2005年9月24日(土)「ルパン」

ARSENE LUPIN・2004・仏/伊/西/英・2時間12分(IMDbでは131分、日本版132分)

日本語字幕:丸ゴシック書体下、古田由紀子/シネスコ・サイズ/ドルビーデジタル、dts

(英15指定)

http://www.arsene-lupin.jp/
(全国劇場案内もあり)

1882年フランスのノルマンディで、公爵家の妹アンリエット(マリー・ブネル)と結婚した平民のボクシング・トレーナー、テオフラスト・ルパン(ニッキー・ナウデ)は、密かに泥棒稼業に手を出しており、憲兵に追われて逃走。しばらくして顔を潰された惨殺死体で発見された。ヘンリエッタと1人息子のアルセーヌは家名を汚したとして伯爵家を追われる。15年後、パリに金持ちや政府の高官から宝石を盗む紳士泥棒が現れ、話題となっていた。

72点

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 19世紀末という1つの時代の終焉と新世紀の始まりへの期待が入り交じった混とんとした時代の雰囲気を巧妙に描き出し、一大冒険譚に仕上げられているところは驚かされる。ボクには原作に忠実なのかどうか分からないが、先の展開が読めず、2時間を超える長編ながら、観客を飽きさせずに(ちょっとウトウトはするかもしれないが)最後まで引っ張っていくとはあっぱれ。

 ただ、口とセリフが微妙にズレ、アフレコらしさが見えてしまうと、よけいに芝居がかったところが気になる。リアルに撮ろうとしているのだろうが、カッコよさを気にするあまりか、京劇とか歌舞伎のように見得を切るようなところが浮いていて、本気なのかふざけているのか判然としない感じもした。

 一番目立っていたのは主人公のルパンよりも、奸婦ジョセフィーヌ・カリオストロ伯爵夫人を演じたクリスティン・スコット・トーマス。男を虜にし、しおらしいところを見せたかと思うと平気で男を裏切ってしまう。まさに血も涙もない悪女。しかも、ナイス・ボディでもないのに怪しいほどの色気がある。素晴らしい演技力。大ヒットした「イングリッシュ・ペイシェント」(The English Patient・1996・米)以降、そんな役が多いようだ。イギリス生まれの彼女がなぜ? と思ったら、フランスへ渡ってから演義を始めたのだそうで、夫はフランス人なんだとか。なるほど納得。

 ちょっと主役には物足りない感じもする、ルパンを演じたロマン・デュリスは、あまりフランス映画を見ないボクにはほとんど新顔。アクション作品では「ドーベルマン」(Dobermann・1997・仏)にギャングのひとりとして、そして「キッドナッパー」にも頭の弱いドライバー役で出ていたらしい。そう言われれば、見かけた気がするが、やっぱりチンピラというイメージだったような気がする。紳士泥棒としてはどうなんだろう。ただ、アクションでは体がよく動き、実際にかなりのシーンを本人が演じていたのではないだろうか。

 謎の男ボーマニャンを演じたのは、どこかで見たと思ったら「ジャンヌ・ダルク」(The Messenger: The Story of Joan of Arc・1999・仏/米)や「スズメバチ」(Nid De Guepes・2002・仏)に出ていた人。とにかくゴツイ面構えで、ひと目で悪役とわかるような人。存在感はスゴイ。

 幼なじみのいとこ、クラリスを演じたのは「キングダム・オブ・ヘブン」(Kingdom of Heaven・2005・米)で主人公と恋に落ちるエルサレム国王女を演じていた人。なんとチャールズ・ブロンソンのサスペンス「雨の訪問者」(Le Passager De La Pluie・1970・仏)でブロンソンの妻を演じたマルレーヌ・ジョベールの娘だという。

 監督はソフィー・マルソーが出たホラー「ルーブルの怪人」(Belpegor Le Fantome Du Louvre・2001・仏)のジャン=ポール・サロメ。脚本も書いていて、この人はうまいんだか、へたなんだか、よくわからない。

 銃器は、1882年のシーンで憲兵が持っているのは、かなり大型でフランス軍用M1873リボルバーのような感じだった。15年後、謎の男ボーマニャンが持っているのはモーゼルC96らしい。15発くらい連射していたが、せっかくクラシックな銃を出してきたんだから、この辺は気を遣って欲しかった。他にも5インチくらいのS&W風リボルバーやレミントン・ニュー・モデル・アーミー風のリボルバーが出てきたが、あれは……。

 35分前に新宿の劇場があるデパートが開店し、そのまますぐに劇場へ。劇場も開場しており、そのまま中へ。全席自由で、ぞろぞろと人が入ってくる。ここはもともとアイマックス・シアターで短時間上映が多かったから、シートは結構固い。1時間くらいで尻が痛くなってくる。うむむ。

 最終的に340席に7.5割〜8割くらいの入り。男女比は3.5対6.5くらいで女性のほうが多かった。年齢的には下は小学生くらいの男の子もいたが、だいたいは中高年が2/3、20〜30代が1/3という感じ。母娘というパターンが多いか。

 初回はエアコンがまだよく効いておらず、場内はちょっと暑かった。ちょっとピントが甘いような気がしたが……。

 予告ではアル・パチーノの「ベニスの商人」が面白そうだった。ちょっと重厚すぎる気はしたけど。


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