日本語字幕:手書き書体下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS
(米PG-13指定)
2019年、リンカーン・6・エコー(ユワン・マクレガー)は汚染から逃れて生きのびている人々と共に巨大施設で暮らしていた。そして定期的に抽選が行われ、唯一汚染を逃れたという「アイランド」へ行く事ができる者を住人の中から選んでいた。そんなある日、友人のジョーダン・2・デルタ(スカーレット・ヨハンソン)がアイランド行きに当選する。しかしリンカーンは換気口のところでガを発見し、自分たちが閉じこめられている事に気付く。そして、アイランド行きなった者が実は臓器を抜かれて殺されていた事を知る。リンカーンはジョーダンを連れ、施設からの脱出を試みる。 |
期待していなかったのが良かったのか、おもしろい。話を追っ手から逃れるというシンプルなものに絞り、最後には巨悪を倒すという娯楽作品の王道にしたことによって、まさにマイケル・ベイ監督お得意のMTV感覚の作品となりはまったということだろう。 ストーリーの構成は、ちょっとわかりにくくしているが、根幹はそれほど複雑ではないし、クローンたちもそれを知ったからといって深く悩むわけではない。TVコマーシャルでは「私たちの体が誰かのコピーなら、私の心は一体何?」みたいなことを言っていたが、そういう映画ではない。彼らはほとんど悩まず、生きのびるためにひたすら逃げるのだ。だからテンポがよく、すべてが絵になっていて、とにかくカッコいい。2019年の近未来世界も、それらしくリアリティをもってきちんと描かれている。音楽もノリノリで小気味よい。良いヤツ、悪いヤツのキャラクターもハッキリしていて、明快。つまりは何も考えず、急流下りを楽しむように流れに身を任せてしまえばいいのだ。 とにかく「ロスト・イン・トランスレーション」(Lost in Transration・2003・米/日)のスカーレット・ヨハンソンがきれい。どんなアングルから撮っても美しく、見とれるばかり。魅力炸裂だ。不必要と思えるほど長めのベッド・シーンもあるし。ただ、自分のコピー元の女性が病気で、子供が帰りを待っていても何も感じないらしい。 ユアン・マクレガーはまったく悪いところがないのに印象に残らない。すなわち、それはまったく悩まないからだ。現状に疑問を感じてもそれを深く考えようとはしない。人間的な何かが欠如している感じ。まさかそれが演出じゃあ……。演じにくかったのではないだろうか。かわいそう。 悪のボスは「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Ring・2001・米/ニュージーランド)が有名だが、「007/ゴールデンアイ」(Goldeneye・1995・英/米)の敵大ボスや「RONIN」(Ronin・1998・米)での悪役が光っていたショーン・ビーン。本作でも嫌らしいねちっとした悪役を好演している。 せこいチンピラのような役の多いスティーブン・ブシェーミはいい。彼とショーン・ビーンは印象に残る。スティーブン・ブシェーミの場合は途中で彼らのために死ぬのでお得な役ということもある。普通の人間で、見かけは怪しげだが彼らを助けようとする数少ない理解者なのだ。これはポイント高い。かなり印象が良くなった。 未来世界はジョージ・ルーカスの「THX-1138」(THX1138・1971・米)の世界観に似ていて、ある意味「ソイレント・グリーン」(Soylent Green・1973・米)のようでもあるし、どこか「ザ・ロック」(The Rock・1996・米)の雰囲気もある。パソコンはMacで、街の情報端末はMSNだったりする。 脱出したクローンを追う元特殊部隊上がりのリーダーが使うピストルはどうやらガバメント系のカスタム。メンバーのメイン・ウェポンはM4カービンやAKベースのカスタムを使っていたようだ。ひょっとするとAUGもあったかもしれない。 ユアン・マクレガーが後半に使うのはなぜか旧ソ連のマカロフ・ピストル。スカーレット・ヨハンソンはAMTのバックアップのようだった。 公開2日目の初回、55分前に着いたら新宿の大劇場には3人のオヤジと中年夫婦が1組。45分前に20人くらいになって女性は4〜5人。20代から35歳くらいの若い人も4〜5人。あとは中高年。30分前に開場したときで50人くらい。 初回のみペア・シート以外全席自由で、ぴあ席11席×左右と赤いシートの10席×4列×左右もOK。 最終的に下は父に連れられた小学生くらいの女の子、そして中学生くらいからいたが、意外と老人は少なかった。中心は中高男性。1,064席の5割ほどが埋まった。みな「パール・ハーバー」(Peal Harbor・2001・米)や「バッドボーイズ2バッド」(2003・米)でマイケル・ベイ監督作品に用心するようになってしまったか。もっと入ってもいい作品だと思う。 劇場入口にワーナーの張り紙があって、コピー防止のため持ち物検査をすることがあるとあった。日本でもまだそんなことをするやつがいるのか。ちょっとビックリ。 予告は「シン・シティ」が面白そう。まるでオール・スター・ムービー状態。監督もロバート・ロドリゲスにアメコミのフランク・ミラーが加わり、さらにクゥェティン・タランティーノまでがくわわったのだとか。3人で一体とどうやって監督したのだろう。期待したい。 |