シネスコ・サイズ/ドルビーデジタル
1614年、徳川家康(北村和夫)が江戸幕府を開き、世の人々がなべて太平の世がきたと思い始めた頃、将軍の相談役、南海坊天海(石橋蓮司)は太平の世に特殊技能を持った危険な集団である伊賀と甲賀の忍びの一族は、豊臣の残党が謀反を企てているという噂もあり、幕府にとって危険なので抹殺すべきと具申する。そこで、伊賀と甲賀を戦わせ、勝った方を登用するといつわり、手薄となった両者の里を襲う企みを建てる。 |
ズバリ、忍者活劇。ファンタスティックでちゃんとした時代劇で、アクションで、エンターテインメント。今の日本でこんな映画を作れる人がいたんだ。これは新鮮な驚きだった。しかもラブ・ストーリーにして、しっかり女性のハートもつかんだらしい。気になるのはただ1つ。なぜタイトルがローマ字で「SHINOBI」なのかということ。ここまで正統派時代物娯楽活劇を作ったのなら、堂々と「忍」で行けばいいのに。っていうか、原作どおり山田風太郎の「甲賀忍法帖」でよかったのじゃないだろうか。何かローマ字にすると世界市場を意識して、王道の手法ではなく西洋アレンジしたチャンバラを見せられそうな気がして、うさん臭いんだけどなあ。 何といっても、忍術がスゴイ。まるで劇画のように実写で描かれている。当然CGを使っているのでよりその感が強いのだろうけれど、このビジュアル化は驚かされる。見事だ。デジタル技術を駆使して、ありふれたチャンバラの世界を、いまのパソコン世代の若者が見ても面白いカッコいいエンターテインメントに仕上げたと。大御所のような難しいことは言わず、最低限の時代劇のルールは守りつつ、改革を加えて見せたと。 配役は美形ばかりをそろえた感じがする。メインの仲間由紀恵とオダギリジョーはもちろん、伊賀の蛍火を演じた池尻エリカなど博多人形的な美しさとお嬢様のような無垢なかわいさがあるし、同じく伊賀の夜叉丸を演じた坂口拓はどことなくつかて時代劇に出ていた頃の田村正和のような端正で色気もある美しさ。これで格闘技万能だというのだから驚く。「あずみ」(2003)にも出ていたらしいが印象に残っていない。強烈なキャラクターだった生まれながらの乱暴者、佐敷三兄弟の末の弟を演じていたらしいが……キャラクターは印象に残っているのに役者の印象がない。まっ、いずれにしても今後の活躍が楽しみだ。 美形というのとは違うが、伊賀の筑摩小四郎役の虎牙光輝もいい。野生の豹のような感じがグッド。また「天使の牙」(2003)ではあまりきれいに見えなかったが、本作では甲賀の陽炎を演じた黒谷友香が良い。怪しい美しさと色気が出ていた。役どころなのか、演出なのか、カメラなのか、それとも全部か。 演技派の椎名桔平に至っては、いまはやりのフィギュアのような完成された美しさ。伊賀の不死の薬師寺天膳の長い銀髪がアニメのキャラクターのようだ。厚めの化粧をし、髪はワックスで固められているらしく、どんなに激しい戦いをしても髪の毛1本乱れないのだ。 木下ほうか演じる甲賀の如月左衛門はマスクをして頭巾を被っているので、誰が演じても同じようなものだが、その感じがとてつもなく違和感があっていい。同様に伊藤俊演じる甲賀の野獣、蓑念鬼も誰が演じても似たようなものだろうが、違和感のある存在感がたまらない。 こうしてキャラクターを見てくると監督の狙っているセンが見えてくる。監督はミュージック・ビデオ出身の下山 天という人。「弟切草」(2001)は酷く、「マッスル・ヒート」(2002)はアクションのみが見どころで今ひとつという感じだったが、ついに本作でピタッとはまったということか。たぶんノリは「マッスル……」と同じなのだが、世界観が「マッスル……」がどこか借り物というか真似っぽかったのに対して、本作は時代劇ということもあり独特の世界観を作ることに成功している。やっぱりカラー・コレクションを使って色を変えているが、カッコいいからOK。 脚本は、金城武が出演したタイム・トラベルSFの「リターナー」(2002)の平田研也。本作が劇場作品2本目らしい くっそう、新宿の劇場は土日祝日のみ早朝(?)9:00の回あり。なんだよ、知らなかった。55分前に着いたらロビーには老人が1人。45分前になって20代後半の女性が2人、40分前くらいから20代のカップルが現れ、35分前から増え出した。 25分前に案内があって整列し、15分前に入れ替え。この時点で30人くらい。老人が2〜3人。中高年は全体の1/4〜1/5くらい。女性は全体の2/3くらい。女性のほうが多いとは意外。最終的には305席の6.5割ほどが埋まった。予告で面白そうなのは「ナルニア物語」と「アラハン」と「ゾロ」くらいか。 |