ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル
両親の離婚で母について田舎に来た小学生のタダシ(神木隆之介)は、都会者ということでクラスのイジメを受けていた。そんなある日、夏祭りで今年の麒麟送子(きりんそうし)に選ばれてしまう。麒麟送子は世界を救うと伝えられ、そのため大天狗に預けた剣を受取に行かなければならないという。その頃、全国で妖怪が捕らえられるという事件が発生していた。首謀者は加藤保憲(豊川悦司)とその手下のアギ(栗山千明)だった。人間に使い捨てにされた機械たちの怨念と、妖怪とを混ぜ合わせることによって新しいモンスターを作りだしていたのだ。やがて、ボケたじいちゃんが天狗山へ行ってしまい、しかたなくタダシも山へ入ると、次から次へと妖怪が現れ、タダシを怖がらせるのだった。 |
懐かしい「妖怪百物語」(1968)、「妖怪大戦争」(1968)、「東海道お化け道中」(1969)と続いた妖怪三部作。その第2作のリメイクということになるのだが、そこは三池崇史監督、普通にリメイクするわけがない。「着信アリ」(2004)と同様、最後の最後で肩透かし。それで終わり?って感じ。前半は非常に良くできている。面白いのに……。 いま妖怪は人気があるようで、ちょっと前に東急バンズで「水木しげるコーナー」が作られ、グッズが販売されていたほど。だから妖怪についての説明はほとんど無し。ただ、知らない人でも楽しめるように、妖怪に全く関係のないところから話は始まって、徐々に異常な世界に入り込むようになっている。ここがうまい。これならほとんど拒否反応は起こらないだろう。大人でもノリやすい。ただ、オリジナル作品にあったような、本当にゾッとするような怖さはほとんどなくなってしまっている。もう妖怪はお友達ってことか。 そして、都会の少年が、じいちゃんの田舎でひと夏、大冒険をして大人になるというジュブナイルものの定番中の定番。実に良くできている。子供たちもきっと見て楽しいはず。 3D-CGによる機械モンスターがちょっとぎこちないが、特殊メイクによる妖怪はいい味が出ているものばかり。また、その妖怪を演じている俳優が豪華。これはあまり子供たちには関係なく、大人の観客向け、話題作りということなんだろうが(お笑い芸人の人達は子供にも有効そうだ)。小豆洗いが99の岡村隆史、豆腐小僧がほとんどノー・メイクの雨上がりの蛍原徹、油すましが竹中直人、猩猩(しょうじょう)が近藤正臣、かっぱが本当にぴったりという感じの阿部サダヲ、ぬらりひょんが忌野清志郎、大天狗が遠藤憲一、砂かけ婆が根岸季衣、大首が石橋蓮司……といった具合。蛍原以外どの人もほとんどだれただかわからなくなってしまっているが。 笑いをとっていたのは、やはり咳とともに首が落ちるろくろ首だった。 しかし、一番良かったのは、ちょっとエロティックな存在でもある川姫を演じた高橋真唯だろう。キャッシング・サービスのCMで眼鏡を外している女の子。しっかりと印象に残った。悪役のアギを演じた「死国」(1999・日)や「キル・ビル」(Kill Bill: Vol.1・2003・米)の栗山千明も良かったが、やはりエロティックさで高橋より印象が薄れた感じ。 人間の役でもゲストといった感じの人は多く、主人公と一緒に活躍して欲しかったのにほんのちょっとしか出ていない雑誌記者役の雨上がり宮迫博之(いつもながら、うまい。「妖怪大戦争だあ」の絶妙な叫びは彼だった)。一説には「帝都大戦」(1989・日)で、もうアクション・シーンはいやだと言ってラストが短くなってしまったと噂される南果歩も母役で出演。 学校の先生が宮部みゆき、あとよくわからないが荒俣宏、京極夏彦、水木しげるまでが出演している。これらの人はプロデュース・チーム「怪」というのを作って原案に参加したのだとか。それでホームレス役で大沢在昌が出ていたのか。これには驚いた。 ただ、戦争のクライマックスたる加藤保憲との対決が、主人公がほとんど関わらず、あっけなく着いてしまうところが……。「真っ赤な嘘」と「真っ白な嘘」「大人の入口」とかいろいろ良いところも多いのに、もったいない。ラストのラストは、続編を作るぞということなんだろうか。いずれにしても、作った人達はものすごく楽しかったに違いない。それが伝わってくる映画であったことは確かだ。 外のロケ・シーンでもあまり色が浅くならず、サラウンドの効果も良く効きクリア。クォリティは高い。 公開初日は舞台あいさつがあるというのでパスして、2日目の初回、銀座の劇場へ行ったら60分前ですでに20人ほどの行列。これは驚いた。夏休みに入ったのでファミリーが半分ほど。子供は小さい子はやっと歩けるくらいからいたがも映画を見ることができるのか。それ以外は中高年で、老人といった感じの人はほとんどいなかった。男女比は4対6でやや女性の方が多い感じ。 ありがたいことに50分前に開場してくれて、その時点では40人くらい。1Fのレディース・シート以外、全席自由で見やすい2F席もOK。うしろから2列めの11席がぴあ席になっていたが、ここも初回は自由。早く開いたので、ついついまたコーヒーを買ってしまった。 アンケート用紙が渡されて、書いている回りの声を聞いていたら、ろくろ首の頭が落ちる予告で面白そうだと思ったという声が聞こえてきた。やっぱりね。 スクリーンはビスタで最初から開いていて、場内には忌野清志郎の歌が流れていた。「小豆と書いてあずきかよ、読めねーよ。こまめだろ。小があで、豆がずきかよ。ありえねえ」と唄うのがおかしくてグッド。 意外なことに開場してから観客はあまり増えず、1Fはがらがらで2Fはそれでも6.5割ほどの入り。 どうでもいいが場内アナウンスはマイクに口を近づけ過ぎ。吐く息までブハとか拾って、聞きにくいったらありゃしない。 予告が始まったら、案の定、どこかで小さな子が泣き出した。音がでかくて怖いのではないだろうか。回りは暗いし。やれやれ。ボクが子供の頃もこんなだった。それでも昔は親がすぐ抱いてロビーに出たものだったが、今はなかなか出ない。 予告ではまたた「ガメラ」をやるらしい。映像無しでG.W.公開だと告げていた。ところで、上映途中、何回か映写室内の灯を点けなかったか? 灯が場内に漏れてじゃまなんだけど。 |