2005年10月29日(日)「キャプテン・ウルフ」

THE PACIFIER・2005・加/米・1時間35分

日本語字幕:手書き書体下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(日本語吹替版もあり)

74点

(米PG指定)

http://www.disney.co.jp/movies/captainwolfe/


アメリカ海軍特殊部隊シールズのシェーン・ウルフ海軍大尉(ヴィン・ディーゼル)は、通信を傍受できないようにする特殊なスクランブラー“ゴースト”を開発したハワード博(テイト・ドノバン)とそのプログラムを守る任務につくが、博士を暗殺されてしまう。しかしプログラムのありかは不明で、敵は次に博士の家族を襲うことが予想されたため、ウルフ中尉に特別任務が与えられる。子供は下はオムツの赤ちゃんから、高校生の娘まで5人。皆まったく言うことを聞かず、それぞれに問題を抱えていた。そしてそんなところに敵が襲いかかってくる。

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 内容はよくあるパターンで、先も読めるし、ありえない展開でお定まりのところにソフト・ランディングするが、面白い。なかなか笑えるし、わかっていても感動する。血なまぐさいものや陰気な話ばかりで辟易している時など、実に爽やかな明るい気持ちになれる、一服の清涼剤のような映画。確かに軽いが、こういう映画がないと息が詰まる。お金を払うのだから、たまには笑顔で劇場を出たい。

 分かり切った話をどう面白く見せるか。1つにはキャラクターが魅力的であることだろう。有名俳優が演じ、なおかつ憎めない性格、愛すべきエピソードがあることなどが必要で、これはなかなか難しい。たぶんほんのちょっとした違いで、反発を感じたり親近感を感じたりするのだろう。本作はそれに成功している。

 子供たちも、なかなか言うことを聞かないし、逆らってばかりだが、基本はやっぱり素直な子ばかりで、この辺も良い。ギリギリで憎たらしくなるのを避けている。これもうまい。ある程度仲よくなるのが難しい子供たちでなければ、話自体がつまらなくなるし、ウソ臭くなってしまう。わがままと素直の微妙なバランスが絶妙なのだ。

 面白いのは、子供ばかりの家庭に軍隊式の規律を持ち込むと、意外にイケルということ。家族全体をトゥループスとかカンパニーと呼び、乳母をレッド・リーダー、長女から順にレッド1、レッド2……一番下の赤ん坊をレッド・ベイビーと名付ける。これも笑えたが、早寝早起き、家の掃除など家族を1つにまとめるのにも軍隊式は有効のようだ。最後にはみんなで部隊の歌みたいなものを作って歌う。

 アメリカのTV番組で、まったく生活スタイルの違う家族の母親か父親を1週間だけ交換する番組があるが、ちょうどあんな感じか。前半は交換された母親か父親がその家族に合わせるが、後半は家族が交換された母親か父親に合わせる。なかなかよそ者のルールには生活習慣は合わせられないということもあるし、まったく違うルールで家族の関係を見直すこともあるという番組だ。あれをヒントにしているような気もした。

 ヴィン・ディーゼルはマッチョで、いかにも特殊部隊員という感じ。それでいて画面からはスターぶったというか、気取った感じが伝わってこないので、とても魅力的に見える(実際にはちょっと違うらしいが)。こんな家族がいたら楽しいだろうなあと。ただし、彼の位はキャプテン(海軍大佐)ではなくルテナン(海軍大尉)。まあ隊長的な意味でのキャプテンなんだろうけど、原題の「PACIFIER」は「おしゃぶり」のこと。これじゃ日本ではウケないだろうから、キャプテン・ウルフにしたのだろう。確かにわかりやすい。

 アメリカではPG指定(子供には不向きな場面があり、親の指導を望む)というもので、ほとんど誰でもOKのGと対して変わらない。日本版では吹替版もあるし。だから、隣の韓国人夫婦がなぜかニンジャの格好で攻撃を仕掛けてきても、だれも血を流さないし、死なない。気絶はするが、銃撃戦があっても、血は出ない。

 ちなみに、ウルフが使っているのはパナソニックのタフブック、次男はiMac。なぜこういう設定なのかよくわからないが、イメージではそんな感じはする。

 銃は、韓国人夫婦がP226とデザート・イーグル。敵のボスはUSPのスライド・シルバー。そして突入部隊の中にはP90にライトやら何やらをつけたものがあったような気がしたが……。

 監督はアダム・シャンクマンという人。日本では公開劇場の関係かあまりパッとしなかったが、アメリカではヒットした「ウェディング・プランナー」(The Wedding Planner・2001・米)を監督している。IMDbでは5.2という低評価だが、この作品以後続々と新作が決まっている。興行的にはいい結果だったのだろう。

 公開初日の3回目、字幕版の初回、入れ替え10分前に着いたら、ロビーには劇場両サイドで40〜50人くらいの人。意外に多い気がする。しかし案内はなく、やはり「蝋人形の館」の劇場と同じ系列なので、まったくなっていない。出てくる人がいると、途中で待ちきれず中に入ってしまう人もポツポツ。

 5分前くらいに自主的に列ができたものの、案内がないため、何人か出て来たらドッと先頭の10人くらいが入ってしまった。場内が明るくなったようなのでなし崩し的に入場。通常は指定席があるが、決して指定席だからといってみやすくはないこの劇場、今回は指定席なし。

 763席に50〜60人の入り。あらら。男女比はほぼ半々で、老若比も半々といったところ。自販機のコーヒーを買ったら紙コップの外側がベトベト。一体どうなっているんだろ。

 2本続けて血なまぐさいものを見た後だったので、とにかくほっと落ち着く作品だった。予告編は、評判の芳しくなかった「スバイ・キッズ3D」の続編。またまた3Dで完全に子供向きの作品だ。こりゃパスだな。


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