2006年1月21日(土)「レジェンド・オブ・ゾロ」

THE REGEND OF ZORRO・2005・米・2時間06分(IMDbでは129分)

日本語字幕:手書き書体下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG指定)

http://www.zorro-movie.com/
(全国の劇場案内もあり)

1850年、カリフォルニアではアメリカ合衆国の31番目の州として参加するかどうかの住民の投票が行われていた。ほぼ賛成に傾いていたが、反対する者もおり、彼らは暴力を使って妨害しようとしていた。そこにゾロ(アントニオ・バンデラス)が現われ、彼の活躍によって住民投票も無事終わったが、正式加盟まで3ヶ月かかるという。そこでゾロは3ヶ月間監視したいというが、妻エレナ(キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)は、子供もいるし平穏に暮らしたいという。ケンカとなり屋敷から追い出されたゾロだったが、エレナから離婚申立書が届く。

71点

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 うーん、特に悪いというわけではないが、何か今一つ乗り切れない。冒険がいっぱいで、最後には大爆発で終わるというアクション物の王道なのに……。

 たぶん、それは話のメインがカリフォルニア州というかアメリカ合衆国を救う話なのに、サブ・ストーリーの離婚うんぬんのきわめて個人的なというか、家庭内の痴話げんかみたいなものの方が際立ってしまって、ヒーローらしさに欠けること。カッコ良さが足りない。コミカル・アクションが身上だとしても、妻に棄てられてくよくよ酒浸りの日々を送るヒーローなんて……。

 そして、妻の異常な行動にさらに悩まされることになるわけだが、どうにも観客には妻が一言、夫に事情を話せばすむ問題にしか思えないので、同情できない。なぜ夫婦で愛し合っているのに、その事を隠すのかと。

 さらには、1850年という時代設定がゾロには無理がある。基本的には現在のカリフォルニア地域がスペイン領となった1769年以降に、総督の圧政に苦しむ住民を助けるヒーローとして現われるのが、剣の達人のゾロなわけだ。そこで前作「マスク・オブ・ゾロ」(The Mask of Zorro・1998・米)では、どうにかオリジナルのゾロの跡を継ぐ男の話として、1821年メキシコがスペインから独立してカリフォルニアがメキシコに併合された後の話にしていたわけだ。続編としてはそれ以降にしなければならない。それでカリフォルニアがアメリカ合衆国の31番目の州となる1850年に設定したのだろう。

 ここに問題がある。1850年はすでに銃の時代なのだ。TVや映画で描かれるほど銃がたくさん使われていたわけではないと思うが、コルトが最初のパーカッション・リボルバーを発明・発売したのは1837年なのだ。テキサス共和国がメキシコから独立したのが、アラモの後の1836年で、アラモの戦いでさえすでに銃による戦いだった。かのテキサス・レンジャースは、1847年にはマスケット・ライフルとコルト・ウォーカー・モデルで武装していた。1848年に金が発見され、ゴルード・ラッシュで人々がどっとカリフォルニアに乗り込んだ時代なら、なおのこと銃で武装していたに違いない。

 しかしゾロは剣の達人で、チャンバラが見せ場なのだ。1850年にチャンバラは成立しにくい。前作のように、せめて敵が軍隊なら単発ピストルをぶっ放した後はサーベルを引き抜いてもいいだろう。しかし、今回は相手がならず者たちで、実際にはパーカッションとは言えども、本作で描かれているような単発ピストルの時代はとっくに去り、連発ピストルの時代になっていたのだ。軍でも将校以外は剣を下げていなかったのではないか。

 おまけに、悪党のマクギブンス(ニック・チンランドが好演)が持っている真ちゅうフレームのヘンリー・ライフル(なんと彫刻入り)は、パーカッションよりも後の時代のメタリック・カートリッジを使う銃だ。本作の中でも連発して空薬莢が舞っている。これは1857年に発明され、1860年に発売されたのだ。

 つまり、設定からして時代考証無視。無理があり過ぎるのだ。普通のゴロツキがサーベル持っているなんて。しかも銃はパーカッションの単発ばかり。なんだ、これ?

 良かったのは、悪党のマクギブンスを演じたニック・チンランドと、さらにそのボスの気取ったフランス人伯爵を演じたルーファス・シーウェル、そしてゾロの息子を体当たりで演じたアドリアン・アロンソくらいか。あとはほとんど印象に残らない。

 第一作は面白かったのに……。監督は第一作から引き続いてマーティン・キャンベルが務めている。レイ・リオッタが主演した面白い刑務所島脱出劇「ノー・エスケイプ」(No Escape・1994・米)やピアース・ブロスナン007第1作「007/ゴールデンアイ」(Goldeneye・1995・英/米)、ハラハラ・ドキドキの登山ドラマ「バーティカル・リミット」(The Vertical Limit・2000・米)、ちょっく暗い気持ちになったがアンジェリーナ・ジョリーの「すべては愛のために」(Beyond Borders・2003・米/独)など骨太で面白い作品を作り続けてきた人。それなのに、なぜ……。

 脚本はアレックス・カーツマンとロベルト・オーチーという2人で、どちらも脱出劇に徹して面白かった「アイランド」(The Island・2005・米)の脚本を手がけた人達。しかし本作がこれでは……2人で「M:i-3」を手がけているらしいが、大丈夫なんだろうか。

 製作総指揮はスティープン・スピルバーグ、といってもたいして口は出していないだろう。するとプロデューサーが問題か。ほとんどスピルバーグの会社アンブリンのプロデューサーのようだが……。

 一番良かったのは、タイトル。火の帯と文字をうまく組み合わせてオープニング・クレジットをカッコ良く見せている。エンド・クレジットを見たら、イマジナリー・フォースのデザインだった。やっぱりね。さすが。

 公開初日の初回、銀座の劇場は初回から全席指定で、50分ほど前に着いたら2階席を取ることができた。開場はしていなかったので、とりあえず近辺の劇場を回って、前売り券を買うことに。最後にスタバに寄ってショート・ラテを買って劇場へ戻ると25分前。すでに開場していて、そのまま2F席へ。

 2時間以上の映画なので、まずトイレへ。15分前から劇場案内が上映される。観客はほとんど中高年で、白髪が目立つ。男女比は4.5対5.5くらいで、やや女性が多い感じ。例によって女性の場合は若い人の率が高い。最終的には2F席の4.5割程が埋まった。

 予告で驚いたのは、大塚愛のDVDのミュージック・クリップが映画になることになったということ。うーん、ほかにも映画にするネタはいっぱいあるだろうに、こっちの方が数字が読めるということか。それと、ガメラ。ついにゴジラのように子供のアイドルになってしまったらしい。これではもう見る気がしないが、子供は喜ぶかも。「ミュンヘン」は予告編なのに音が素晴らしく、期待を持たせる。世界中に対テロ特殊部隊を作らせるきっかけになった事件を題材にしたスピルバーグ映画。見たい。「ラッシュアワー」のブレット・ラトナー監督が手がける007を辞めたピアース・ブロスナン主演の「ダイヤモンド・イン・パラダイス」も面白そう。ただ2004年製作というのが気にかかるが、「トーマス・クラウン・アフェア」みたいな雰囲気なので大丈夫だろう。


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