日本語字幕:手書き書体下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(マスク、Panavision、Super 35)/ドルビー、dts
(日R-18指定、米R指定)
世界中のテロに対処する謎の組織、それが“チーム・アメリカ”だ。彼らはラシュモア山の岩盤に彫られた大統領の顔の彫刻の奥に秘密基地を置き、そこから世界中に出動する。パリではテロリストを倒すためエッフェル塔とルーヴル美術館を破壊し、エジプトではピラミッドにミサイルを撃ち込んでしまう。そして、キム・ジョン2と名乗る独裁者が大量破壊兵器を売りさばこうとしているという情報を得、ブロードウェイのスター、ゲイリー(声:トレイ・パーカー)をリクルートしてくる。彼の演技力を活かして潜入捜査官として送り込もうという計画だった。 |
サウスパークのクリエイターが作った、はちゃめちゃなスーパー・マリオネット「サンダーバード」。人形は雰囲気がソックリに作られているが、2005年なりになかりレベル・アップしている。1960年代のティストを残し、あえて操りの糸を見せながらデジタル技術も投入され、リアリティーも同時に追及するというアンバランスさが良い。そして、もっと毒があるのかとおもったら、ボクが感じたのはむしろ「無邪気」な感じ。だから、結構きついことをいっているのに、それほど気分を害することはない。笑って許せる感じ。ただ、これは人によってレベルが違うだろうけれど。ボクは完全にストライク・ゾーン。楽しめたし、笑った。 話としては、平和のためなら文化遺産も壊してしまうし、巻き込まれて犠牲者が出てもしょうがないという強引な(ちょっと頭からっぽ)熱血集団のチーム・アメリカが、キム・ジョンイルという某国の独裁者がハリウッドのフィルム・アクターズ・ギルド(略してF.A.G.=同性愛者というギャグ)を利用し、世界中の要人を集めて殺そうとする企みを打ち砕くというもの。それをエロ、グロ、汚い言葉満載で、大人向けにリアルに、ミュージカル仕立てで描いたと。そう、これはあえて言えばミュージカルなのだ。辛辣なことは音楽と踊りというオブラートに包んで取っつきやすくするという、ミュージカルの王道。キム・ジョンイルはじめ、多くのハリウッド・スターが実名(もちろん無許可)でやり玉に上がっている。 一言でいえばドタバタなのだが、細部が良くできているので、ただのチャラケに終わっていない。パッと見には1965年〜1966年の人形とソックリだが、よく見ると顔が柔らかい。口は下唇だけがパタパタ動くのではなく、ちゃんと自然に開く。目もまばたきだけではなく、目をむいたりつり上げたりできるのだ。 持っている銃もリアルな形で、M16、グレーネード・ランチャー付きM4カービン、FNミニミ、MP5、バーレット50口径、ブレーザーR93タクティカルのようなライフル。敵は当然AKライフル。ちゃんと手を抜かずにきっちり作られている。スケールは人形に合わせて1/3だそうだ。発射シーンでは薬莢までは飛んでいないが、ちゃんとデジタルでマズル・フラッシュを合成している。もちろん薬莢の落ちる音は再現されている。このこだわりが画面に緊張感を出している。コメディ、パロディであっても手を抜かないこと、これは大事だと思う。 その分、頭を打たれて上半分が吹っ飛んだり、人形劇なのに撃たれて倒れると血溜まりが広がっていくなどR-18なりの残酷さもあって、決して子供向きではないことがその表現からもわかる。やっぱり「サンダーバード」世代を狙ったのだろう。ベッド・シーンも、人形劇始まって以来初めてと思われる、全裸による激しいもの。といっても、自在関節むき出しで、操り糸もたくさん見えているので、あまりエロティックな感じはしないのだが。 セットも素晴らしい。フランス・パリ、エジプト・カイロ、ニューヨーク・プロードウェイ、サウスダコタ・ラシュモア山、パナマの運河……世界各地が舞台で、それぞれ人形劇とは思えないほど広いセットが組まれ人形が配置されている。アメリカにとって外国は、すべてアメリカの西方9,565kmとか表示され、これも笑った。なんでもアメリカ中心かいと突っ込みを入れたくなる。 パロディもたくさんちりばめられていて、「スター・ウォーズ」「ミッション・インポシブル2」とか「アラジン」、「キル・ビル」(布袋寅泰のあの名曲が使われている)、きっと「フェイス・オフ」や「マトリックス」もなどなど……見つけ楽しみもある。もちろん気付かなくても何の支障もない。 全部おもしろいけれど、一番笑ったのは「マイケル・ベイの『パール・ハーバー』は糞だ」「なんでマイケル・ベイは作品を作り続けられるんだ」というところ。ボクもまったく同意見。「アイランド」はまあ良かったけど。あと、マット・デイモンが出てくるたびに、たどたどしく「まっと・でいもん」と言うのもおかしかった。声は監督のトイレ・パーカー自身と相棒で脚本を担当しているマット・ストーンがあてているらしい。 使われている曲もすべていい感じ。サントラCDは買いかもしれない。そして、DVDが出たら、絶対買いだよなあ。メイキングも見てみたいし、何より本編をもっとじっくり見てみたい。そして、日本語吹替版が着くとしたら、どんな感じになるのかとても興味があるし。 公開初日の2回目、池袋の小劇場は整理番号順での入場というシステムで、受付をすませたら10分前までにロビーにもどればいいらしい。それで入場は10分前で、狭いロビーは15分前にはすでにいっぱい。暑い。 最終的には190席の6.5割ほどが埋まった。これは公開館数も少なく、あまり広告していない映画にしては良い方ではないだろうか。通常の指定席はないが、ぴあ席が4席。これは埋まった。でも6.5割の入りなのに必要あったのか……。まあ真ん中だったから見やすかったかもしれない。ただし、この劇場は床の傾斜が大きく、ほとんど前の席の人の頭も邪魔にならず、座席数にしてはスクリーンが大きく高いので、よほで端でない限りどの席から見てもあまり差はないと思う。 それにしても、プログラムを作っていないとは驚いた。こういう映画は日本では受けないという判断だろうか。久しぶりにプログラムを買おうと思ったのに。 いかんなあと思ったのは、上映途中に上映室内の灯を点けること。何の気なしにやっているのかもしれないが、思った以上に場内に明かりが漏れる。つい振り返ってしまう。昔はそんなことなかったような気がするんだけど……まさか最近はシロートさんがやっていて(昔はフィルムが可燃性だったので危険物取扱いの資格が必要だったが、今は難燃性になったとかで必要なくなったのか)、そのヘンの気遣いもプライドもなくなったということか? ほんと興ざめするから止めて欲しい。 |