日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク)/ドルビー
(西13、米R指定)
スペインのアルメニア地方は、かつてはマカロニ・ウエスタンが撮影されていたが、今では西部劇自体が作られなくなり、かつて撮影所があったところは「ハリウッド・テキサス」と名付けられて観光客相手のウエスタン村になっていた。ある日、そのウエスタン村の座長フリアン(サンチョ・グラシア)を訪ねて、孫のカルロス(ルイス・カストロ)がやってくる。ちょうどその頃、すでに観光客さえも訪れなくなりつつあったそのウエスタン村を買い取り、アメリカ人向けのテーマパークを建設する話が進んでいた。 |
現代でもマカロニ・ウエスタンが作れるんだということに先ず驚いた。アイディアの勝利。なるほどウエスタン・ショーか。実際、日本にも日光・鬼怒川にウエスタン村があるわけだし、ウエスタン・ショーも行われているのだから。本場のスペインなら、もっと無理がない。そして、なかなか面白い。 この映画のロケ場所は、本当に1960年代にハリウッドやイタリアの映画が盛んに撮影された地方で、中でも一番大きなオープン・セットがあるのが「ハリウッド・テキサス」なんだとか。つまり実在の場所だ。入場料は10ユーロ(約1,400円)。 実際のウエスタン村はそんなに寂れていないようだが、いかにもありそうなストーリーで、ついつい年老いたスタントマンのじいさんを 応援したくなる。ただ、どうにもウエスタンが好きだという情熱のようなものは感じられなかったから、監督はあまりウエスタン・マニアではないらしい。そこが最大の問題点だ。あまりウエスタンに愛情が感じられない。 どうも、町から離れたところにあるテーマ・パークなので、出演者の中にはウエスタンの格好をしたまま住み着いている人もいるらしく、それを面白がった監督がそこから脚本を書いたらしい。ウエスタンの、特にマカロニ・ウエスタンのファンをがっかりさせることはないと思うが、逆に琴線に触れて喜ばせることもまたないという感じ。色んな作品へのオマージュとか、郷愁のようなものが描かれていたら、傑作になっていたのではないだろうか。そして、そういう脚本であったなら、ラストで巨匠、本物のクリント・イーストウッドも1カットだけカメオ出演してくれたのではないだろうか。 もちろん、本当のマカロニ・ウエスタンをなぞっているところもあるが、早撃ちのテクニックとか名場面の再現とか、そうこうことは一切なし。せっかく子供が狂言回しとなって登場するのだから、ガンマンの心得10箇条みたいなことを教えるとか、名ゼリフを教えるとか、あっても良かったのに。監督にとっては、古いものが失われていくことや、ウエスタンのコミュニティというような部分が興味の対象だったのだ。もちろん、それはそれで面白いのだけれど。 のっけのテーマ曲は、どう聞いてもマカロニというエンニオ・モリコーネの「続・夕陽のガンマン」(Buono, il brutto, il cattivo, Il・1966・伊西)のパロディ(らしい)で、タイトルもマカロニによくあったポップ・アート調のイラストのパターンをもじったような作り。これは!と思わせてくれるが、ここただけで後は普通の面白いドラマになってしまうところが残念。 ヨーロッパ映画的な青春映画のようなしかけとして、女神のような娼婦がいて、少年に女性の扱い方を教えてくれる。「青い体験」(Malizia・1973・伊)などで有名な定番だ。この女性が、男のような女性出演者が多いなか、唯一のオアシスのような存在になっている。しかもヘア全開でがんばっている。すごいなあ。ちなみにじいさんの息子の嫁さん(不動産屋)はiMacとiBookを使っていた。 笑ったのは、ずっと縛り首の役で絞首台からぶら下がっているオヤジ。演じているのはエドゥアルド・ゴメスという人で、これがまたたマカロニに出てきそうな雰囲気。誰からも降ろしてもらえず、1日中ぶら下がっている。 いいのは、それぞれのキャラで銃(イタリア製のレプリカか)がちょっとずつ変えられているらしいこと。主人公のフリアンはオーソドックスな黒いグリップとグリップ・フレームで、いつも人の寸法を測っている葬儀屋はパール・グリップ付き。相棒のやられシャイアンはアイボリー・グリップ付き。ほかにも、ネービー・モデルなども使われていた。ライフルは、マカロニならもちろんウインチェスターM92。 ラスト、大爆発あり、特殊部隊突入ありの、現代っぽいアクション活劇となる。SWATは最初ゴム弾をガンガン撃ち込んでくるが、最後にはMP5K、M16A2まで投入。装甲車も3台突入してくる。ウエスタン村が用意したのは、スペインでは空砲ならいくらでも買えるが、許可がないと買えないという実弾800発。はたして結末は? 公開2日目の初回、渋谷の劇場は入口の分かりにくいオシャレビルは、10時にならないとエレベーターが止まらない仕掛けになっているらしい。しかもそのエレベーターが何カ所かにあり、どれが劇場へ行くのか分からない。 受付順での入場になるらしく、取りあえず前売り券を当日券に換え、15分前から入場になるというので、30分どこかで時間を潰さなければならない。スタバでコーヒーを買ってくることにした。 なんど上映は3館あるうちの一番小さい劇場。座席数は60席。もちろん指定席はない。スクリーンは我慢できるぎりぎりのサイズ。小さい。音質は悪くないが……。最終的には30〜35人くらい。女性が1人、20代くらいの男性が2〜3人。あとは全員オヤジ。まさにマカロニはこうだろうという感じ。 |