2005年10月29日(土)「蝋人形の館」

HOUSE OF WAX・2005・米・1時間53分

日本語字幕:手書き書体下、稲田嵯裕里/ビスタ・サイズ(with Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

72点

(日R-15指定)

http://wwws.warnerbros.co.jp/houseofwax/
(全国劇場案内もあり)

大学生の男女6人は、週末の大学フットボールの試合を観るため2台の車に分乗して向かっていた。そしてカーナビで近道を探索し、山奥の道へ入っていった。暗くなってきたので山中で一泊することになるが、そこへ正体不明のビックアップ・トラックが現れる。翌朝、車のファン・ベルトが切られている。しかたなく歩いて近くのガソリン・スタンドを探しに行くと、小さな町があるが……。

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 いくらリメイクとは言え、いいかげん、この設定は止めたらどうだろうか。アホな大学生が車でキャンプに行って山奥に入り、サイコ・キラーに襲われるというパターンは。これは「13金」などのホラーもので使い古された設定で、まったくオリジナルの「肉の蝋人形」(Mystery of of the Wax House・米・1933)とそのリメイク「肉の蝋人形」(House of Wax・1953・米)と何の関係もない。かろうじて、人間を蝋人形の中に塗りこめてしまうという部分だけが同じか。ついでに言うと「肉の蝋人形」はイタリアでもリメイクされていて、「肉の蝋人形」(Maschera di cera・1996・伊)で日本公開されている。

 そのせいなのか、本作のほとんどの設定が色んな映画からのいただきのようで、双子の兄弟とか、奇形とか、人里離れた田舎町とか……もっと工夫してくれないとなあ。ただ、ラストのスペクタクルはすごい。こうなるとは予想がつかなかった。なかなかの迫力。これがあったので評価できるが、もしなかったら「キャビン・フィーバー」(Cabinfeaver・2002・米)と同じ駄作になっていたことだろう。

 たとえば奇形として生まれ、世間から隔絶されて育てられたとかという似た題材でも、「0:34レイジ34フン」(Creep・)ではロンドンの地下鉄という設定で、終電が行った後……という見せ方で古くささを感じさせない。こういう工夫が必要なのではないだろうか。それとも、アメリカの観客はバカな登場人物をバカにして、大いに盛り上がるのだろうか。これは確かに考えられることだけど……。

 ジョエル・シルバーとかロバート・ゼメキスら、ホラーのための製作会社ダーク・キャッスルのプロデューサーに問題があるのかもしれないが、脚本を書いたのはチャド・ヘイズとケアリー・W・ヘイズの双子の兄弟。それで、双子のサイコ・キラーという設定になったのか。これまでにTVで活躍してきた人達で、残念ながらタイトルを聞いてもさっぱりわからない。すでに3本の劇場向け作品が動いているというから、うまいのか、どうなのか。

 監督はジャウム・コレット=セラというスペイン生まれの人。1974年生まれの31歳。本作が劇場映画デビュー作だという。やはりこれまではミュージック・ビデオとコマーシャルを手がけていたらしい。CMは日本でもオン・エアされているらしい。すでに次回作が撮影に入っているというから驚きだ。本作はIMDbで5.3というありふれた評価なのに。ラストとの大団円が良かったからか。それなら納得できる。

 やはり本作の目玉は女性だろう。美女が脅されて逃げ惑い悲鳴を上げる。1人がTVドラマ「24」でブレイクしたナイス・バディで金髪のエリーシャ・カスバート。実は7歳からモデルで活躍していたという若きベテラン女優。残念ながら、本作撮影中にジャスティン・ティバーレイクのアシスタントとめでたく結婚したという。

 もう1人は、ヒルトン・ホテルで知られるヒルトン一族のご令嬢で、世間をお騒がせしてばかりいるパリス・ヒルトン。みごとな下着姿まで披露してくれているが、彼女の実生活から考えれば、この程度のことは何でもないだろう。

 脚本のせいでパッとしなかったヒーロー役のニックを演じたのは、チャド・マイケル・マーレーという人。「フォーチュン・クッキー」(Freaky Friday・2003・米)でジェイミー・リー・カーティスの娘役のリンゼイ・ローハンがあこがれる男の子の役をやっていた。実際には甘いマスクの二枚目で、本作ではニヒルなアウトローの雰囲気を出すために無精髭を生やしているが。彼も24歳という若さだが、本作撮影中に婚約し、2005年4月に結婚したのだとか。

 サイコな双子を演じたのはブライアン・バン・ホルト。なかなかいい味を出している。よく見る顔で、最近では「S.W.A.T.」(S.W.A.T.・2003・米)や「閉ざされた森」(Basic・2003・米)、「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米)などというメジャーな作品に良く出ている。たふん今後もたくさんのメジャー作品で見かけることだろう。

 ちょっと二枚目の優男で、エリーシャ・カスバートの彼氏を演じたのはジャレッド・パダレッキ。最初彼がヒーローなのかと思ったのだが、すぐにあっさりと殺されてしまう。TVで活躍していた人で、映画では「フフライト・オブ・フェニックス」(Flight of the Phoenix・2004・米)で遭難する石油会社の1人として出ていた。

 公開8日目の2回目、40分前についたら新宿の劇場はロビーに誰もいなかった。入れ替え20分前になって若いカップルが2組。15分前に若い女性の2人連れ、10分前にオヤジが3人来て10人くらいになった。最近ここの系列のサービスは低下しており、何の案内もない。観客が5前くらいに自主的に列を作った。この時点では40人くらいで狭いロビーがいっぱいになるくらい。これでも整列に来ないとは。

 開映15分前に入れ替えとなった。この劇場はどの席に座ってもだいたい前席の人の頭が邪魔になって見にくい悲しい劇場。いったんすわってから移動する人が多い。もちろん指定席はない。

 最終的には209席に6割ほどの入り。男女比は6対4で男性が多く、若いカップルが目立っていた。中高年は1/4くらいか。

 予告の「キューブ・ゼロ」はどうなんだろう。面白そうには見えるが、前作「2」がなあ……。ウォシャオスキー兄弟が手がけたという「Vフォー・ヴェンディエッタ」とチェン・カイコーの「プロミス」はかなり面白そう。


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