2006年1月29日(日)「フライトプラン」

FLIGHTPLAN・2005・米・1時間38分

日本語字幕:手書き書体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(Arriscope)/ドルビーデジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

http://www.movies.co.jp/index.html
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

ドイツで航空機設計技師をしていたカイル(ジョディ・フォスター)は、夫が屋上から転落死したため、幼い6歳の娘ジュリア(マーリーン・ローストン)を連れてアメリカへ戻ることにした。夫の棺とともに、自らが設計に携わったアルト航空の二階建て客室を持つ巨大機E-474に搭乗、フライトは快適に続くかと思われたが、カイルがうたた寝し気付くとジュリアがいなくなっていたのだった。

72点

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 なかなかハラハラドキドキ。一体どういう展開なのか先を読ませない。見どころは、巨大旅客機の内部と、どんでん返しの後どうやって事件のカタを付けるのかという部分。残念ながら、娘のためにがんばるジョディの母親としての姿は、いまひとつ素直に受け入れられなかった。

 多分、ラストで犯人と1対1で戦うことになるために、カイルという女性は決して諦めず、何事も最後までやり抜く強い意志を持っていなければならなかったのだろう。そのため、彼女は580人の乗客全員に迷惑をかけ、それどころか彼らの命まで危険にさらしても、自分の娘を探そうとする。しかも、自分が間違っているかもしれないと疑ってみることさえ、ほんの一瞬しかない。いくら亭主が死んだからといって、いつも怒ってばかりで、どうも感情移入できないというか、同情的に見れないのだ。あまりに身勝手。これが最大の問題点ではないだろうか。面白い題材で、よくできた話なのに、キャラクターが魅力的ではないのだ。むしろ腹が立つ。これは惜しい。

 ジョディ・フォスターの役どころとしては「パニック・ルーム」(Panic Room・2002・米)とほとんど同じ。父親が不在で、独力で一人娘を守らなければならない。だから「エイリアン」のリプリーとか、「ターミネーター」のサラ・コナーズみたいなタイプ。しかし状況も環境も違う。もし、もう少し弱い母親で、精神状態が不安定だったら、観客に娘の存在自体が精神的なもので実在しないのではないかとも思わせることができただろう。しかし、そうしなかったのは、やはり強い母親像にしたかったからにちがいない。

 9.11以降、アメリカ上空を飛行する旅客機には武装した保安要員を搭乗させなければいけないことになった。それは外国機でも適用されるんだそうで、日本の航空会社も「武装した保安要員」を乗せなければアメリカ上空を飛行できないのだとか。そこで登場するのがエアー・マーシャル、アメリカ連邦航空局航空保安官だ。本作のエアー・マーシャル、ピーター・サースガード演じるカーソンは、グロック19(口径が不明なのでモデル名は特定できないが、コンパクト・サイズのシリーズ)を携帯している。

 アメリカでは、この映画が公開されて全米の航空会社の乗務員組合だったかから「あんな酷い対応はしない」と抗議があったとか。確かに見ていると、機長もフライト・アテンダントも、いかにも頼りない。というか、この映画の中では主人公を際立たせるため彼女以外、誰もが頼りないのだ。

 見どころのひとつ、架空の巨大旅客機E-474は総二階建てで580席の客席を持っている。実機でこれに近いのはエアバス社のA380スーバージャンボ。2006年就航予定で、総二階建て555席の客席を持っているそうだ。興味のある人はこちらへ。これを超えているわけだが、なかなかデザインが良く、エコノミー・クラスにも全席に大型液晶画面が設けられ、なかなか快適そう。乗ってみたい気にさせる。

 監督はロベルト・シュヴェンケというドイツ生まれの38歳の若手。2002年に「TATOO」という日本未公開映画で数々の賞を受賞し、世界各国で公開された2003年の「Eierdiebe」(英語タイトルはThe Family Jewels。日本未公開)で高い評価を得て、本作でハリウッド・デビューすることになったらしい。ほとんどの作品で自ら脚本も手がけているが、本作は監督のみ。

 本作の脚本は、2人が手がけているが、もともとはイギリス出身のピーター・A・ダウリングという人が1996年に奨学金を得て渡米してからずっとあたためてきたものらしい。本作の成功でコ・プロデューサーを務める新作も製作に入り、さらには監督デビュー作の話も進んでいるという。今後注目かもしれない。

 もう1人は、いまひとつだった火山映画「ボルケーノ」(Volcano・1997・米)やブルース・ウィリスがオイシイ役だった「ジャスティス」(Hart's War・2002・米)、意外な展開で面白かった「サスペクト・ゼロ」(Suspect Zero・2004・米)といったメジャー作品の脚本を手がけたビリー・レイ。現在、自らが書いた「Breach」という作品を監督中だという。こちらも注目か。

 音響では、サラウンド感がとても素晴らしい。よくまわる。この立体感は特筆ものだ。機内のセットと合わせて、この映画で特に印象に残る部分と言っても差し支えないだろう。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は初回から全席指定で、45分前に着いたら2F席の希望の場所はとれなかった。1Fのボックス・オフィスには珍しく列ができていた。とにかく2Fに席を確保してスタバへコーヒーを買いに。30分前にもどるとすでに開場。20分前には2Fは3.5割くらいの入りに。男女比は6対4くらいで男性のほうが多い感じ。ほとんど中高年で、20代から30代は2割くらいか。

 スクリーンは最初からビスタで開いていて、15分前から場内案内の上映が始まった。最終的に2F席は7.5〜8割くらいの入り。さすが話題作。

 予告で、タイトルのわからないものが。ミュージカルのようで、8人の男女がステージに立っていて、「コーラスライン」のような雰囲気のあれは、何というタイトルなんだろう。東劇でやるらしいが……こういう予告って効果あるンだろうか。驚いたのは、上下二マスクが入って始まったウルフガング・ペーターゼン監督の「ポセイドン」の予告。どうやらジーン・ハックマンが主演した「ポセイドン・アドベンチャー」(The Poseidon Adventure・1972・米)のリメイクらしい。ちょっと期待。


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