日本語字幕:手書き書体下、石田泰子/ビスタ・サイズ(1.85、OTTO)/ドルビーデジタル
(独12指定、米PG-13指定)
弁護士の依頼を受けて法的書類を該当者に届ける通達人の仕事をしているジョー(マシュー・ペリー)の新しい仕事は、$5,000でテキサスの牧場王ゴードン(ブルース・キャンベル)の妻サラ(エリザベス・ハーレー)に離婚通知を届けること。ニューヨークの実家に帰っていたサラに、どうにか離婚通知を渡すことに成功する。しかしサラは州によって離婚の財産分与が違い、夫の申し立てではテキサスの法が適用され夫の有利になり、妻から申し立てればニューヨークの方によって半々となることを知り、財産分与の中から100万ドル払うから、夫からの離婚通知は受け取らなかったことにして自分からの離婚通知を夫のゴードンに届けてくれるように依頼する。 |
笑った。面白い。たわいもないマンガみたいな話だが、ついつい引き込まれてハラハラしながら楽しんでしまった。2002年という古い映画で、しかもIMDbで4.6という低評価だが、ボクは堪能した。 冒頭の007映画のパロディなど、特に笑わせてくれる。マシュー・ペリーはタキシード姿で現われて、名前を聞かれるとぬけぬけと「ボンド、バリー・ボンド」などと答えるのだ。そして定番であるカジノでのカードを使った敵との対決もやってみせる。しかも、なかなかサマになっている。ボンドっぽい。真剣に作っている風で、だから笑える。キャラクターも良いし、出演者も良いし、映画全体の雰囲気もいい。そしてなにより脚本が良い。 脚本を手がけたのは、TVドラマの脚本家で本作から劇場映画にデビューしたジェイ・シェリックと、彼とコンビを組むデビッド・ロンの2人。本作から次々と軽めのコメディを書いているが、エディ・マーフィーはもうダメじゃないかと感じさせた「アイ・スパイ」(I Spy・2002・米)、マーティン・ローレンスのイタいアクション・コメディ「ナショナル・セキュリティ」(National Security・2003・米)、ボクは機内上映で見たアシュトン・カッチャーの白人と黒人の結婚ドタバタ「ゲス・フー 招かれざる恋人」(Guess Who・2005・米)……とコメディなのに悲しくなるような作品が続く。初めての映画ということで、気合いが入っていて、人の意見も良く聞いていたということだろうか。「ゲス・フー……」はちょっとしんみりさせてくれたけど……。 とすれば監督が良かったのか。レジナルド・ハドリンはハーバード大学出の秀才で、在学中に撮った短編が高く評価され、それを基にした「ハウス・パーティ」(House Party・1990・米)で劇場映画デビューしたらしい。未見なのでなんともいえないが、その後がエディ・マーフィの「ブーメラン」(Boomerang・1992・米)。あまりに前評判が悪くて見ていないんだけど、IMDbでも5.1と低評価。本作以降テレビに行ったというような話だが……。 ということは、出演者の功績が大きいかもしれない。マシュー・ペリーは、あやうくベン・スティーラーやアダム・サンドラーみたいに日本では受けない俳優になってしまうところだったが、TVの「フレンズ」が良かったのか、「隣のヒットマン」(The Whole Nine Yards・2000・米)シリーズが良かったのか、まだそうはならずにいる。本作でもドタバタをやりすぎず、ギリギリのところで抑えているのが良かったのではないだろうか。 何といっても最大の功労者はエリザベス・ハーレーだろう。本当にイギリス生まれだが、いかにもイギリス女性ッぽい発音がグッド(よくわからないが、そんなふうに聞こえた)。何といっても美女だし、もとヒュー・グラントの恋人で、彼の主演映画ながら「ボディ・バンク」(Extream Measures・1996・米)のプロデューサーを務め、「オースティンロパワーズ」(Austin Powers : International Man Mytery・1997・米)ではコメディエンヌとしての才能も発揮し、「悪いことしましョ!」(Bedazzled・2000・米/独)ではセクシーな悪魔まで演じている。ただ最近あまり名前を聞かないのが気になるが……。ヒュー・グラントと映画制作会社まで作って、別れてどうなってしまったんだろうか。本作は2002年製作だし。 サラと別れようとしている夫を演じているのはブルース・キャンベル。サム・ライミ監督の高校時代からの友人だそうで、「死霊のはらわた」(The Evil Dead・1982・米)から「スパイダーマン」(Spider-man・2002・米)まで多くのサム・ライミ作品に出演しているが、何といっても強烈だったのは「キャプテン・スーパーマーケット」(Army of Darkness・1993・米)ではないだろうか。チェーンソウとショットガンを持って暴れ回る姿が頭にこびりついて離れない。笑いもタップリのアクション・ホラーだった。そのくせ者が、一方的に別れようとする夫で、テキサスの牧場主ときた。その牧場を買い取ろうとするのが日本人。これは2002年だからかもしれない。いまだったら、たぶん日本人は金がない。 この夫が雇う危ない男が持っているのが、デザートイーグルという強力なオートマチック。そしてつま先に毒蛇(たぶん)の頭がついたブーツを履いているのだ。これがまた絵に描いたような悪役でいい。 マシュー・ペリーの同僚にしてライバルの男トニー(ヴィンセント・パストール)もいい。そしていい加減なボス、レイ(セドリッグ・ジ・エンターテイナー)もまたいい。もう1人の美女ケイト役のエイミー・アダムスも胸を動かして見せる(本物?)など、とにかく笑わせてくれる。 そして、ラスト。やっぱりファンタジーはキスで終わらないと。まるでおとぎ話だね、コリャ。ちゃんと最後にTHE ENDって出るし。こういう映画って、あんまりなかったなあ。映画らしい映画。作り事。でも、たまにはこういう映画を見て、単純に楽しまなくっちゃ。 公開初日の初回、銀座の劇場は20分前についたらちょうど開場したところ。指定席なしの場内にはオヤジ4人、若い男性1人、オバサン1人。スクリーンはビスタで開いていた。最終的には177席に30人くらいの入り。この劇場ではゆったり見られてちょうどいい。それにしても、前からだがピントが甘い。 |