日本語字幕:手書き風書体下、石田泰子/シネスコ・サイズ(レズン、in Panavision)/ドルビーデジタル
(英15指定)
ジョー(ダニエル・クレイグ)とクレア(サマンサ・モートン)が郊外の丘で高価なシャンペンのボトルを開けようとした時、風に飛ばされた気球が現われる。中には小さな少年が載っており、老人が必死に止めようとして引きずられていた。付近にいた数人とジョーが手伝って気球を止めようとするが、突風が吹いてそらに持ち上げられてしまう。ほとんどの人は手を放すが、1人だけ手を放さずかなり上空までいったところで力尽き落下して死亡する。事件に責任を感じて悩むジョーの前に、事件の時一緒に気球を降ろそうとした男、ジェッド(リス・エヴァンス)が現われ、あのことについて正直に告白しろと迫る。 |
うーん、これがイギリスらしい暗さか。話としてはもっと面白くなる要素をたくさん含んでいるというのに、予算が足りなかったのか、狙いなのか不明だが、主人公の心の葛藤にばかり焦点を合わせ、観客はとてもストレスがたまり、イラつかせられることになる。それでも最後にカタルシスが待ち受けているのならそれを我慢する価値もあるのだが、こういう終わり方ではやりきれなさが残る。なんか気持ち悪くなった。胃の具合が悪かったら吐いていたかも。そんな感じ。 たぶん、同じ設定で、もしかとたら同じ脚本でも、ハリウッド系の監督が撮ったら(演出力があればだが)とてもおもしろいエンターテインメントになるような気がする。シノプス(プロット)は面白い。展開も予想がつかない。そして怖い話になっている。 広告ではヒッチコック……というような謳い方をしていたようだが、実際にはヒッチコック作品とはまるで違う。ただ使われている曲が似ているというだけ。意外な展開はヒッチコック風かもしれないが、テイストが違う。これをヒッチコック風と呼んでいいものだろうか。 原作は小説家で脚本家でもあるイアン・マキューアンの小説「愛の続き」。ベスト・セラーということで、脚色か監督に問題があったかも。ただ、自身でプロデューサーをやっているから、作風は決定できたはずで……ちなみに脚色はジョー・ペンホールという人。彼の「Blur/Prange」(2000〜2001)の舞台での演技と脚本が高く評価されたことから、それが本作への起用につながったのかもしれない。 監督はTV出身で、ヒュー・グラントとジュリア・ロバーツのラブ・コメディ「ノッティング・ヒルの恋人」(Notting Hill・1999・英/米)で高い評価を得たロジャー・ミッチェル。ただし、その後に撮った作品がサミュエル・L・ジャクソンとベン・アフレックの出たあの不快な映画「チェンジング・レーン」(Changing Lanes・2002・米)だからなあ……。「ノッディング……」は例外で、もともとこの人は観客に不快に感じさせるのを得意にしているのかも。 主演は、次のジェームズ・ボンド役に決まったダニエル・クレイグ。「トゥームレイダー」(Lala Croft : Tomb Raider・2001・英/独/米/日)で、ララの恋人を演じた人。その婚約者には、スピルバーグの「マイノリティ・リポート」(Minority Report・2002・米)でプリコグを演じたサマンサ・モートン。謎の男を演じたのは、「ノッティング……」でヒュー・グラントのルーム・メイトを、スポ根もの「リプレイスメント」(The Replacement・2000・)でタバコ好きな元サッカー選手を演じたリス・エヴァンス。 2人の友人で相談相手のロビンを演じたのは、「ラブ・アクチュアリー」(Love Actually・2003・英/米)で老ロッカーを演じたビル・ナイ。ちょっとどこか危ない感じを持っているところが良い。 ラスト、意外な展開となり、さらに駄目押しのエンディングが。ただ、それをどう理解すればいいのか。これは希望のない終わりなのか、それともいい結末なのか。よくわからない。観客任せということとなのか。うーむ。どう解釈するかによって評価も変わってくるかもしれない。 ついでながら、自宅の食事で「チリ・ソース? ソイ・ソース(醤油)?」と聞くシーンがある。イギリスの一般的な家庭という設定だから、醤油はイギリスでも浸透しつつあるのかもしれない。アメリカでは20年くらい前から、結構田舎でもドライブ・インなどには置いていたが。 公開初日の2回目、銀座の劇場は全席指定なので、ゆっくりと10分前に着いたら場内は4〜4.5割ほどの入り。イスと内装が変わったものの、あいかわらずどの席からもスクリーンが見にくい。何で座席を千鳥配列にしなかったのだろう。とにかく前席の人の頭が邪魔になる。字幕は下に出るから読めないのだ、ここは。せめて千鳥配列にすれば良かったのに。そして床に傾斜を付ければもっとましな劇場になったものを、残念だ。 ロビーになにやら関係者らしい若い女性陣が7〜8人。評論家先生が来たのか声を合わせて「よろしくお願いします」などと言っていた。なんなんだろ。 最終的には192席に6.5割ほどの入り。男女はほぼ半々で、ほとんどは中高年。地味な作品でスターも出ていないから、若い人は見に来ないかな。 |