日本語字幕:手書き風書体下、根本理恵/ビスタ・サイズ(Arriflex、1.85、エンドクレジットは上下にマスク)/ドルビーデジタル
借金取り立て屋のパク・ジュンテ(バク・チュンフン)はカード踏み倒し常習犯で運転代行の仕事をしているキム・フン(チャ・テヒョン)のところへ取り立てに行く。そして外国人の代行運転に付いて行くが、車を間違えたため大切なものが入っているというカバンを忘れてしまう。キムが取りに行っている間、人質としてパクが外国人のマンションで待つことに。ところがそこへ男が現われ、カバンがないことを知り外国人を射殺してしまう。一方キムはマンション前にカバンを置くと、パクから逃げるためそのまま姿をくらましていた。しかし、フンが家に戻ると、謎の男たちが銃を手に乱入してくる。 |
実に良くできた巻き込まれ活劇。アクションとコメディのバランスが抜群で、バディものの王道を期待通りというか、期待以上にうまくまとめて楽しませてくれる。さすが韓国映画。アイディアが満載だ。オープニング・クレジットの出し方も凝っていて、キラッと光って出るところなんかニクイ。音響もサラウンド感タップリ。手間かけてるなあ。それだけ本編に自信があるということか。 いわゆるバディものなので、2人のキャラクターがいかにうまく作られているかにかかっている。そして、それがうまい。2人とも実に魅力的。犯罪者とまではいかないが、2人ともグレー・ゾーンの“危ない奴ら”なのに、明るく、愉快で、基本的には礼儀正しく親切で、人生に前向き。義侠心も持っているし、目上を敬う気持ちも忘れていない。りっぱではないけれど、そうしようと一生懸命生きている感じがいい。 ギャグも韓国と日本ではほぼ同じ感覚らしく、とにかく笑える。地下鉄のドアが閉まって追っ手から逃れ「やーい、ざまみろ」とおちょくっているとドアがもう一度開いたり、声を出して笑ってしまう。うまい。絶妙のタイミングと間。そして、たっぷりのアクション。ビルから飛び降りるシーンなどなかなかの迫力。しかも笑わせるし。 ただ、残念なのは、1人の女を登場させ黄金の三角関係の条件を作っておきながら、ただの仲間、一味で終わっていること。韓国の儒教的な道徳観からは三角関係はいけないというものがあるのだろうか。主役の二人がライバルとなることで、アラン・ドロンとリノ・ヴァンチュラとジョアンナ・シムカスが出たロベール・アンリコの大傑作「冒険者たち」(Les Adventuries・1967・仏)のような緊張感のある関係が生まれ、ラストにはほろ苦い悲しさまで漂い、完動の名作になっていたかもしれないのに。 カード踏み倒し常習者を演じたチャ・テヒョンは、もう言わずと知れた大ヒット作「猟奇的な彼女」(My Sassy Girl・2001・韓)で気の弱い彼氏を演じた人。本作でもその魅力炸裂で、楽しくて明るいキャラを熱演。笑わせてくれる。 一方取り立て屋はバク・チュンフン。日本では有馬知られていないと思うが、ジョナサン・デミが監督した「シャレード」のリメイク版に出ているらしいが、IMDbで4.7の低得点て、日本では劇場未公開となっている。ニューヨークへも留学し、日本にも留学していたというから、かなりの秀才。その片鱗は本作でもうかがえる。冒頭のヤクザっぽい雰囲気もうまいし、後半のバカっぽい軽い感じもうまい。ベースはホントに賢そう。 パクに胸をわしづかみにされるという強烈な役で、出番は少ないながら強く印象に残るユン・ジソンを演じた美女は、ハン・ウンジョン。モデル出身で1999年にミス・ワールド・ユニバーシティの大賞に選ばれているらしい。きれいなはずだ。本作が映画でヒュー作ということになるそうで、それがいきなりわしづかみだもんなあ。 重要な役ではないが、たぶん本作で一番観客を笑わせたのではないかと思われるRGカードの社員を演じたイ・ヒョクチェ。ソン・ガンホの「殺人の追憶」(Memories of Murder・2003・韓)に出ていたらしいが、劇場があまりにマイクロだったのでボクは見にいっていない。 自ら脚本を書き監督したのはパク・ホンス。普通のサラリーマンをやめて韓国映画アカデミーに入って映画界に入ったという人で、今年公開された日本の小説が原作の「シングルス」(Singles・2003・韓)や、あのアクション・コメディ「火山高」(Volcano High・2001・韓)の脚本を書いているという。スゴイ才能だ。サラリーマンを辞めて正解だった。 公開2日目の初回、銀座の劇場は35分前に着いたら、7人が並んでいた。しかも全員女性。若い人は2人くらい。ちょっとここに並ぶのは恥ずかしかったがしょうがない。なかなか「韓流」は根強いようだ。アニメ作品に並んでいる時と似た雰囲気。そこまで混まないけど。 20分前くらいに開場し、この時点で15〜16人。全席自由というか、どの席に座ってもこの劇場は前席の人の頭が邪魔になって字幕がよく見えないが……。しかも近くの定食屋の焼き魚の匂いが漂ってくる。嫌いじゃないけど、ねえ。 小さい劇場なので、前から6列目くらいでも、そうだと言われればスクリーンの音響用の穴まで見える。うーむ。最終的には130席の3.5割程が埋まった。ほとんど中高年だが、男性も増えて1/3くらいになった。このくらいの混み具合だと前の席に人が座ることもないので助かる。最近はわざと前の席に荷物を置いて座らせないようにするセコイ人もいるという。気持ちはわかる。劇場が改装してくれればいいんただけど、予算が……。 予告は「ファイナル・カット」が面白そう。もう前売り買ったけど。「最終兵器彼女」はどうなんだろう。予告のSFXを見る限りは、ちょっと違和感があって引いてしまうけど。「スパングリッシュ」も面白そうだけど、レンタルDVDとかTV放送でも良さそうな感じ。 |