日本語字幕:手書き風書体下、寺尾次郎/ビスタ・サイズ(1.85)/ドルビーデジタル
〈レイトショー〉
“イカサマ師”(アマリン・ニティポン)はカード・ゲームでイカサマがバレ、町の有力者のためにアメリカ軍のトラックを強奪する仕事を引き受けざるを得なくなる。そこで、かつて軍隊で一緒だった戦友6名を集め、綿密に計画を練り実行に移す。ところが町の有力者が裏切ったことから、彼の部下とアメリカ軍からも追われる羽目になる。 |
手作り感覚の映画。タイでは有名な俳優が出ているのかもしれないが、日本では知られていないわけで、自主制作映画と紙一重の感じ。ハチャメチャだが、観客を楽しませようという精神は伝わってくる。たぶんタイと日本では笑いのツボやアクションの醍醐味が違うようで、なかなかついていけないところがある。CGももっと技術はあるはずで、こんな前時代的合成は今見るとかなり辛い。予算が無かったということか。 イントロは西部劇風だったが、アクションの主体は爆発。不必要なくらい爆発がある。何しろタイトルバックが爆発だ。これだったら、最後にまとめて大きな爆発をひとつやった方が、印象にも残るし大仕掛けが作れて面白のではないだろうか。分散しちゃってるから、小さい爆発ばっかりで、3回目くらいから、また爆発かと思ってしまう。大きな爆発だと許可をとるのが難しいのかもしれないが……。 銃器もM16A1やミリタリー&ポリスらしき4インチとか、ベレッタM92F、S&W・M439あたりのオートマチック、ガバメントなどが登場するが、爆発が多いので印象が薄れる。しかもあちこちスレて塗装(?)がポロボロなっていて、数が少なかったのかスタント用のゴム銃まで使っているような始末。弾着などがんばっているんだが、結果としてなんとも情けないことになってしまっている。 マズル・ローダーの大砲なんていう前時代のものまで持ち出して、これを手で抱えて撃ったり(10mくらい吹っ飛ぶ)、これをロケットのように利用して空中に飛び上がったり、もはや超能力とかハリー・ポッターの世界。かなりムチャクチャ。ある意味ファンタジー映画とも言えるとは思うけど。 殴られると顔が変形するCGはうまいのに、ブルーバック合成がデジタルではなくフィルムでやっているのか、エッジが汚い上に色調や画質まで劣化していて、ヘタ。少なくとも日本、韓国、香港などでは自然な合成が当たり前なわけで、その眼からは見るに耐えないほど。爆発よりそっちにお金をかけた方が良いのではないだろうか。イヤ、ひょっとするとCG合成より爆発の方が安いということはあるだろうなあ。つまりこの映画は予算が無かったと、そういうことか。 それならばそれで、ストーリーを凝るとか工夫してもらいたかったところだが、いかんせんユルユルの脚本。なぜボスが自分の雇ったグループを簡単に裏切るのか、よく理解できなかった。ご都合主義というよりは、観客を楽しませるにはその方が良いから、勢いってヤツか。 もちろんタイは実際に政情不安で、テロが起きたりしているし、アメリカ軍に対する反感というのもかなりあるのだろう。登場するアメリカ軍は、かつての香港映画や中国映画、韓国映画の日本人のように、みんなステレオタイプの悪人というのも隔たりを感じさせる。 しかし、もちろんタイはこういう映画ばかりを作っているわけでは決してなくて、ボクは見ていないが「風の前奏曲」(The Overture・2004・タイ)なんていう、タイのアカデミー賞を受賞したアート系の、タイの伝統楽器奏者の映画なんかも作ってはいる。ただ、本作のような映画を見た方が、タイの庶民の感覚はわかりやすい。どんな暮らしをして、どんなギャグが好きで、何に関心があるのか。皮膚感覚とでもいうのだろうか、その方が面白い。 主役の“イカサマ師”ことアマリン・ニティポンはかなりのイケメン。カッコいい。なんだか「品川庄司」の庄司智春に似ている感じ。歌手で、俳優で、プロゴルファーでもあるんだとか。しかし故意に二枚目を避けて三のセンを狙っているフシがうかがえる。それはある程度成功しているようで、大きくフィーチャーされている2挺拳銃の“赤パン”ことボングバット・ワチラブンジョングという人より印象に残る。 そして、もう1人、見れば誰でも判る八百長専門のムエタイ・ボクサー“ムエタイ”を演じたボンサック・ホンスワンは「千鳥」の大悟に似てる。実際、タイのお笑い芸人だという。 ほかも、有名なコメディアンや俳優、歌手といったタイで人気の人達が集められている。だから感覚的には日本でいえば、いま活躍中のお笑い芸人の人達を集めて、それぞれがそこそこ活躍する話を作ったらこんな映画になりましたって感じなのではないだろうか。 ただ、特筆すべきはその画質の良さ。一部の合成シーンなどを除いて、とても色乗りが良くコントラストが高めのカチッとした絵になっている。太陽光の強さの差なのか、ライティングをちゃんとしているということなのか、とにかく力強い絵だ。 公開4日目のレイト・ショー、25分前に着いたらちょうど開場したところで、ボクひとり。あれれ。入場者ブレゼントがあって、レトルトのカニと卵のタイ・カレーとインスタントのトム・ヤン・クン・ラーメン(お土産でもらったことがあるが、これがウマイ)のセットをもらった。すごく得した気分。 最終的には9人ほど。若い男性2人、中年の女性1人、あとは中高年の男性という構成。カーテンが閉まっていて、これが左右に開いて始まった。 |