2005年11月26日(土)「イントゥ・ザ・サン」

INTO THE SUN・2005・米・1時間34分(IMDbでは独版97分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、風間綾平/ビスタ・サイズ(1.85)/ドルビーデジタル、SDDS

(米R指定。日R-15指定)

70点


http://www.sonypictures.jp/movies/intothesun/index.html
(全国劇場案内もあり。入ったら音に注意)


東京で、一部の外国人を排斥しようとする都知事候補が暗殺された。テロと関係ありとにらんだFBIはCIAに協力を依頼。CIAの在日エージェント、ブロック(ウィリアム・アザートン)は、日本生まれのCIAエージェント、トラビス(スティープン・セガール)をFBI捜査官ショーン(マシュー・デイビス)と組ませることにする。捜査を開始した2人は、やがて事件の背後に中国マフィアと手を組む日本の新興ヤクザ組織が関係していることを突き止める。

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 うーん、やっぱりもうスティープン・セガールはダメじゃないのか。すっかり太ってしまって、本作ではそれを隠すためか、彼だけ顔に影が出来るような照明を当てている。目だけに光が当たっている感じ。これなら吹替をつかってもバレにくいし、顔の下膨れになってしまった部分も隠せるかもしれない。肉体派の俳優がこういうことではいけないのではないだろうか。もちろん、肉体派と呼ばれることが嫌で、演技派になりたいということもあるのだろうが、たぶん観客はそれを期待していない。

 さらにいけないのは、ストーリーがあまりにも安直。しかもストーリーはスティープン・セガール自身が考えていて、プロデューサー、作曲まで兼ねているんだから、これはもうワンマン映画に近い。まっ、最初のヒット作「刑事二コ/法の死角」(Above the Law・1988・米/香)がそうで、それからずっとなわけだが……。

 一番気になったのは、なぜ日本国内の事件にテロがからんでいるとは言え、米国内の犯罪を扱うFBIがでてくるのか。CIA=中央情報局ならわかるがFBI=連邦捜査局とはねえ。平気で日本語と英語で会話するし。

 でも、おもしろいのは、実際に日本で暮らしていたアメリカ人がが日本を舞台に(本当に東京で撮影している)、比較的正確に日本を描写していること。日本の美しさ(桜は絶品)が結構とらえられているし、チャンバラもあるし格闘技もそこそこある。もちろんドンパチもたっぷり。ただ、どこまでセガール本人がやっているのか。

 日本人俳優はそれこそたくさん出演していて、有名な人では、まず新興ヤクザのボスが大沢たかお。礼儀をわきまえず、仁義すらろくに守らない残虐な悪党を、リアルに演じて見事。セガールに協力する財界の大物が寺尾聰。セガールと一緒に殴り込みを掛ける刺青師に豊原功補。六本木のキャバレーのコメディアンがコロッケ。大沢たかおに対立する組織の親分が伊武雅刀。チワッとしか出ていないが、知事候補者の娘が栗山千明。

 アメリカ側の出演者は、CIAの上司に「ダイ・ハード」(Die Hard・1988・米)の嫌われ者レポーター役のウィリアム・アザートン。セガールと一緒に事件の捜査に当たるFBIエージェントに潜水艦ホラー「ビロウ」(Below・2003・米)で若き乗組員を演じたマシュー・デイビス。

 ほかに香港からジャッキー・チェンのスタント・チームに所属するケン・ローが、中国マフィアのボス役で出演している。最近では「香港国際警察」(New Police Story・2004・香/中)に出ていた人。過去に「マッスルヒート」(2002・日)で日本映画にも出演している。

 指を詰めたり(あいくちだけで骨まで切るのはかなり困難だと思うが)、腕が落ちたりと、残酷なシーンも多いので気の弱い人は注意が必要かも。

 トラビスが結婚を申し込むナヤコ(スティープン・セガールが見いだした日本人女優らしい)が暗殺されるシーンで、トラビスがその場にいないにも関わらず「トラビス、アイ・ラブ・ユー」と言って息絶えるのには周りから失笑がもれていた。名前を呼ぶだけならまだしも、アイ・ラブ・ユーってあなた。学芸会じゃないんだから。

 ほとんどのガン・アクションは規制の関係もあってタイで撮影されたらしい。築地での襲撃シーンはベレッタM92Fとグロックが出て来たが、撃っていなかったと思うのでトイ・ガンだろう。ちゃんと発砲するシーンでもグロックとM92Fは使われていたが、M92Fにはシルバー・モデルも混じっていた。そして、冒頭のタイの麻薬組織を特殊部隊が襲撃するシーンではMP5SDシリーズやM60マシンガンなどが使用されていた。

 エンド・クレジットで特殊メイクに原口智生の名があった。また、ついでながらソニー・ビクチャーズということでか、アイボも登場。バソコンはアップルで、iMacも使われていた。

 公開初日の初回、銀座の劇場は50分前に着いたら誰もいなかった。35分前に開場した時でもオヤジが2人に、20代後半くらいの女性が1人。なぜか2席だけ白いカバーの席があったが、この劇場はどこに座っても前席の人の頭が邪魔になってスクリーン(特に字幕の出る下のほう)が見えないというのに、別料金を取るのか。前の席に誰も座らせないというならその価値はあるかもしれないが、中央の通路側だけに前席に背の高い人が座ろうものなら、横にズレることも出来ず最悪なことになる。それにお金を払う? ここで見たことがない人なら、知らずに買ってしまうかもしれないが、二度と買わなくなるだろう。内装ばかりいじらずに、床の傾斜や座席(千鳥配列とか)を改善すればいいのに……。

 20分前になって、25人くらいに。若い女性が3人、中高年の女性1人のほかは男性。老若比は半々。 人が前の席に座ると移動する人が多い。ボクもサイドへ行かざるを得なかった。よくこれで何十年もやって来れたものだと感心する。

 最終的には270席の4割程が埋まった。意外に女性もいたのは、たぶん大沢たかおのファンだろう。タイトルに「向望太陽」とかという漢字が出たが、中国語だろうか。香港映画のように見せかけるためなのか。よくわからなかった。


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