日本語字幕:手書き書体下、太田直子/シネスコ・サイズ/ドルビーデジタル、dts、SDDS
(米R指定、日R-15指定)
1982年、ウクライナから一家で移住してきたユーリ・オロノフ(ニコラス・ケイジ)は、ニューヨークのブライトン・ビーチで育ったが、ロシア人ギャングによる殺人が日常茶飯事だった。そしてある時、その殺人に使われる銃を売る商売をしようと思い立ち、まず1挺のウージー・ピストルを手に入れる。それがうまく売れたことから、弟ヴィタリー(ジャレッド・レト)を巻き込んで大きく商売を始めることにする。しかし彼をインタポール(国際刑事警察機構)の捜査官ジャック・バレンタイン(イーサン・ホーク)が追っていた。 |
タッチは少々コミカルだが、現代の裏側を描いた恐ろしい映画。実在の人物をモデルにして作られているというだけあって、非現実的な感じがするものの、確かにありそうな話だと思う。よく考えてみれば大げさでも、ハリウッド的でもなく、ちゃんと説得力がある。 いま全世界には5億5千万挺の銃器があり、12人に1挺(プログラムでは15人に1挺)の計算になるという。主人公は言う、あと11人に売ろうと。彼を追いかけるインターポールの捜査官(イーサン・ホークが好演)が言う。「オレなんかを追うんじゃなく、大量破壊兵器を追えと思うだろう。ところが戦争で殺される人の9割は銃で殺されているんだ」と。アフリカなどでは人殺しのための銃がゴロゴロしており、それらがどうやって流れていったのかをこの映画は明らかにしてくれる。もちろん、映画で描かれている以外の方法もあるはずだが、この映画を見ると大きな銃の動きが判ってくる。この映画に登場する銃は、だからいずれもまがまがしく恐ろしい。 かつてNHK特集でも「小型武器拡散を追う」というタイトルでアフリカのAKの製造元を追っている。それを思い出した。番組ではシリアル・ナンバーなどから、オリジナルのロシアではなく東欧にたどり着いたと思うが……。知り合いのライターの方からも、ロシアに取材に行った時に、ホテルの部屋へ怪しげな男がアタッシュケースに入れたプルトニウムを売りに来たという。 恐ろしいのはアフリカの支配者で、絵に描いたような狂人。サンプルの銃であるパイソン(S&WのM686かも)6インチを見ていたかと思うと、いきなり側近を射殺したりする。そして主人公が言うように「実は木の近くに落ちる」(似たもの親子)ということで、息子は走る車から平気でルーマニアか旧東ドイツのAKショート・カスタム(しかも銀色めっきでピカピカ)を町に向けてぶっ放し、「ランボー」と同じ銃が欲しいとねだる。 しかし、多少大げさかもしれないが実際にこんな感じらしいのだ。考えて見れば、昔の未開地の原住民の人達などは、村と村が戦って生き抜いてきたりしているわけで、ひょっとしたらそんなルールが当たり前なのかも知れない。ボクらの基準で彼らの暮らしを測ることは出来ない。ただ、ヤリやナイフが先進国と称する外部の人間によって銃に代わり、より悲惨さが増したということはできるかもしれない。 すごいと思うのは、こういった非常に政治色というか主張の強いメッセージ映画的な作品は、主張ばかりが強かったりしてエンタテインメント性が薄れてしまうのに、本作はちゃんとエンターテインメントとして成立していること。お金を取って見せる商業映画である以上、やはり観客を楽しませなければならない。それが良いバランスを保っている。 監督は脚本も手がけ、プロデューサーも務めたアンドリュー・ニコル。「キング・コング」のピーター・ジャクソン監督と同じニュージーランドの出身で、1969年生まれの36歳という若さ。本作のようなテーマの映画は御大が作るものとばかり思っていたが、違った。しかし、だからこそこういう面白い作品に仕上がったのだろう。これまでに、未見だが「ガタカ」(Gattaca・1997・米)や個人的にあまり好きではない「トルゥーマン・ショー」(The Truman Show・1998・米)、なかなか面白かった「シモーヌ」(Simone・2002・米)などのSFチックな作品を撮っている。 売買される銃器は、AKがメインで、ちらりとM16もある。ほかに手榴弾、RPG、T72戦車、BMP装甲兵員輸送車、ハインド戦闘攻撃ヘリなんかまで。ちなみにインターポールはMP5を使っていた。弟ヴィタリーが持っているのはベレッタM92F。もちろんグロックも出てくる。 武器商人の話では、過去に「世紀の取り引き」(Deal of the Century・1983・米)という劇場未公開作品があった。なんと監督はウィリアム・フリードキンで、チェビー・チェイス、シガニー・ウィーバー、グレゴリー・ハインズ、「ベン・ケーシー」ヴィンセント・エドワーズらが出ていた。アクション・コメディなので本作ほどシニカルな感じはないが、やはりそれを思い出した。ボクはヴィデオで見たが、LDでも発売された。DVDはまだ出ていなかったか。併せて見ると面白いのではないだろうか。 公開初日の3回目、銀座の劇場は全席指定の入れ替えせいなので、早めについて座席を確保してから食事と買い物へ行った後、20分前に着いたら前回は終了していたがまだ入場できなかった。ロビーにはそこそこの人が。 15分前に入場となり場内へ。10分前から明るいまま劇場案内の上映が始まった。最近こういう劇場が増えた。そのお陰か上映中にメールや時間確認のため携帯を取り出す人は、1人か2人くらいしかいなくなった。テーマのせいかやはり中高年が多い。若い人は1/4くらい。しかも、ほとんどは男性。最終的には400席の6割程が埋まった。映画館には悪いが、これくらいが映画をゆったり見るにはちょうどいい混み具合だ。ただ、この劇場、カップ・ホルダーが深い。コーヒーなど小さいカップだと取り出しにくい。 予告は「海猿」から始まった。TVだけじゃなかったんだ。映画の「1」から続いているんだろうか。それともあれはただのフリか。「県庁の星」はやっと絵がついた。でも内容はほとんど判らない。「サイレン」はやっとTV版と同じく阿部チャンが登場、でも意味はわからない。優香の「輪廻」は新しいバージョンになってもさらに怖そうな感じ。キーナ・ナイトレイの「プライドと偏見」はとてつもなく絵がきれいだった。 |