日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、Arriflex、Super 35)/ドルビーデジタル(IMDbではEX)、dts、SDDS
日本語吹替版もあり。(米PG-13指定)
1933年、ニューヨーク。売れない女優のアン・ダロー(ナオミ・ワッツ)は、所属する劇場が給料未払いのまま閉鎖となり、途方に暮れていた。ちょうどそのとき、映画会社から新作の製作打ち切りを告げられた映画監督のカール・デナム(ジャック・ブラック)は、偶然手に入れた絶海の孤島の地図を頼りにそこで冒険映画を撮影するための準備を進めていた。そして街でアンを見かけ主役に雇うと、さらに、脚本を著名なジャック・ドリスコル(エイドリアン・ブロディ)に依頼し、巧妙に船に乗せたまま出港してしまう。やがて地図にあった島に到着した一行を待っていたのは、60m以上の高い塀に守られた原住民の村だった。 |
自身の原点だとピーター・ジャクソン監督が言う、映画人に人気の高い「キング・コング」(King Kong・1933・米)を完全リメイク。現代の技術で驚異的な作品に仕上げてみせた。そして、感動で涙が……。 とにかくビジュアルがすごい。大迫力。コングがまるでそこにいるかのようなリアルさ。それだけでも十分に劇場で見る価値がある。それも、できるだけ大きなスクリーンの方がいい。コングの巨大さがよりよく伝わってくるから。 第一印象では、これはナオミ・ワッツの映画だと感じた。ナオミ・ワッツがとにかくきれいだし、どんなちょっとしたカットでも魅力的に見えるように撮られている。ジャック・ブラックもエイドリアン・ブロディも、髑髏島のセットも1933年のニューヨークのセットも、あえて言えばキング・コングさえも、ナオミ・ワッツを輝かせるために存在している感じ。監督のピーター・ジャックソンは彼女にほれ込んで、そういうふうに撮っているのではないだろうか。 オリジナル版RKOの「キング・コング」(King Kong・1933・米)にかなり忠実に作られているらしいが、ボク自身、見たのがかなり昔なのであまり覚えていない。もう一度見てみたい気になった。本作は3時間余りだが、オリジナルは100分版と104分の復元版があり、いずれにしても半分ほどにすぎない。これはやっぱり比べてみないと。幸い今年の6月21日にPSGというところから100分版のDVDが1,500円で出ているし、11月21日にはサイレントの「ロスト・ワールド」(The Lost World・1925・米)がセットになった特撮映画 パック 「キング・コング」+「ロスト・ワールド」(「キング・コング」淀川長治解説映像付き)DVDがIVCから4,934円で出ている。まあ実物大のロボットを作って撮影するといって宣伝しておきながら、ほとんどリック・ベイカーの着ぐるみだったという「キングコング」(King Kong・1976・米)は見なくても良いだろう。ジェシカ・ラングがセクシーだっただけだから。 ゴリラはとても頭がいいことが知られていて、有名なところではアメリカの雌のローランド・ゴリラのココは手話で人間と会話が出来る(http://www.gorilla.org/)。特にうるっとくるキング・コングとアン・ダローが一緒に夕日を見るシーンでは、それを思い出した。そして、複葉機の機関銃にやられて落ちていくところが、あまりにリアルでグッとくる。先ず目が生気を失い、力が抜けてするりと滑り落ちていくのだ。泣ける。「ロード・オブ・ザ・リング」でゴラムを演じたアンディー・サーキスの演技をモーション・キャプチャーしたとは言え、3D-CGを超えてしまっている感じ。 ラスト、カール・デナムが言う「美女が野獣を死なせた」と。たぶんこれは1933年のメリアン・C・クーバー版でも同じセリフがあったのではないかと思うが、どうにも納得できなかった。そうじゃないだろう。オマエが欲の皮を突っ張らせて、コングをこんな都会に無理矢理連れてきたから死ぬような羽目になったんだろって。特に本作ではその思いが強かった。 時代に合わせて、登場する銃器もちゃんと考証されている。「冒険号」に積まれているライフルは照尺(タンジェント・サイト)の感じだとモーゼルM1898のようだった。たぶん輸出されたエクスポート・モデルなのではないだろうか。1933年ならアメリカにM1903というライフルもあったはずだが、「冒険号」の船長を演じているのはドイツ人俳優のトーマス・クレッチマンで、たぶん設定もドイツ系ということなのだろう。ただし、別に持ってきたらしい箱入りのサブマシンガンはトンプソンM1928で純粋なアメリカ産。深読みすれば撮影隊が護身用に用意したというところか。そして航空機に搭載されているのはルイス・マシンガン。 それにしても、こうして見てみると、本作は「タイタニック」(Taitanic・1997・米)や「ジュラシック・パーク」(Jurassic Park・1993・米)の良いとこ取りで、つまりそれらは1933年メリアン・C・クーバー版「キング・コング」と通じるところがあるということか。特に第2作「ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク」(The Lost World : Jurassic Park・1997・米)など1933年版「キング・コング」そのまんまという感じ。そしてそれらが本作に似ているのは、ピーター・ジャクソン監督やスタッフにそれだけ大きな影響なりインパクトなりを与えていたということでもあるだろう。 公開初日の初回、混雑を予想して70分前に付いたら新宿の劇場はたった3人。若いカップルとオヤジが1人。あらら。30分前でやっと30人くらい。あれれ、ちょっと肩透かし。こんなものなの? 間もなく開場になって場内へ。初回のみ全席自由で、12席×5列の指定席もOK。 BGMのシステムが不調だったらしく、ガガッとノイズの入る聞きづらいもので、しかも同じ曲ばかりがかかりちょっと苦痛だった。最終的には1,044席の4〜4.5割程が埋まった。男女比はほぼ半々で、懐かしさが影響したのか中高年が3/4くらいで、若い人は1/4くらい。年末に大画面で楽しむには最適の映画だと思うけどなあ。 とにかく3時間以上もある映画なので、念のため入場してすぐと直前の2回もトイレへ。みなさんもご用心。予告は「ダビンチ・コード」が新しいバージョンになり、今前売り券を買う特製ペンライトがもらえるとか。そしてジェイク・ギレンホール主演で砂漠の嵐作戦を描いた「ジャーヘッド」、まだ具体的な絵がないがトム・クルーズの「Mi-3」が面白そうだった。ただ、音響効果は予告編すべて迫力なし。設定がおかしかったのだろうか。ここは、だいたいは控えめな設定なのだけれど。 |