ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル
1972年、民俗学を専攻する大学院生の佐伯美里(藤澤恵麻)は小学1年生の夏の記憶が失われており、最近そのことに関連した夢を見ることから、小学1年生の夏を過ごした東北の隠れキリシタンの里、渡戸村へ取材に行くことにする。そしてそこで美里は、妖怪は実在するなどと主張して学会を追放された稗田礼二郎(阿部寛)と出会う。2人で神隠しについて村人たちにはなしを聞くうち、16年前に美里と一緒に神隠しにあって発見されなかった少年、新吉が同時の姿のまま現われる。 |
直接作品とは関係のないビジュアル(ポスター、チラシ、前売り)を使ったイメージ戦略の勝利かも。実際のところ、そのイメージ(磔になったような外人女性)は映画には登場せず、むしろもっとレトな(というか古い感じの)地味な印象。 やはり音で脅すタイプで、それほど怖さはない。怖さというよりは不思議感で、そのファンタジーを味わい、ある種の謎解きを楽しむもののようだ。ただし、ラストで主人公自身が語っているように、「一体あれは何だったのか。謎は謎のまま残った」というのでは、観客も同じ感想を持ってしまう。ただ、16年前の夏の神隠し事件がどんなものだったのかがわかるだけ。それはそれでもいいのだが、何か足りない感じが残る。ここが残念。 それにしても、なぜ舞台設定が現代ではなく1972年なのか。山奥の片田舎なら30年くらい前と現在とたいして変わらないから、時代感を描きようがない。「三丁目の夕日」じゃないんだから。日本列島改造とか、ディスカバー・ジャパンとか、物語とはあまり関係ないようだし。むしろ現在の話にして、昔のままに残っている村があって、時代から隔絶された感じというか取り残された感じが出ていた方が良かったのではという気がした。 主人公は、NHKの朝の連ドラ「天花」出身だそうで、もともとは大学在学中に雑誌「ノンノ」にモデルとしてデビューしたらしい。とてもかわいらしい女性で、本作でもそれが現われている。たただ、残念なのは、稗田礼二郎を演じる阿部寛。ほとんど活躍の場がない。あちこち引っ張りだこで、時間が取れなかったということかもしれないが、この程度では他の人が演じても同じだったのではないだろうか。むしろ、もっと活躍する役にすれば魅力的になっていたかもしれない。そして、彼を主人公としたシリーズものが出来たかもという感じ。ちょっともったいない。 原作は読んでいないのだが、諸星大二郎の少年ジャンプに連載の人気漫画「妖怪ハンター」の1本、「生命の木」だそうで、主役というか語り部が稗田礼二郎なんだとか。やっぱりね。「妖怪ハンター」で思い出し調べてみたら、なかなか面白かった「妖怪ハンター ヒルコ」(1991・日)も諸星大二郎の原作だった。こちらは稗田礼二郎を沢田研二が演じ、かなり活躍していた。 公開2日目の初回、新宿の悲しい劇場は45分前に着いたら誰もいなかった。35分前になってオヤジが1人。30分前になって開場したが、この時点では3人ぽっきり。その後、ポツポツとオヤジが入ってきて、ときどき30代くらいの若い男性もという感じ。 最終的には272席に40〜50人の入り。ここも前席の人の頭が邪魔になって字幕が読めない劇場なので、これくらいの混み具合がちょうどいい。20代くらいは10人ほど。若い女性は2人くらい。オバサンは数人。 広さはそこそこの劇場なのに、本当に惜しい。床に傾斜をつけて、カップ・ホルダー付き座席を千鳥配列し、デジタル音声対応にしてくれたら……。 リールが変わってからか、センター付近が後半からピンボケに。疲れる。もっとしっかりしてくれ。 それにしても、「シルバー・ホーク」の予告の画質は酷い。これでは見る気をなくしてしまう。もっと予告編には気を遣うべきではないだろうか。これだったらインターネット予告の小さな画面を見た方が良い。 |