2005年9月25日(日)「NOTHING[ナッシング]」

NOTHING・2003・加・1時間29分(IMDbでは90分)

日本語字幕:手書き書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル

(米R指定)

49点


同時上映

「RYAN[ライアン]」

RYAN・2004・加・14分
日本語字幕:手書き書体下、金丸美南子/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビーデジタル

75点


http://www.klockworx.com/nothing/
(入ったら音に注意。全国劇場案内もあり)

何でも自己中心的なデイブ(デビッド・ヒューレット)と、極度の心配性から引きこもりになってしまったアンドリュー(アンドリュー・ミラー)は一緒に暮らし、これまでうまくやってきた。ところがある日、会社の金を横領した容疑をかけられ解雇。実際に横領したのはガール・フレンドのサラ(マリー・ジョゼ・クローゼ)で、彼女にも逃げられてしまう。しかもデイブは少女に暴行した容疑がかけられ、市からは違法建築なので家を強制取壊しすると言われてしまう。なにもかも嫌になった2人が「放っておいてくれ」と叫ぶと、次の瞬間、自分たちと家しかない真っ白な空間にいた。

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 まったく合わなかった。理解できない。何のために作られた作品なのか。こんなに退屈な90分間にお金を払ってしまった自分に腹が立った。とてもお金を取って人に見せる作品ではないと思う。タイトルのナッシングは、何もない、つまり内容のない映画、ということなのだろうか。いわゆるナンセンス作品か。それにしても、つまらなすぎる。これを友達とかにタダで見せるというのなら分かるが、お金を取ってはいけないだろう。っていうか、劇場公開なんかしてはいけないんじゃないの。

 とにかくストレスがたまる。ストーリーだけでも充分ストレスがたまる内容なのに、カンに障る主人公達の叫び、騒音、主役2人の嫌らしいキャラクター……ああ、我慢ならない。あやうくもう少しで爆発するところだった。見終わっても、一体何の映画だったのか、さっぱりわからない。なぜ、何のために作ったのだろう。ボクには理解できなかった。

 それよりも、面白かったのは、たった14分の「ライアン」。これこそ見る価値がある。こちらが先に上映されるので、終わったらとっとと出てしまっても良いくらい。

 基本的にはフル3D-CGアニメなのだが、ドキュメンタリーなのだ。実際に撮った映像を3D-CGワールドの中でカリカチュア化して、再構築しているのだ。登場人物はスピルバーグの「A.I.」(Artificial Intelligencd: A.I.・2001・米)に出てきた、顔を半分失った乳母ロボットのようになっている。心に受けたダメージに応じて、さまざまに欠損しているらしい。インタビューする方、すなわち監督自身であるクリス・ランドレスもかなり欠損している。ほとんどフリークス状態。

 インタビューを受けるライアンという人物は、ライアン・ラーキンという人で、1968年に「歩く」というアニメを作りアカデミー賞短編アニメーション映画賞にノミネートされたという。ところがその後転落の人生を歩み、いまではトロントでホームレスとして暮らしているという。その激動の半生をクリス・ランドレスがインタビューするのだ。

 語っている声は本人だし、語っている内容も本人が答えたもの。そこに演出は加えられていないようだ。ただ、舞台や登場人物の見かけが3D-CGに置き換えられているのだ。かなり悲惨な話なのだが、仮想空間である3D-CGワールドで展開させることによって、悲惨さはかなり薄められている。むしろ滑稽ささえ漂う。うーむ、こういうドキュメンタリーがあったか。

 本作は第77回のアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞したという。まさに一見の価値ありだ。

 公開9日目の初回、渋谷の劇場は受付順番制なので、スタンプをもらってぶらりと時間潰しに出た。初回の前にモーニング・ショーで別な作品を上映しているらしく、15分前にもどってもまだ中に入れなかった。ロビーには15人くらいの人。ほとんどは20〜30代で、オヤジは2〜3人。男性10人、女性5人。

 間もなく開場となり、番号順に場内に入ると全席自由。初回なのにモーニング・ショーがあったので、場内は暖かい。場内アナウンスが途切れたり、変な音とが入ったりしていたが、無線の混線か。

 最終的には221席に30人くらいの入り。「ナッシング」だけならこれでもしようがないだろう。ただ「ライアン」はもっと多くの人に見て欲しい気がする。

 上映途中、フレームが揺れ動き、暗幕の方まで絵が動いた。スゴイ演出だなあ、どうやってやったんだろうと思っていたら、終映後アナウンスで「お見苦しい点がありましたことをお詫びします」だって。やっぱりあれは演出できないよなあ。


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