2005年12月18日(日)「男たちの大和 YAMATO」

2005・東映/角川春樹事務所/テレビ朝日/東映ビデオ/朝日放送/広島ホームテレビ/九州朝日放送/北海道テレビ/長崎文化放送/鹿児島放送/朝日新聞社/東京都ASA連合会/中国新聞社/北日本新聞社/東映アニメーション/ゲオ/TOKYO FM/幻戯書房/サンブック社/東映エージェンシー・2時間23分

シネスコ・サイズ(Arriflex)/ドルビーデジタル


72点


http://www.yamato-movie.jp/



2005年4月6日、鹿児島・枕崎の漁業組合に内田と名乗る女性(鈴木京香)が現われ、戦艦ヤマトが沈没した場所、北緯30度43分、東経128度4分の位置まで船で連れていって欲しいという。荒れた海で、誰も船を出そうとしないが、高齢の神尾(仲代達矢)船長だけが行こうと言ってくれる。彼女が持っていた写真に一緒に大和に乗っていた森脇二等兵曹(反町隆史)、内田二等兵曹(中村獅童)、唐木二等兵曹(山田純大)が写っていたからだった。女は内田二等兵曹の娘で、父が亡くなったのだという。その場所へ向かう途中、大和が沈む時、何があったのかを神尾は語り始める。

1つ前へ一覧へ次へ
 日本映画としては大予算映画で、1/1セットも組まれたという大和は大迫力、見ごたえ十分。そして、案の定、ラストは涙が……。やはり若くして戦場で散っていった人達の話は辛い。どんな思いで彼らは出撃していったのか。そして、どのように戦ったのか、それを映画はしっかりと見せてくれる。その熱い思いが胸を打つ。まわりでもあちこちからグシュグシュ聞こえていた。

 しかし、わずかに海軍の伝統的な“しごき”というか“愛のムチ”というか、砕けて言えば“イジメ”も描かれているものの、あとはほとんど良い人ばかりで、アホな上官や、戦争指導者たちが存在しない。つまりイメージとしては、派手に血が飛び散るものの、国のため、愛する人のために命を投げ出して行くという美談だけに終わっているという感が否めない。視点をクリアにしたかったということなのだろうけれど、何か物足りないような……。

 大型模型、実物大セット、リアルな3D-CGによるグラマン(アベンジャー?)、ビッグショット製作のたぶん日本映画初のリアルな九六式25ミリ三連装機銃があるものの、なんだか全体として作りが古くさい感じがする。なんなんだろうか。一部はスゴクこだわっている割に、ものすごい衝撃があったという主砲の発射に迫力が全く無かったり、高角砲用だかの砲弾も実に軽そうに見えるし、九六式以外の砲は反動も無く、砲口から昔ながらの花火のようなボワンという煙が出るだけだったりと、?なところが多い。昔の日本の戦争映画と変わらないレベル。やっぱり予算がないというところに行き着いてしまうのか……。狙いなのかもしれないが、音楽も、その付け方もなんだか古くさく感じられた。

 名優、仲代達矢もなんだか自然さがなく、せっかくの鈴木京香も本作では、これも狙いなのかもしれないが、ちっともきれいに撮れていない。物語を進行する大切な役なのに、ブサイクに見えてしまう。これは悲しい。やっぱり女優さんはきれいでないと……。大和のスゴサのせいか、ほとんどの俳優が印象に残らないが、かろうじて主役とも言うべき海軍特別少年兵・神尾克己を演じた松山ケンイチと、戦友で絵がうまい西哲也を演じた内野謙太、そして神尾の幼なじみ野崎妙子を演じた蒼井優という若い俳優たちが良かったかなと。もう1人付け足すなら、ちょっと言うことがクサくて鼻につくが意外にカッコ良くてサマになっていた臼淵大尉を演じた長嶋一茂くらいか。

 冒頭、シネスコ・サイズの画面下から菊の紋章がついた舳先がフレーム・インしてきて、カメラが引くと大和が見えタイトルが出るあたりは素晴らしく、思わず鳥肌が立つ程よかったが……。巨艦と沈没という共通点からか、どうにも「タイタニック」の影もちらついて、真似したような印象。うーん、なんだかなあ。

 初日は舞台あいさつがあるというのでパスして、公開2日目の初回、これも用心して75分前に見たら 、早朝にも関わらずすでに5〜6人が並んでいた。早朝でスタバが開いておらず、60分前に手ぶらでもどったらすでに10人ほどに。10代くらいが4人と、あとはテーマがら中高年。ものすごく寒い日で、この冬一番の冷え込みとか言っていたが、一向に早く開く気配なし。ちかくのオヤジが「サービス悪いなあ。こういう日くらい中で待たせるとか、早く入れろよなあ」とこぼしていた。同感。

 芯から冷えた35分前くらいになって、ボックス・オフィスが開く。当日券を買った人はそのまま列へ。そして30分前になってようやく開場(普通だがあまりに寒い日で、皆が凍えていたので遅い印象を持った)。この時点で50人くらいの列。全席自由で、2Fの最前列へ向かったが、間に合わず取れなかった。ボクより前に並んでいた10人ほどはみな良い場所を知っていたらしい。2Fは最前列意外スクリーンが遠く感じるのだ。

 全員が冷えたためか、売店には温かい飲み物を求めて長蛇の列。ボクも並んだ。場内は暖かいが、体の芯が冷えているのだ。資料になるのでプログラム(大き過ぎてバッグに入らない!)も買ったらコーヒーとあわせて1,000円の出費。これはちとイタイ。

 最終的には2Fは6割ほどの入り。早朝ということを考えるとなかなかの出足ではないだろうか。人気の高さがうかがわれる。

 音も良く、とくに重低音は床や体が振動する感じ。さすが、劇場はこうでなくっちゃ。家ではなかなかこうはいかない。予告では「えっ、またかよ」という声も聞かれた「プロジェクトX」風のなんとかというのと、チャン・ドンゴンの「タイフーン」、たぶん見ないが石原慎太郎・総指揮のなんとかという太平洋戦争物が印象に残った。

1つ前へ一覧へ次へ