日本語字幕:手書き書体下、寺尾次郎/シネスコ・サイズ(マスク、Panavision)/ドルビーデジタル
(仏-12指定)
フランス・パリのトルコ人街で3人の25歳の女性が斬殺された。いずれも顔が判別できないほど切り刻まれていた。事件を担当することになった若い刑事ポール・ネルトー(ジョスラン・キヴラン)は、トルコ人街に顔の利く、強引な捜査で「ルシーフ(裏金)」とあだ名される現在停職中の敏腕刑事ジャン=ルイ・シフェール(ジャン・レノ)に協力を仰ぐ。捜査を進めるうち、トルコ人の密入国組織「イスケレ(桟橋)」が関わっていることが判明する。 |
やられた。良い意味で期待を裏切られた。予告編から得た印象とは全く違う映画。ボクはてっきり人狼モノで、ジャン・レノと女がラストにはモンスターの狼の変身して戦うものとばかり思っていた。きっと狼版「アンダーワールド」(Underworld・2003・米)ではないかと。ところが、どっこい。実に全うなミステリー、謎解きものだった。ファンタジーだと思っていたから、まったく先が読めなかった。そういう話だったのか。驚いた。 トルコ系民俗の共通の祖先で、シンボルとなっているのが「灰色の狼」だそうで、オスマントルコの復権を図る極右テロ組織が「灰色の狼」という名前だという。そこから本作のタイトルが取られているらしい。狼男とは関係ない。実際にローマ教皇銃撃事件などを起こしているらしい。 原作があって、映画公開と同時に発売されるという。「狼の帝国」がそれで、出版元は東京創元社。作者はジャン=スリストフ・ラグランジェ(脚本も担当)。2000年に映画化された「クリムゾン・リバー」の作者で、本作は第4作に当たるらしい。解説によれば「今までヨーロッパでは公然と語ることすら憚られていたトルコの国粋主義組織〈灰色の狼〉を初めて描いた作品」としてフランスじゅうを震撼させ、またたくまに数十万部を記録するほどの大ベストセラーとなった」そうだ。知らぬはボクだけというところか。 つまりテロと戦う過激な刑事たちの活躍を描いたのが本作だったのだ。ただ。冒頭、他人がゾンビのように見えてしまうというのは思わせぶりで、ハリウッドだったら絶対そっちの方をホントにしてしまうだろう。それを本人の気のせいにしてしまうあたりが欧州らしさというか、肩透かしというか……。ジャン・レノが首筋に十字架の刺青を入れているのだって思わせぶりだ。吸血鬼よけのような気がするではないか。そして、フランスのシーンではほとんどずっと雨が降っている。トルコに行くと雨が止む。なぜなんだろう。 暴走刑事のジャン・レノはもう有名だが、相棒の刑事ポールを務めたのは、ジョスラン・ギヴランという26歳の俳優で、1989年、10歳頃から活躍を始めているが、日本公開作はほとんどない。本作では250人の候補者の中からオーディションで選ばれたらしい。演技もうまく、なかなかの二枚目で、今後の活躍が期待される。 逃げる女アンナを演じたのは、スペイン生まれのアーリー・ジョヴァーという人。ニューヨーク在住だという。ウェズリー・スナイプスの吸血鬼ハンター映画「ブレイド」(Blade・1998・米)で劇場映画にデビューしたらしいが、見た記憶がない、というかあいまい。そして、それ以外ほとんど本作まで日本で知られることはなかった。役にはピッタリはまっていたと思うが、ちょっと華がないというか、地味な印象は否めない。 アンナを助けるマチルド女医は、たぶんラウラ・モランテという人。なかなかの美人で、アンナより印象に残った。結構たくさんの作品に出ているがヨーロッパ作品が中心で、日本ではミニ・シアター公開ばかりで余り注目されていない。最近作では、あの「ロミオとジュリエット」()のオリビア・ハッセーが主演した「マザー・テレサ」(Madre Teresa・2003・伊/英)に出ていたらしい。見てないけど。 監督はクリス・ナオン。フリーのカメラマンから、25歳の時に自分の会社を作ってCMを製作し始めたというから驚きだ。そしてリュック・ベッソンに大抜擢されて「キス・オブ・ザ・ドラゴン」(Kiss of the Dragon・2001・仏/米)の監督として長編劇場作品でデビューしたという。本作が2作目。なんだか、もうベテランの撮り方という感じだ。今後も期待できそうだ。 誰のデザインかはわからないが、凶器となるコマンド・ナイフ(サバイバル・ナイフっぽい)はすごいデザイン。強そうで、残忍そうで、怖い。そして、若い刑事が持っているのがSIGのP226か229。チラッとしか写らないので確認できなかった。ひょっとしたらSP2009か2022あたりかも。ジャン・レノはストックを取っ払ったポンプ・アクション・ショットガン。メーカーは不明。対するテロリストたちが持っているのは、M16やAK74、AUG、MP5K、SG551などごった煮状態。 公開2日目の初回、新宿の劇場は本当にやる気がないというか、サービスが悪いというか、係員の教育がなっていないというか、あまり気分良くない。20分前になるまで一度も係員は来ない。ほかの劇場ならたいてい開場時間の知らせなどに来る。 45分前についたらドアも閉まっていて誰もいなかった。35分前でオヤジ2人の、若い男性1人の計3人。25分前くらいになっていきなり30人くらいに増えた。うち女性は2〜3人。若い男性も2〜3人。あとオジサン。20分前になって、やっとドアが開き、地下の劇場前へ。15〜17分前くらいに開場。 場内は指定席なしの全席自由。まう指定席位置からも前席の頭がじゃまになって見にくい劇場なので、指定席も何もないと思うが。 最終的に763席の2.5〜3割くらいが埋まった。結構ゲテモノ映画と勘違いした人が多いのではないだろうか。それとも若い人が少ないということは、ゲテモノじゃないことがバレたとか……。12/24からの作品が決まっているので、2週間上映ということか。残念だ。 予告は、夏くらいからやっているような気がする「美しき野獣」をまだやっていて驚いたが、ジャーリーズ・セロンの新作は、予告だけでお腹いっぱい。うーん、これは見るのがちょっと辛いなあ。ジョージ・クルーニーとマット・デイモンが出ている「シリアナ」、予告はとっても面白そう。 |