拾うことが出来ず、しようがなくロンドンの地下鉄、チャリング・クロス駅に降り、最終列車を待つことにした。ところがつい眠ってしまい乗り損ねてしまう。すでにあたりには誰もおらず、すべての出口はロックされ、地上へ出ることが出来なくなってしまった。携帯も通じない。しかし、そこへ来るはずのない列車がやって来る。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 怖い。これは現実をベースにした、真正面から描いたホラー。思わせぶりや、音での脅かしなどない。すべて直球勝負。この異世界ぶり。ボクははまってしまった。ただIMDbでは5.4点とありふれた評価。実際のロンドン地下鉄とはかなり違うということか。でもチャリング・クロス駅は実在する。いいのかなあ、こんな惨劇の舞台にして。

 あえて言うとすれば、「サブウェイ」(Subway・1984・仏0)と「ボディ・バンク」(Extream Measures・1996・米)に「悪魔のいけにえ」(The Texas Chainsaw Wassacre・1974 ・米)を合わせたような感じ。殺人鬼が現れるまでは「JAWS/ジョーズ」(Jaws・1975・米)のようにドキドキだが、正体があらわになってからも「悪魔のいけにえ」のように怖い。本当に異次元に迷い込んでしまったかのような感じがすごい。異世界から抜け出せないという点ではコメディの「アフター・アワーズ」(After Hours・1985・米)にも似ている。人気TVドラマの「Xファイル」でもこんなエピソードがあったと思うが……。

 これを見終わると、ロンドンの地下鉄では絶対に最終電車を逃してはいけないという気になる。っていうか、ロンドンの地下鉄には乗りたくなくなる。行ったことないけど。テロもあったばかりだし。ニューヨークの地下鉄も一時期治安が悪くて評判が悪かったが、いまではキレイになって治安も良くなったとか。かつて日本の地下鉄が一番安心して乗れると言われたものの、サリン事件以後そうでもなくなってしまったらしい。

 何よりいいのは、夢落ちとか単なるモンスター物として描いていないこと。あえて、普通の人間でありながら持って生まれたハンデによってモンスター化してしまったフリークという設定で、その悲しみも匂わせながら、正々堂々、真っ正面から描いている。一歩間違えば荒唐無稽のこっけいな話になってしまうのに、あえてそれに挑み成功している。13金のジェイソンとかエルム街のフレディように怪物を出してしまえば、あとはショッキングな惨殺シーンをたっぷり見せ、それをどう倒すか工夫すればいいところ、それをしなかった。

 では理屈っぽいかというとそんなことはなく、かなりどぎつい血まみれシーンもたくさん用意されている。そして、なぜこの殺人者がこうなってしまったかは、部屋にある写真などで匂わせる程度でほとんど説明されない。そこもいい。映像に語らせ多くを言葉で説明しない。基本でしょ。

 パーティー・ドレスのまま下水道の中に漬かり、汚物まみれになってドブネズミに襲われる悲惨な主人公を演じたのは、今回も走りまくっている「ラン・ローラ・ラン」(Lola Rennt・1998・独)のドイツ人女優、フランカ・ポテンテ。「ボーン・スプレマシー」は酷かったが、「ボーン・アイデンティティ」(The Bourne Identity・2002・米)でしっかり存在感を発揮していた注目の女優。寝過ごしてしまった意外バカなことをやらず、必死に一生懸命逃げまくる。途中はなんと裸足で走っている。これは応援してしまいたくなる。

 脚本と監督を担当したのはクリストファー・スミスという人。学生の時に作った18分の短編が高く評価され、イギリス・アカデミー賞にノミネートされたのだとか。しかも、なんと本作は劇場長編映画デビュー作なのだとか。これは驚いた。すごい才能なのではないだろうか。

 血がリアル。どす黒くていかにもそれらしい。だから怖い。リアリティがある。どうして邦画は絵の具のように赤く、不自然なのか。規制があってあまりにリアルに描いてはいけないのか。

 サラウンドもうまく使われていて、水の音や、ネズミの足音、赤ん坊の泣き声などが周囲から湧き上がってくる。これも怖い。

 ロンドンの地下には廃止になった地下鉄の駅がいくつかあるんだそうで、日本の東京の地下鉄にも使われていない駅があるとか。共通の恐怖は存在するわけだ。

 タイトルのすり切れたような感じで火花が出るようなクレジット文字のデザインはリチャード・モリソンという人。センスがいい。今後注目かも。

 公開3日目の有楽町のレイト・ショーは20分前に付いたらロビーに15人くらいの人。中高年が3人、20〜30代くらいの人がほとんど。女性は3人。

 15分前くらいに入場となり、全席自由。受付順での入場になるので、混乱はなかった。スタジアム型式の劇場なので、比較的どの席も見やすい。若干、場内は先ほどまで上映されていた通常上映の名残か、湿度も温度も高いようだった。

 最終的には若い女性が増えて、257席に30人ほどの入り。レイト・ショーはこれが普通という感じだろうか。しかし、ちょっと残酷シーンはあるものの、もっと入ってもいい映画だと思う。


1つ前へ一覧へ次へ