日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/ビスタ・サイズ(technovision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS
(米PG-13指定)
1796年、グリム家では家族で食べるものがなくなり、牛を売りに行った次男のジェイコブはだまされて魔法の豆と交換してしまい、病気の妹を亡くしてしまう。15年後、成人したジェイコブ(ヒース・レジャー)とウィル(マット・デイモン)のグリム兄弟は偉大な魔術師という触れ込みで、インチキな悪魔払いなどをやって生計を立てていた。そんなある日、デラトンベ将軍(ジョナサン・プライス)に秘密をあばかれ、少女が連続してさらわれているというドイツのマルバデン村に行ってインチキを暴いてくれば命を助けてやると言われるが……。 |
なかなか面白い。新説グリム兄弟というようなイメージだが、実際にはピーター・ジャクソンの傑作「さまよう魂たち」(The Frighteners・1996・ニュージーランド/米)と構成はまさに一緒。インチキ霊媒師が本物の事件に巻き込まれ、それまでの罪を解消するような大活躍を見せて見事に事件を解説するというもの。その根幹にグリム童話という味付けを施した感じ。しかもコメディ・タッチで、実際の事件では本気で怖がらせ、SFXも驚異的な大迫力……そこまで一緒だからか、観客を映画に引き込む力を持っている。 というわけで、決め手は味付けの妙という部分になる。この辺でオリジナリティと面白さを出していかなければならない。 まず、配役。グリム兄弟の兄ウィルを演じるのは、「グッドウィル・ハンティング/旅立ち」(・1997・米)でブレイクしたマット・デイモン。実はハーヴァード大学卒のエリート・インテリ。「クラークス」(Clerks・1994・米)や「ドグマ」(Dogma・1999・米)などで知られるケビン・スミスと親交が深く、彼の毒の強いアクション・コメディ「ドグマ」や「ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲」(Jay & Silent Bob Strike Back・2001・米)などに出演し、コメディ・センスがあることは証明済み。特に驚くほどの配役ではないだろう。 一方、弟のジェイコブを演じたのは、メル・ギブソンの感動巨編「パトリオット」(The Patriot・2000・米)や「サハラに舞う羽根」(The Four Feathers・2002・米/英)の二枚目、ヒース・レジャー。しかし、やっぱり「Rock You![ロック・ユー!]」(A Knight's Tale・2001・米)というアクション・コメディ(あえてこう呼ばせていただこう)に主演しているので、こちらも実はコメディがいけることは証明済み。妥当な線だろう。 そして、何より本当の敵となる鏡の女王に、イタリアの宝石と呼ばれる、「マレーナ」(Malena・2000・伊/米)や「スパイ・ハウンド」(Agents Secrets・2004・仏/伊/西)のモニカ・ベルッチ。この怪しげな雰囲気が、色仕掛けでいろいろ仕掛けてくる魔女にピッタリだ。 当時ドイツを支配下に置いていたフランスの将軍には「未来世紀ブラジル」(Brazil・1985・英/米)や「007/トゥモロー・ネバー・ダイ」(Tomorrow Never Dies・1997・米)のジョナサン・プライスイ。強いのか弱いのかよくわからない頼りない将軍を好演。 その配下の怪しい将校を演じたのは、恐ろしい映画「ファーゴ」(Fargo・1996・米)や「URAMI〜怨み〜」(Bruiser・2000・米)のイヤな上司、「コンスタンティン」(Constantine・2005・米)のサタンなど、ねちっこい役を演じていたピーター・ストーメアという人。下半身をさらすくらい何ともないという体当たり派でもあるようで、何をやるかわからない怖さがある。だいたい悪役が多いのだが。 紅一点、村の変わり者の女アンジェリカがレナ・ヘディ。ジェイソン・スコット・リーが出たスティーブン・ソマーズ監督の「ジャングル・ブック」(The Jungle Book・1994・米)でヒロインを演じていたらしいが、まったく記憶にない……映画自体印象が薄いが。作品がパッとせず、以後の作品もいまひとつといった感じ。やはり良い作品に恵まれないとスターにはなれないということか。 監督はTVの「モンティ・バイソン」で知られるテリー・ギリアム。劇場作品では「バンディッドQ」(Time Bandits・1981・英)、「未来世紀ブラジル」、「バロン」(The Adventures of Baron Munchausen・1989・米)、「12モンキーズ」(Twelve Monkeys・1995・米)、などが有名。そのティストは、本作も含めすべてに一貫している気がする。本作の前に「ドン・キホーテを殺した男」を撮っていたのが、トラブルが重なってついに企画自体がなくなってしまったらしい。そのダメになって行く過程を収めたメイキング「ロスト・イン・ラマンチャ」(Lost in la Mancha ・2001・米/英)が2003年に日本で劇場公開された。たしかDVDも出ていたはず。「未来世紀ブラジル」を撮った時のスタジオとの戦いを詳しく記した本も出しており、なかなか商売上手(したたたかと言うべきか)なところも持ち合わせている。 公開初日の初回、60分前に着いたら新宿の大劇場はオバサンと20代の男性と2人だけ。あれ、話題になっているのでは……? 45分前になったら、それでも20人くらいに増え、40分前には30人くらいに。1/4が20〜30代で、あとは中高年といった感じ。女性は全体の1/4くらい。 さすがに25分前になると列も長くなり劇場の角を曲がってしまったが、まだ開かない。やっと案内があって、整列させられた。最近のこの劇場の系列は良くない。バイトとはいえちゃんと教育しなきゃいけないんじゃないかなあ。 20分前になってやっと入場。入場者プレゼントがあって、前売り券を買うともらえた手品の小箱が配られていた。売れ残ったということか。場内はスーパー・ペア・シート以外全席自由。最終的には若い人達がちょっと増えて、全体の1/3くらいになっただろうか。1,064席に6〜6.5割程の入り。これは上々ではないだろうか。 最近、画質の良くないビデオ予告が増えてきたような気がするが、あまり印象が良くないと思う。TV で使う分には画質の差は感じられないのだろうが、劇場の大きなスクリーンにかかると一目瞭然。イメージ・ダウンになってしまう。クォン・サンウの「美しき野獣」とか「ザスーラ」がビデオ予告で、「プロミス」などが色彩も大変美しく画質も最高のフィルム予告だから、余計に悪い方が見劣りしてしまうのだ。そんなに予算が無くなってしまったんだろうか。ビデオも処理の仕方によってはフィルムにせまる画質にできるはずなのに…… |