日本語字幕:手書き書体下、蒼井法子/シネスコ・サイズ(レンズ)/ドルビーデジタル
(香IIB指定)
近未来、ポラリス・シティで大富豪の遺産を相続し、超セレブとして暮らすルル(ミシェル・ヨー)は、正義の味方シルバーホークとしてのもう1つの顔を持っていた。そんなある日、飛行機の中で偶然出会ったリッチマン警視候補(リッチー・レン)は、幼い頃ともに少林寺で拳法を習った仲だった。しかしルルがあまりにも拳法に秀でていたことから、師匠がそれを活かすためにほかの学校に行くことを薦め、転向してしまったのだった。今では刑事として捜査を妨害する者としてシルバーホークを追っているという。ルルはすぐにリッチマンに気付いたが、リッチマンはルルに気付かなかった。 |
一言でいえば、アクション・コメディ。子供だましのようなSFヒーローものだったらどうしようという心配をあっさり裏切って、実に面白い作品だった。ちゃんと笑えるし、カッコいいし、真剣にやっているし、サービス精神満点。ミッシェル・ヨーって美人だし、とても33歳とは思えない程からだが動くし、何より「SAYURI」(Memoirs of Geisha・2005・米)みたいな文学作品をしっかりと演じ切りながら、こうして軽いエンターテインメント作品を、演じるだけでなく自らプロデュースするところがすごい。ヘタをすれば失笑を買いかねない。女優生命に自らピリオドを打ってしまうかもしれないことに、ずっと挑んでいるのだ。これはハリウッドで言うと「デンジャラス・ビューティー」(Miss Congeniality・2001・米)のサンドラ・ブロックみたい。えらいなあ。 とは言え、話は完全に変身ヒーローものと同じ。ただ人間離れした技量を持つスーパー・ヒーロー(女性だからヒロインか)ではなく、普通の人の格闘技に優れた人という設定が、荒唐無稽になる一歩手前で押さえている。しかも明るく爽やか、かつ美人。だから隠密剣士(古!)とか鞍馬天狗(もっと古!!)という雰囲気ではある。顔を隠して招待を知られないようにしているわけだから。ただ、バイク(BMW F650CS)で現われるのと、メタリックな衣装で多分にサイボーグっぽいんだけど。 未来の設定なのでアジアは1つの国になっており、ポラリス市は今の香港で、ゼンダ市は今の日本に相当するらしい。ゼンダ市ではルルのおじでもある大企業白石エンタープライズ社長役で日本人俳優、岩城滉一が登場する。全編英語なのでたぶん岩城滉一なら英語吹替の必要はないはずだが、香港映画の伝統で吹き替えられているのか、残念ながら生声を聞くことは出来ない。しかも途中で出てこなくなり、存在感は薄い。 日本ロケ部分が多く、未来的な感じの都庁周辺、中野坂上のビル、なんかが出てくる。どうしてと思ったら監督が「東京攻略」(Tokyo Raiders・2000・香)のジングル・マではないか。「東京攻略」でも日本ロケを行い、日本人俳優を多数使っていた。それにミッシェル・ヨーも乗ったというところか。温泉にまで入っているし。 相棒で初恋の人(?)を演じるのは、台湾出身で、歌手としての方が有名なリッチー・レン。つい最近、悪役を演じたおもしろい「ブレイキング・ニュース」(大事件・2004・香)が公開されたばかり。「ブレ……」とは打って変わって、コミカルな役を実に楽しそうに演じている。やっぱり歌手なので、こういった明るい役の方があっているのかも。 大学の研究所の助手キットを演じているのは、カナダ生まれのブランドン・チャン。今年4月に公開されたミッシェル・ヨーがプロデュース&主演した「レジェンド/三蔵法師の秘宝」(天脈傳奇・2002・香)でミッシェル・ヨーの弟を演じていた人。本作では格闘シーンもかなりあり、見せ所がいっぱいだ。期待の新人というところか。 誘拐される白石社長の娘、ティナはケイン・コスギの「マッスルヒート」(Mucsle Heat・2002・日)に出ていた橘実里。そして敵の美人刺客はたぶんリー・ビンビン。今年の11月に公開されたらしい「パープル・バタフライ」(Purp;e Butterfly・2003・中/仏)に出ていたらしい。チャン・ツィイーと仲村トオルが共演しているのだが、どの劇場でいつ公開されたのかさっぱりわからない。もう1人の美女、ゼンダ市警察の警部補(lieutenant)リサ・ハヤシを演じたのは、リサ・セレスナー。そして彼女が持っていた銃は、SVIのインフィニティーのように見えたが、たしか1発も撃っていなかったと思うので、トイガンだったかも。 悪のボスは、見たことあるなあと思ったら、「ブレイド2」(Blade II・2002・)に出ていた、口が裂けるリーパーズのボスを演じていたルーク・ゴス。1,600万枚のアルバムセールスを誇る人気バンド“Bros”のメンバーとして活躍した人だそうで、本作や「ブレイド2」ではいかつい顔つきだが、実際にはかなりの二枚目。今後もこのワルの線でいくんだろうか。 ラスト、まるで007映画のようにセットで作った大きな秘密基地が現われ、予想通りメチャクチャになる。この辺の盛り上げがうまい。やはりハリウッドを知るミッシェル・ヨーがプロデューサーだからなのではないだろうか。全編英語だし。アメリカ・マーケットを視野に入れているはずだ。 ただ、全体に白っぽい画調で、コントラストも低く、ハイキーなのが気になった。色が浅い。しかもところどころザラ付いたような絵で、なんだか昔の香港映画を見ているような錯覚を覚えた。プリントが悪いのか、撮影が良くなかったのか、現像処理が不適切だったのか。ちょっと、なあ。 公開2日めの2回目、新宿の劇場は30分前でロビーに5〜6人。男のみで、全員中高年。「ハリー・ポッター」なんか20代のひとがわんさか並んでいたけど。 15分前に入れ替えとなって(案内なし)、指定席なしの場内へ。この時点で30人くらい。女性は6〜7人。最終的に、老若比は若い人が増えて半々くらいになった。人数も少し増えて、330席に40〜50人ほどに。もう少し入ってもいい映画だと思うが。 |