2005年10月1日(土)「シン・シティ」

FRANK MILLER'S SIN CITY・2005・米・2時間04分

日本語字幕:手書き書体下、林 完治/シネスコ・サイズ/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米R指定、日R-15指定)

74点


http://www.sincity.jp/index2.html
(音に注意。全国劇場案内もあり)

シン・シティはロアーク上院議員(ピーター・ブース)と兄のロアーク枢機卿(ルトガー・ハウアー)の兄弟によって支配される、まさに犯罪都市だった。ただし、娼婦街だけは協定があって自治を保ち、警察が踏み込んでくることもなかった。そんな中、ロリコンの殺人鬼、ロアーク上院議員の息子ジュニア(ニック・スタール)による誘拐事件が発生、ベテラン刑事のハーティガン(ブルース・ウィリス)は犯人を追いつめ、人質のナンシーを救出すると、二度と同様の犯罪が起こせないように犯人の下半身を撃ち抜いた。8年後、仮出所中の大男マーヴ(ミッキー・ルーニー)は高級娼婦のゴールディ(ジェーミー・キング)に優しくされ心を開いていたが、何者かにコールディが暗殺されしかも犯人の濡れ衣を着せられてしまう。

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 フランク・ミラー原作の同名コミックを実写でありながら劇画調に撮影し、モノクロ、パート・カラーで描き出した、過激なバイオレンス満載の男と女の悲しい群像劇。オムニバスに近い形式だが、それぞれの物語はケイティというストリップ・バーでつながるようになっている。全てがグリーン・スクリーン前で撮影されたという点では「スカイキャプテン ワールド・オブ・トゥモロー」(Sky Captain and the World of Tomorrow・2004・米/英)に近いが、本作の方が数段優れている。しかも、劇画調というこのやり方、暴力表現が半端ではないので、リアルな映像では描けなかったかもしれない。

 こういう表現は好みが分かれるかもしれない。リアルな表現を求める人には受け入れにくいだろう。また気分が悪くなるほどの残酷表現があり、それで引いてしまう人もいるに違いない。ボクは動く劇画という感じで、このファンタジー・ワールドを堪能できた。

 監督のロバート・ロドリゲスは、カット割りや画面レイアウトまでフランク・ミラー原作の同名コミックに忠実に映像化したらしい。心底「シン・シティ」の原作にほれ込んでいたロバート・ロドリゲスは、なんとしても映画化権を得るため、まったくハリウッド映画人を信用していなかったフランク・ミラーを説得するのにこの手法を選んだということらしい。しかも、ロバート・ロドリゲスはフランク・ミラーに共同監督までオファーした。詳しくは公式サイトのプロダクション・ノートを読んでいただきたいが、その情熱が通じて、みごと映画化権を獲得したと。

 それに加えて、ロバート・ロドリゲスが「キル・ビルVol.2」(Kill Bill : Vol.2・2004・米)の作曲をしたお礼にクエンティン・タランティーノが1シーンを監督したという。どうも、デジタル技術の凄いところをクエンティン・タランティーノに知って欲しかったというところが本当のようだが。

 とにかく出演者が豪華。クールな殺し屋ジョッシュ・ハートネット、孤高の刑事ブルース・ウィリス、特殊メイクで分かりにくいが狂気のベニチオ・デルトロ、モンスターのようになっている心優しき怪力男ミッキー・ローク、変態ロリコンのイライジャ・ウッド、悪徳刑事マイケル・マドセン、セクシー・ダンサーのジェシカ・アルバ、ケイティの美しいウエイトレス、ブリタニー・マーフィ、死刑から逃れる男クライヴ・オーウェン、ギャングの用心棒マイケル・クラーク・ダンカン……まるでオール・スター映画だ。

 デジタル技術が映画を大きく変えていくことは間違いない。ただ、現在のところ、それでも中心は人間の演技だ。人間が演じないと人間の感情に大きく訴えてこない。といいつつ、動きは生の人間から撮っているとしてもアニメのキャラクターは生の人間ではないし、CG映画も生の人間ではない。それでも充分感動できるのだから、そういうことにこだわる方こそおかしいのかもしれない。それは表現方法の違いというだけのことなのか。そんなことも考えさせられる映画。

 銃は男の殺し屋が使うのが、サイレンサー付きのガバメント・タイプのオートマチック。その後ドワイトが主役の話では、ヤクザのベネチオ・デルトロもクライブ・オーウェンもガバ・タイプを使うが、スチールをよく見ると、どうもコルトではなくオート・オードナンスの1911A1のようだ。

 ブルース・ウィリスが使うのは、S&Wの6インチ・リボルバー。357マグナムあたりだろうか。相棒のボブが持っているのは同タイプの2.5インチ。警察はマイクロ・ウージーなどを持っている。双子の娼婦が持っているのはシュラウド付きの2インチくらいの黒いリボルルバーで、どうもS&Wというよりブラジルのタウルスに近いような気がする。5連発だとすれば357マグナムのM605か、38のM85の可能性が。とすると、先の6インチもタウルスかも。

 オールド・シティの娼婦たちはフル・サイズのウージーなどで武装している。ボスのゲイルが持っているのは、どうやらスプリングフィールドのオートマチック、XDのようだった。金色の目をしたマイケル・クラーク・ダンカンが狙撃に使うのはオーストリアのアサルト・ライフルAUG 。ほかにもベレッタM92やらブラックホークやら、なつかしいデトニクスやらが登場する。

 どの銃も小道具に過ぎないので、じっくりと画面に出ることはなく、DVDで確認するしかない。本作はなかなかそれも楽しみとなりそうな感じだ。

 公開初日の初回、新宿の劇場は60分前に着いたら、すでに30人くらいの列ができていた。女性は5人。3人が20代で2人はオバサン。男性は下は中学生くらいからいたが(R-15なのに)、だいたい男性は20代が中心。中高年は10人くらい。

 50分前に50〜60人になった。すごいなあと思っていたら、なんと10/1は映画の日。土曜の初日と重なったので混んでいるようだ。そうかあ。当日券1,000円。前売りよりも300〜500円安い。

 20分前になってやっと開場。すでに列は劇場の角を曲がって先が見えなくなっている。100人以上か。初回のみペア・シート以外は全て自由で、10席×4列×左右の赤シートもOK。

 ステッカーとトレーディング・カードのプレゼントがあった。関係者もいたが2人くらいなので、ほとんど気にならなかった。これでいいんじゃないだろうか。くれぐれも団体では来ないで欲しい。

 最終的には1,064席に8.5割ほどの入り。さすが映画の日。やや女性の比率が増えた。

 予告編ではチェン・カイコーの新作、真田広之、チャン・ドンゴンが出ている「プロミス」が圧倒された。なんだ、あの絵の美しさは。チャン・イーモウの作風に似ているが、絶対見たい。「ジュマンジ」の続編「ザスーラ」はどうなんだろう。前作があれだからなあ。「ブラザー・グリム」はOK。見たい。なかなか怖そうでいい。ちょっと古いが「本当は怖いブラザー・グリム」って感じか。


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