日本語字幕:丸ゴ書体下、戸田奈津子/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル、dts、SDDS
(米PG-13指定)
主演した映画「カトマンドゥの冒険」が大コケでTVの仕事をやるしかなくなった俳優のジャック(ウィル・フェレル)。結婚したばかりの妻にも逃げられ、人気も最悪。どうにか「奥様は魔女」のリメイクでダーリンの役を得るが、相手役のサマンサにぴったりの女優がなかなか見つからない。そんなとき、ちょうどハリウッドに本物の若い魔女、イザベラ(ニコール・キッドマン)がやってくる。彼女は魔法を使わず普通の人間のように暮らしたいと願っていた。そして街でイザベラを見かけたジャックは、彼女こそサマンサにピッタリだと監督たちに推薦する。 |
爽やかで気軽に楽しめるラブ・コメディ。なかなか笑えるし、ちょっぴり感動もして悪くない。ただ、安直だし、ゆるゆるで、軽い。見終わってもほとんど何も残らない。この程度の作品に、わざわざこんな大物俳優達を使ってという気もしたが、彼らがいないとこの程度の内容ではお客さんが来ないかもしれない。うーむ。 何より良いのは、オリジナルの「奥様は魔女」の世界観を壊していないこと。なんでも、ハリウッド監督の常套句は「君を変えて見せる」だそうで、とにかく変えるのが好きらしいから、リメイクではオリジナルに敬意を払いつつ独自の世界観を作ろうとする人が多い。それで稀にうまくいくこともあるもの、たいていは失敗してしまう。だって、観客はオリジナルの延長を期待しているのであって、新しい世界観など望んではいないのだから。 新しい観客もいるだろうが、TV放送当時、夢中で見ていた世代は「奥様は魔女」の世界観が見たいのだ。よく過去に大ヒット曲を持つ歌手が、その曲を唄うときに、オリジナルと変えてアレンジして唄う人がいるが、聞く方は違いの方が気になってガッカリしてしまう、あれと同じ。 その失敗を本作はしてない。映画の中でTV版を再びTVでリメイクする話になっているので、映画としてはTV版を壊しようがないのだ。これは脚本家の腕か、プロデューサーのアイディアか、はたまた監督の案か。いい手だと思う。テーマ曲もほとんどアレンジなし。相当いじってはいるのだろうが、当時のイメージそのままで、記憶が甦ってくる。タイトルのアニメも同じタッチ(新タイトル・アニメをわざわざ起こしている)。いいなあ。 脚本は監督と製作も兼ねるローラ・エフロン。「恋人たちの予感」(When Harry met Sally・1989・米)や「めぐり逢えたら」(Sleepless in Seatle・1993・米)「ユー・ガット・メール」(You've got mail・1998・米)でラブ・コメディを描かせたら当代随一の女性監督。うまい。ただ、話が小さい感じがしたが。 それにしても、 なんとなく「奥様は魔女」の大ヒットは日本だけのような気がしていたが、考えてみれば何シーズンも作られたということは、アメリカで人気があったからだ。なるほどなあ。ダーリンなんて途中で俳優が変わった存在感のない役なんだぞ、とか結構マニアックなネタも入っているし。 主役のニコール・キッドマンはアメリカ生まれだが、オーストラリア育ち。鼻をぴくぴくやるのが本当にうまい。しかもとても魅力的。すばらしい。少し影のある理知的な訳だった「ザ・インタープリター」とは打って変わって、少女のようにはつらつとして、明るくて、傷つき易くて、まるで別人。さすが女優。 しかし相手役の男優はどうだろうか。確かにちょっと頼りないおバカで、母性本能をくすぐるタイプかもしれないが、どうにも本当にそう見えて感情移入しにくかった。だいたいこの人、日本ではほとんど知られていない。ウィル・ファレルって、誰? 目が寄ってるし。さすがに物語後半では、ちょっとだけ心動かされるけど、でもなあ。相手役としては物足りない気がした。キャラもバカ過ぎ。 お父さん役は、なんとあの名優、マイケル・ケイン。小さな役なのだが、彼が演じることで存在感がとても大きくなっていた。魔法で、まるで母役のエンドラのように、どこにでも変幻自在に現れるシーンは笑わせてくれる。デジタル合成で、パッケの中のキャラクターになっていたり、とにかくいい。一番面白かったかも。マイケル・ケインすごい。 そのTVの中のサンドラ役は、自著「アウト・オン・ア・リム」で精神世界へ入り込んだ名女優のシャーリー・マクレーン。「アパートの鍵貸します」(The Apartment・1960・米)のあの可憐な女性が、今やいじわるなお母さんだもんなあ。70歳を過ぎたんだからしようがないけど。 おかしかったのは、売れない俳優のジャックのマネージャー(エージェント?)リッチーを演じていたジェイソン・シュワルツマン。雰囲気がニコール・キッドマンの別れた夫、トム・クルーズそっくり。しかもダメ男。ローラ・エフロンの仕掛けだと思うが、よくニコール・キッドマンが承諾したなあと。最近「宇宙戦争」で人気下降気味のトム・クルーズに対して、「ザ・インタープリター」など好調のニコール・キッドマンの余裕ということか。 公開初日の初回、新宿の劇場は55分前に着いたら、ばらばらと1〜2人。並んでいない。45分くらい前になってようやく列ができ、5人。中高年の男性2人、女性3人。やっぱりTV放送時に夢中になっていた世代か。 40分前に10人くらいになって、30分前には30人くらいに。男女比は4対6で女性が多くなり、20歳前後の大学生くらいが1/4くらいに。若い人達はニコール・キッドマンのファンだろうか。それともローラ・エフロンのファン? 開場はなんと12〜3分前になってから。遅いよ。トイレに行ってコーヒーを買ったらギリギリ。初回のみペア・シート以外全席自由。最終的には1,064席のうち4割ほどの入り。小品にしては(豪華キャストだけど)良い方ではないだろうか。 上映直前にTV版「奥さまは魔女」のDVDボックスのCMあり。これは効果ありそう。ちょっと欲しいと思ってしまったもんなあ。予告編は「蝋人形の館」が怖くて面白そう。「ハリー・ポッター」は新しい予告編に。 |