2005年11月29日(火)「ダブルマックス」

THE BODYGUARD・2004・タイ・1時間40分

日本語字幕:手書き風書体下、林完治/タイ語監修:鹿野健太郎/ビスタ・サイズ/ドルビーデジタル

レイト・ショー

70点


http://www.klockworx.com/dm/
(全国劇場案内もあり。ただし情報少)


タイの大富豪が、企業提携パーティの席上で何者かの襲撃を受ける。ボディガードのウォンコム(ペットターイ・ウォンカムラオ)は必死で守ろうとするが、かいなく社長は射殺されてしまう。その結果、財閥グループは1人息子のチャーイチョンが受け継ぐことになる。それを快く思わないグループの重役の1人は、高速道路でチャーイチョン殺害を企み襲撃するが、チャーイチョンはたまたま通りがかったゴミ収集車の中に落ち難を逃れる。同じ頃、ウォンコムもまた襲撃を受けていたが、激しい銃撃戦の末、全裸で逃げ出したため警察に逮捕され精神病院に収容されてしまう。

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 日本の目が肥えた観客からすると、稚拙に感じるかもしれない。全体の作りが安直に見えてしまう。しかし、フィルム撮影の絵は色が良く載っており、高画質。しかも音声はドルビー・デジタルで高音質だし、ちゃんとサラウンドで音も良く回っている。さらに実銃ベースのプロップ・ガンを使った銃撃戦や肉体を駆使したスタントは迫力があるし、CG技術も一流レベル。まったく違和感はない。つまり。ちょうど香港映画が台頭してきた頃の状態に近い感じ。

 だから、これで中身がレベルアップしたら、一気にタイ映画もブレイクする潜在能力は秘めている。「レイン」(Bangkok Dangerous・2000・タイ)や「the EYE【アイ】」(The Eye・2001・タイほか)や「テッセラクト」(The tesseract・2003・タイほか)……といったクォリティーの作品が続けば、間違いなく第二の香港・韓国映画となるだろう。上のいずれもがタイ単独というよりは、香港だったりイギリスだったりがからんだ作品。単独だと「アタック・ナンバーハーフ」(The Iron Ladies・2000・タイ)や「怪盗ブラック・タイガー」(Tears of the Black Tiger・2000・タイ)や「マッハ!」(Ong-Bak・2003・タイ)というコメディというか、ギャグ映画になってしまう傾向があるようだ(そういう作品ばかりが日本公開されているのかもしれないが)。

 本作もタイ単独映画で、完全などたばたアクション。ただし日本人の感覚とかなりかけ離れていて、笑えないギャグがものすごく多い。たぶんタイで上映すれば、どっかんどっかん大爆笑の渦になるのだろう。というのも、監督が主演も兼ねているペットターイ・ウォンカムラオという人で、タイでは有名なコメディアンらしく、この前の作品が日本でも大ヒットした「マッハ!」で主人公のトニー・ジャーを騙すせこいチンピラを演じていた人。

 それもあってか、「マッハ!」に出演していた人がたくさん出ている。ボクがわかっただけでもコンビニで出会うめちゃくちゃ強い怪しい助っ人が「マッハ!」の主人公トニー・ジャー。金持ちのおぼっちやんを助ける美少女に、「マッハ!」でストリート・チルドレンのような役でデビューしたプマワーリー・ヨートガモン(とても23歳には見えない。17歳くらいの感じ!)。金持ちの息子で二枚目のチャーイチョンを演じていた人も、どこかで見た気がするが……名前を見つけられなかった。

 ほかにも、タイで有名な歌手やコメディアンが大挙して出演しているらしい。スクリーンに登場しただけで笑いや拍手をとれる人達なのだろう。残念ながら日本人にはそれは無理な話。ただ、観客を楽しませようという心意気はしっかりと伝わってくる。ペットターイ・ウォンカムラオは全裸で(おわん1つで隠しながら)白昼堂々と大通りを走り抜けているし、芸術ぶっていない。とにかく一流のエンターテインメントにするべく一生懸命なのだ。これは評価すべきところだ。

 ただ、手法をちょっと誤っている気はする。「マッハ!」のようにするためハードなアクションとコミカルな要素を融合させようとしているのだが、「マッハ!」がコメディ<アクションなのに対して本作はコメディ>アクションとなっていて、しかもそのコメディが日本人にはピンと来ないから余計にちぐはぐに感じるのだ。しかも、そのアクションがリアル志向。やたら血が流れ、それもどす黒い血でリアルそのもの。これじゃ、ちょっと笑えない。

 社長を襲撃するギャングが持っている銃はM92F、ガバメント、M16A1、ミリタリー&ポリスの4インチ、ポンブ・アクション・ショットガンなどで、ほかにたぶんHK53も出てくる。対するボディーガードのペットターイ・ウォンカムラオはワルサーP99。ちょっと良いものを持っているという設定か。ペットターイ・ウォンカムラオが女性の胸の上で撃っておっぱいが反動でぷるふぷるするシーンではS&WのM686の4インチも使われている。

 いずれもかなり使い古した感じで、ところどころハゲていてとてもアップには耐えられそうもない。アルミにペイントしたような感じだったが、プロップなんだろうか。

 警察のSWATはMP5を使っている。拳銃はさまざまだが、一般警官の基本はリボルバーの4インチのようだった。コンビニに立てこもるシーンではS&Wのたぶん.357マグナム、M19かM27あたりの4インチも登場。警察のお偉いさんはSWATのバンがパンクしてSASを呼べなんて叫んでいたが、タイにSASなんてあるのだろうか。それともただのギォグか。

 公開4日目のレイト・ショー。35分前に着いたら、ちょうどレギュラーの「チャーリーとチョコレート工場」が終わったところ。ロビーで椅子に座って待つ。20分前くらいに入場となり、場内へ。この時点でボクのほかに30代くらいの男性1人と20代くらいの男性1人の3人。

 思ったより床に傾斜がついていて、dts音響対応で、椅子も新しめでカップホルダーまで付いているのに、なぜか壊れているのが2席。そのほかにもすれて破けているのが数脚あった。どうなってんの? 池袋ならではか。当然指定席はなし。最終的には204席に12人ほどの入り。女性は3〜4人。意外なことにほとんどは20代くらいの若い人で、中年は3人ほど。高齢者はいなかったようだ。

 画質の酷い、たぶんビデオ予告で、「バトルセブン」の予告がかかったが、ビスタだと上下が切れて下に出る字幕が読めない。酷い話だ。


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