日本語字幕:手書き書体下、風間綾平/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル
かつてタイ軍の特殊部隊にいたナウィン(アムポーン・ラムプーン)は、食べていくために友人たちと銀行強盗をするが、失敗しパコン警察少佐(チャッチャイ・ブレンバーニット)に逮捕されてしまう。しかし護送途中に助け出され、政府のIMFへの借金返済政策に反対するグループからある仕事を依頼される。 |
とにかく撃つわ、撃つわ。タイ版「ヒート」(Heat・1995・米)とでもいうような感じ。2人の男は追う側と追われる側でありながら、どこか男気で惹かれるものがある。そして、ラストに見せた男の本当の心。おお、結構、感動的。ただ、タイの俳優さんたちはとても若く見え言葉もわからないので、なんだか学生たちの学芸会的に見えてしまうのが惜しい。 まったくのフィクションだと思うが、実際の出来事に巧妙に折り込んでおり、本当にこんなことがおきていたのではないかと思わせてくれるところもいい。 1997年にタイは通貨危機に陥り、IMF(世界通貨基金)から融資を受けるが、タイ経済は一向に回復の兆しを見せず、毎年、指導者が失脚し入れ替わるような状況。新しく誕生したタクシン政権は2年以内にIMFへの借金返済を宣言するが、これに反発する勢力が実力行使に出ると。実際、タイ南部の3つの県では現在でもテロが頻発しているという。 2003年にIMFへも返済し、日本へもちゃんと返済したと出るが、実際に返済されたわけで、その舞台裏にはこんな壮絶なドラマがあったのかもしれない。こういうアツイ男たちが国の屋台骨を支えているのだと思わせてくれる。はたして日本にはこんなアツイ男たちがいるんだろうか。 監督はタニット・チッタヌクンという人で、タイではアクション系を得意とする監督として有名らしい。多くのアクション映画もプロデュースしており、日本でも何本か公開されているのだとか。準備に半年かけたという、一番メジャーな大通りを閉鎖して銃撃戦を撮ることなんか、日本では絶対に無理だろう。弾丸が車のリア・ウィンドーを貫通し、運転席のヘッド・レストをかすめて、フロント・ウィンドーから抜けていくというような3D-CGも非常に自然に合成されていて、そのレベルの高さも素晴らしい。ヘリがビルにぶつかって街中に墜落したりもする。日本のアクション映画でここまでCGを使う作品はほとんどないのではないだろうか。 パコン少佐を演じるチャッチャイ・ブレンバーニットという人は、タイのTVや映画で活躍している人だそうで、本作ではほとんどスタントマンを使わずに演技しているのだという。それもスゴイ。ただ「死と隣り合わせのギリギリで撮影した」とか「すべて本当にやっています」というのを売りにするのはどうかと思う。それがエスカレートすると、誰か実際にケガをしたり死なないと迫力の映画は作れないみたいなことになってしまう。いまはCG合成が使えるのだから、安全に撮る方法があるものは絶対に一番安全な方法手で撮るべきだ。撮影が危険だったことを売り物にするのは恥ずかしいことだと思うが、いかがだろうか。「マッハ!!!!!」やこれから公開される「七人のマッハ!!!!!!!」はそれを売りにしているが……。 敵役のアムポーン・ラムプーンという人は、タイの伝説的なロック・スターだそうで、なかなかカッコいい。ロックのイメージからすれば当然、警察官の役は出来ないだろうし、かといって根っからのワルではスターにふさわしくない。ラストのラストでおいしいところをすべて持っていったというところだろうか。 銃器は概して使い古した古いものが多かったようだが、ピカピカの新品もあったようで、一部にはトイガンも使われているのではないだろうか。AK47、M16A1、M60マシンガン、ガバメントなどの定番に加え、ベレッタM92のオール・シルバーやフレーム・シルバー、たぶんXM177E2などのショート・カービン、といったちょっと珍しいものも使われている。 タイ警察の警察官の基本はS&Wのリボルバーのようで、刑事はベレッタM92を使っている。特殊部隊はやはりMP5で、M16A1に混じってたぶんHK33とか、SIG SG550なんて銃も登場する。一体のタイのガン事情というのはどうなっているのだろうか。日本人に銃を撃たせるツアーみたいになものもあるというし、割と緩いのかもしれない。 公開2日目の2回目、銀座の劇場は10分前に着いたらロビーに10人くらいの人。若い男性が2〜3人、オバサンが1人、あと中高年男性。まもなく入れ替えとなって場内へ。 130席全席自由(どの席からもスクリーンは見にくいから当然だろう)で、最終的には25人くらいの入り。よかった前の席に誰も座らなくて。 予告はエリザベス・ハーレーの「明るい離婚計画」が面白そうで、チータを野生に返す「ドゥーマ」もいいかも。「トレジャー・ハント」は古き良き時代を思い出す「スタンド・バイ・ミー」や「シティー・スリッカーズ」みたいでグッドかも。 |