日本語字幕:手書き書体下、寺尾次郎/監修:根本理恵/シネスコ・サイズ(マスク、Super35)/ドルビーデジタル
(日PG-12指定)
2080年、アンドロイドの犯罪専門の特捜部隊MLPCのR(ユ・ジテ)は、アンドロイドのリア(ソ・リン)に恋をし、アンドロイドの記憶を人間の脳に転送する実験をしているジロ博士()と接触、転送にふさわしい人間として、娼婦のシオン(イ・ジェウン)の名をあげる。Rはシオンを探し出し接触を試みるが、その話には裏があった。 |
この映画の監督は、あの凡作潜水艦映画「ユリョン」(Phantom the Submrine・1999・韓)を作った人。しかも2003年の作品が今ころ公開。ということは……韓国映画で本格SFは珍しいなと思って見に行ったら、案の定、出来も「ユリョン」だった。 一言でいえば「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米/香)。それに「Ghost in the Shell攻殻機動隊」(1995・日)というか「イノセンス」(2004・日)を足した話。ビジュアル面では「スター・ウォーズ」(Star Wars・1999・米)もあれば「マトリックス」(The Matrix・1999・米)も「エイリアン2」(Aliens・1986・米)もあって、セット、小道具、衣装など、みんないろんなところからの良いとこ取り。良い意味で影響を受けたということなのかもしれないが、逆に言えば個性がない。監督が映画オタクで、そういう雰囲気の映画を撮りたかったというだけのことではないかという気もする。 日本における「韓流」ブームはまだ続いているようで、そのおかげでたくさんの韓国映画が封切られるようになったわけだが、いくら才能溢れる人が多く、勢いのある韓国でも、すべてが傑作でおもしろいものばかりではないということだろう。たくさんあれば中にはつまらないものや、別な作品のオマケ、抱き合わせ販売ということもあるかもしれない。買った以上、少しでも資金は回収しなければならないわけで、劇場未公開作品はDVDでも注目度が低いから、劇場公開されると……そんな深読みまでしてしまう作品。やれやれ。 たぶん感覚的に演出というか撮影していく人なのだろう、ところどころ「ユリョン」同様にわけのわからないところがある。本作ではバイクの後ろに恋人のアンドロイドを乗せ、なぜか娼婦のシオンの家に突っ込んでそのまま海に落ちるシーンがあるが、一体なんのためにあんなことをやったのだろう。海に飛び込みたかったら直接いけばいいわけで、わざわざ人の家をぶっ壊してからやる必要はない。しかもシオンは別に彼らの妨害しているわけでも何でもないのだ。むしろ彼らを助けてくれる鍵を握っているかもしれない大切な人物なのだ。うーん、ミン・ビュンチョン監督、マイケル・ベイ・タイプか……公式サイトにはCMやミュージック・ビデオの編集をやっていたとあった。うーん、やっぱりか……。 酷いと思ったのは、冒頭のアンドロイドが廃棄されていくシーン。確かに残酷なシーンなのだが、女優さんが本当に全裸になる必要はないだろう。ミラ・ジョボビッチが「フィフス・エレメント」(The Fifth Element・1997・仏/米)でやったように、胸と腰の部分は固定バンドで隠されている状態でいいではないか。観客サービスのつもりか、監督の趣味で撮りたかったのか。どうも後者のような気がしてならない。 たぶん感情が観客に良く伝わってこないのは、捜査官のRとアンドロイドのリアがどうやって出会い、どうやって愛し合うようになったかを描いていないからではないだろうか。いきなり2人は愛しあっているといわれても、どの程度のものなのか観客はさっぱり分からない。彼女を失う傷みが観客に伝わらなければ、この映画は成立しないはず。その肝心な部分をズバッと切ってはいかんなあ。 特捜部隊が使う銃は、M16A1の20連マガジン・タイプをベースに飾り付けたもの。それと2トーン・カラーのガバメント、コンプ・タイプ。ラスト、「ブレード・ランナー」のルトガー・ハウアー演じるレプリカントに相当するサイパーとの決闘ではルガー・セキュリティ・シックスも登場する。 もちろん、ここまで未来世界を構築したSFX技術はすごい。ハリウッド・レベルだと思う。しかしそれが生きていない。真似に終わっている。これが残念。うまい監督が撮っていたらどうなっていたんだろうかと思わずにはいられない。 タイトルのクレジットの出し方はうまい。さすがにMTVの編集をやっていただけのことはある。回路のグラフィックに名前が載ってくる。カッコいい。センスのいいSFドラマを予感させる。が、予感させただけだった……。いくら「オールド・ボーイ」(Oldboy・2003・韓)のユ・ジテが出ても、韓国女優美女軍団が出ても、取り返すことは出来なかったって感じ。 公開2日目の2回目、30分くらい前に付いたら銀座の小劇場はロビーに4人。30代くらいが1人、オジサン2人、オバサン1人。25分前くらいに15人くらいになって、もうロビーはいっぱい。30代くらいが5人、あとは中高年。20分前に入れ替えとなり、指定席なしの場内へ。 指定席は無いのに、なぜかぴあ席はあり2席にカバーがかかっていた。この劇場はスクリーンが低く、座席も千鳥配列になっていないから、どの席からでも前席の人の頭が邪魔になってスクリーンがよく見えないのに。とくに中央付近に座ると左右に頭を振っても避けきれない。すこし端によった方が頭をずらせば比較的よく見えるのに……。もちろんぴあ席は中央付近。この劇場は混まないで、前の席に人が座らなければそこそこいい。はっきりいって、それは賭けだ。 最終的にぴあ席に若いカッブルが座り、130席に40人ほどの入り。良かった。前の席には誰も座らなかった。 スクリーンはシネスコで開いていて、予告が始まったらビスタになった。そして本編が始まり、アミューズのロゴが出たあとでシネスコになるという、なんだか危なっかしい上映。映写技師っていう人達は最近どうしたんだろう。 エンド・クレジットで画面の左半分にコンセプト・スケッチが出る。どれもみな西洋人っぽくて、韓国の人が描いたのか疑問を感じた。プログラムを買わなかったので確認のしょうがない。IMDbにもスタッフはほとんど出ていないから、プログラムを買っても載っていなかったかもしれないが。それにしても、なぜこれを見せたのだろう。コンセプトの段階では狙いが高かったのだということだろうか。意味不明。 公式サイトでは「スター・ウォーズ」と同じ完全デジタル撮影システム採用とあったが、IMDbではフィルムとなっていた。なぜ? 入場プレゼントがあり、「辛」カップ麺をもらった。これはうまいので嬉しい。ただ、すっごく辛くて、夏にはどうなんだろう。冷めんの韓国カップ麺ってないのだろうか。あったら食べたい。 |